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「インフルエンザの検査とお薬」

皆様こんにちは!今回のすくナビの担当は、森本優一です!
 
今回は“教えて!近大先生~インフルエンザ編”です。小児科の外来でよくいただくご質問にお答えするシリーズです。

今回のご質問です。

「中学生の長男がインフルエンザと診断され、その後7歳と3歳のこども達も発熱しました。すぐに受診は必要でしょうか?また、市販薬の解熱剤を飲ませても大丈夫ですか?」

早速ですが、結論です。

「発熱から12時間〜24時間での受診をお勧めします!また、市販薬は子供用の解熱剤であれば内服しても大丈夫です!」

ここからはこの回答をもとに、インフルエンザの検査とお薬について3つの項目に分けて解説していきます。

1.  インフルエンザの検査は発熱後12時間以降に行うことが望ましい。

2.  解熱剤はアセトアミノフェンのみOK。痰切りや咳止めは症状に応じて使用可能。

3.  抗インフルエンザ薬の内服は発熱後48時間以内が効果的。

1.  インフルエンザの検査は発熱後12時間以降に行うことが望ましい。

ご家族が既にインフルエンザと診断されている場合、まずはインフルエンザがうつったのではとご心配されると思います。幼稚園以下の小さいお子さんの場合は、脳症などの重症化のリスクもあり、注意が必要です。もし発熱だけでなく、けいれんや呼びかけへの反応が悪い、辻褄の合わない行動をするなどの心配な症状がある場合はすぐの受診をお勧めします。そうでなく、発熱以外の症状が軽微であれば、発熱から12〜24時間での受診をお勧めします。その理由はインフルエンザの診断方法に関係があります。
一般的に行われているインフルエンザの検査方法は、インフルエンザ抗原を検出する迅速診断法です。鼻の粘膜の拭い液を使い、約10〜15分で診断ができます。この迅速検査が陽性になるためには、発熱から12時間以上が経過して体内のウイルス量が十分に増えている必要があります。発熱直後の検査では陰性と出てしまう事もあり、翌日もう一度受診して再検査が必要になる場合もあります。

迅速抗原検査

ですからご自宅で様子を見られそうであれば、発熱後12時間以降で受診し、迅速検査を受けることが望ましいです。もっとも、検査をしなければ、あるいは検査で陽性にならなければインフルエンザと診断できないわけではなく、流行状況や症状を参考に医師が総合的に判断する場合もあります。

2.  解熱剤はアセトアミノフェンのみOK。痰切りや咳止めは症状に応じて使用可能。

受診までの間に高い熱が続く時、解熱剤を使ってつらい症状をとってあげたいとお考えになると思います。しかし、インフルエンザにかかっているお子さんが使う解熱剤には注意が必要です。大人用の市販の風邪薬に解熱剤として、アセトアミノフェン・アスピリン・フェナム酸・ジクロフェナクナトリウム等があります。インフルエンザにかかっているお子さんがアスピリンを使用すると、急性脳症のひとつであるライ症候群を引き起こす危険性があります。また、メフェナム酸やジクロフェナクナトリウムは、インフルエンザ脳症を引き起こすわけではありませんが、インフルエンザ脳症にかかっている場合に、その進行を後押しする可能性があると言われています。そのため、これらの副作用のないアセトアミノフェンのみがお子さんの使用可能な解熱剤となります。子供用の市販薬に含まれる解熱剤は基本的にアセトアミノフェンのみであるため、子供用であれば市販薬を内服していただいて問題ありません。大人用の市販薬の量を減らして内服する等は、絶対に行わないようにしてください。また、風邪薬に含まれるその他の痰切りや咳止めなどは基本的に脳症の悪化との関連は指摘されておらず、心配せずに内服していただけます。

3.  抗インフルエンザ薬の内服は発熱後48時間以内が効果的。

発熱後12時間以降に受診をして迅速検査でインフルエンザの診断を受けた後は、必要に応じて抗インフルエンザ薬を使用します。基本的には「幼児や基礎疾患があり、インフルエンザの重症化リスクが高い患者や呼吸器症状が強い患者には投与が推奨される。」とされていますが、その条件に当てはまらない場合も「症状出現から 48 時間以内にインフルエンザと診断された場合は各医師の判断で投与を考慮する」となっており、日本では48時間内に診断されたケースでは、投与されるケースが多いと考えられます。これは「48時間が過ぎても効果がないと証明されているわけではなく、臨床試験で効果が確認されているのが48時間以内まで」ということなので、場合によっては48時間を過ぎていても投与するケースもあります。しかし、抗インフルエンザ薬の効果は既にあるウイルスを倒すものではなく、ウイルスが広がる事を抑える、あるいは増える事を抑えるという効果なので、体内でウイルスの量が増える前に内服することがやはり望ましいと考えられます。そのため、やはり発熱後12時間〜24時間での受診と検査をお勧めします。
抗インフルエンザ薬の種類は
オセルタミビル(タミフル®)   内服薬(粉・カプセル):1日2回 5日間 
ザナミビル(リレンザ®)     吸入薬:1日2回 5日間 
ラニナミビル(イナビル®)    吸入薬:1回のみ
ペラミビル(ラピアクタ®)    点滴:1回のみ
バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ®) 内服薬(錠剤):1回のみ
の5種類です。

インフルエンザの吸入薬

臨床試験ではどの薬も解熱までの時間に大きな差はないと言われていますが、ウイルスが体外に排出されるまでの時間は、タミフルが72時間に対しゾフルーザは24時間とより短く、家族内感染のリスクが下がるなどの効果が期待されています。また、ひと昔前に「10代のお子さんで抗インフルエンザ薬が異常行動の原因になる」といったニュースを目にしたかたもおられると思います。その後の研究で、現在では「そもそもインフルエンザにかかったときには異常行動のリスクがあり(特に10代が多い)、抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無やその種類は関係しない」と言われています。つまり、年齢にかかわらず抗インフルエンザ薬は安心して内服していただけます。(※参考文献1で小児科学会はゾフルーザは12歳未満の小児への積極的投与を推奨しない方針となっています。理由は小児に特化したデータの蓄積と検証が不十分なため、および耐性ウイルスの可能性が指摘されているためです。12歳以上の小児においては有効性と安全性が確認されており、異常行動との関係はないとされています。)そして抗インフルエンザ薬とは無関係に、インフルエンザにかかっている時は異常行動(特に高所からの転落や道路への飛び出し)がないかを注意しておく必要があります。


まとめると、発熱から12時間〜24時間での受診をお勧めします。また、市販薬は子供用の解熱剤であれば内服しても大丈夫です。そして、異常行動には注意が必要です。
インフルエンザはありふれた感染症ですが、やはり一定の確率で脳症を起こす怖い感染症であることは間違いありません。罹患した後の対応はこの記事に書いた通りですが、そもそも感染しないことが一番です。流行シーズン前にワクチン接種を受けることや、可能な範囲での感染予防として外出時のマスク、うがいや手洗いなどをお勧めします。

最後に、このブログにコメントをいただければ「すくナビ」を続けていく上でとても参考になるので、どうぞよろしくお願いします。ただし、個別の病状について返信することは致しませんので、ご了承ください。
 近畿大学病院小児科では「健康について知ってもらうことで、こどもたちの幸せと明るい未来を守れる社会を目指して」をコンセプトに、こどもの健康に関する情報を発信しています。これからもよろしくお願いします。

森本 優一

参考文献:
[1] 日本小児科学会HP「2022/23 シーズンのインフルエンザ治療・予防指針」
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20220926-1flu.pdf
[2] NIID 国立感染症研究所「インフルエンザとは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html
[3] Baloxavir marboxil in Japanese pediatric patients with influenza: safety and clinical and virologic outcomes. Clinical infectious diseases :
an official publication of the Infectious Diseases Society of America 2019.
Hirotsu N, Sakaguchi H, Sato C, et al.
[4] Effectiveness of baloxavir marboxil against influenza in children.
Pediatrics international 2019;61:616-8.
Kakuya F, Haga S, Okubo H, Fujiyasu H, Kinebuchi T
[5]日医ニュース インフルエンザの診断に正しい理解を求める 2019年3月20日
https://www.med.or.jp/nichiionline/article/008501.html

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