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離乳食をはじめる前にアレルギーの検査をするべきか

皆様こんにちは。今回のすくナビの担当は、アレルギー担当の竹村豊です。

今回は“教えて!近大先生~アレルギー編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。

今回のご質問です。

「生後5か月の男の子です。そろそろ離乳食を始めようと考えているのですが、食物アレルギーが心配です。始める前に、血液検査をして調べた方が良いですか?」

早速ですが、結論です。

「乳児湿疹(皮膚の赤み、ぶつぶつ、かゆみ)があれば検討した方が良い!」

その理由について3つにわけてお話しします。

1. 湿疹があると食物アレルギーになりやすい
2. アレルギーになる原因食物は生活環境中に存在する
3. 血液検査で食物アレルギーの発症確率を予想できる

1. 湿疹があると食物アレルギーになりやすい

湿疹があると食物アレルギーになりやすいです。オーストラリアで行われた約4700人を対象に行われた研究では、1歳の時に湿疹のない赤ちゃんが食物アレルギーを発症する確率が4%であったのに対し、湿疹がある赤ちゃんはその確率が21.5%であったと報告1)されています(図)。他にも、ヨーロッパで行われた約800人の赤ちゃんを6歳まで観察し続けた研究において、全体で約10人に1人が食物アレルギーを発症していました。その中で、赤ちゃんの時に湿疹があると10人あたり2-3人が食物アレルギーを発症していました2)。赤ちゃんの時に湿疹があるとだいたい2-5倍くらい食物アレルギーを発症しやすくなるようです。
我々も過去に約120人の湿疹のある赤ちゃんを調べると、1歳半の時点で約10人に3人が食物アレルギーを発症していました。日本では幼児の食物アレルギーの有症率は約10人に1人と報告されているので、やはり日本でも湿疹があると食物アレルギーを発症しやすいようです。

(図)1歳時の食物アレルギー発症率(卵、ピーナッツ、ゴマ)


2. アレルギーになる原因食物は身の回りに存在する

湿疹があると食物アレルギーになりやすいことをお話しました。では、なぜ湿疹があると食物アレルギーになるかというと「経皮感作」が起こるからです。経皮感作とは、弱い皮膚のバリアを通じて身の回りにある食物が体内に入ってアレルギーを発症することです。これについては、また別の機会に詳しく説明したいと思います。
ここでは、身の回りになる食べ物、とはどういう状態かについてお話しします。これは何も、みなさんのご自宅の床にゆで卵やうどんがたくさん転がっている、と言っているわけではありません。少しは転がっているかもしれませんが(笑)。これは、ご自宅を掃除した時にでてくるほこりの中に、目でみてわからないくらい小さくなった食べ物が入っている、ということです。実際にヨーロッパで行われた研究では、家庭の中でキッチンだけでなく、ベビーベッドにもピーナッツが存在すると報告されています。さらに、そのピーナッツの量は家庭の消費量に依存することもわかっています3)4)。同様の研究は日本でも行われており、日本の家庭のホコリの中に卵が存在する確率は100%で、その量はダニよりも多かったのです5)。
これらの生活環境中に存在する卵やピーナッツが、湿疹がある赤ちゃんの皮膚につくと食物アレルギーを発症すると考えられています。


3. 血液検査で食物アレルギーの発症確率を予想できる

では、その環境中にある食物が皮膚を通じて食物アレルギーになっているかを調べるために最も行われている方法は、血液検査です。血液中のIgEというアレルギーに関係する抗体の数を調べます。IgEを調べると、その量をそのままの数値で記載したものと、それをレベルで分けたクラスで記載したものがわかります。

これを見る時に難しいのはIgEが少しでもあったらアレルギー、とはならないことです。どういうことかというと、クラスが高いとアレルギーである確率が上がるということになります。例を示します。卵アレルギーは、食べた量や、加工の程度などにより食べられる量が異なることには注意いただきたいのですが、イメージはこんな感じです。

クラス3の方は、クラス1の方より、卵アレルギーである可能性は高いのですが、ふつうに卵が食べられる可能性も50-80%程度あるということです。それを調べるために、食物経口負荷試験という検査が行われます。

ここまでのお話で、離乳食をはじめる前にアレルギー検査をするべきか、の回答は乳児湿疹があれば検討すべきだということがご理解いただけたでしょうか。この様な話を直接聞きたい、または実際に血液検査を受けてみたい、という方は近畿大学病院小児科を受診してください。また、受診の希望はないけど、ご質問やご意見などがあれば、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。

近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。

竹村 豊

1) Martin PE et al. Clin Exp Allergy 2015; 255-264
2) Carolin Roduit et al. JAMA Pediatr. 2017; 655-662
3) Helen A. Brough et al. J Allergy Clin Immunol. 2013; 623-629
4) Helen A. Brough et al. J Allergy Clin Immunol. 2013; 630-638
5) Kitazawa H et al. Allegol Int. 2019; 391-393


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