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療法士が身近な地域で貢献するために知っておきたいこと(第4回)病院等に勤務しながら療法士が地域に貢献できること

1.地域リハビリテーション活動支援事業から地域支援に参画する

 これまで紹介してきた地域への関わり方を整理すると,具体的な参画方法は以下の3つにわけられる.
①「地域リハビリテーション活動支援事業」等の派遣で実際に通いの場に赴くリハ専門職
②介護予防事業と,高齢者等の個別的支援といった地域全体の事業を担当するリハ専門職
③事業の企画・調整や地域課題の分析などを担当するリハ専門職
 最も容易に関わるには,①の地域リハビリテーション活動支援事業としての派遣を病院等の組織団体が行政や地域包括支援センターから委託され,地域に出ることであろう(図1).都道府県別の理学療法士会・作業療法士会の各支部などで委託を受けることが多いため,所属される士会に相談をするのが近道と思われる.ただ平成29年時点で,介護予防市町村支援事業としてリハ職等広域派遣調整事業を計画している都道府県数はわずか15府県(宮城県,福島県,群馬県,千葉県,新潟県,石川県,山梨県,静岡県,大阪府,鳥取県,島根県,香川県,佐賀県,熊本県,大分県)であり1),地域支援の実際は,各都道府県,各市町村といった自治体の取り組み状況に非常に左右される.実際に平成29年の地域リハビリテーション活動支援事業への協力機会に関する調査では,約7割のリハ専門職が一度もないという結果であり2).まだまだ少ないのが現状である.そういった際に地域事業の要となり相談先となるのは,地域包括支援センターになる場合が多い.

図1 地域リハビリテーションの体制について出展:厚生労働省老健局:一般介護予防事業等の推進方策に関する検討会資料.令和元年10月21日・https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000558773.pdf 

2.地域包括支援センターから開拓する

 地域包括支援センターはすべての市町村に設置され,原則として保健師,社会福祉士,主任介護支援専門員の配置が定められている3).それに加え,他職種の配置も認められてはいるが,図2のようにリハ専門職の割合は極端に少ない.上記②の地域事業の担当や,③の企画・分析の担当まで仮に担いたいと思えば,地域包括支援センターは避けて通れない組織ではあるが,リハ専門職はほぼ配置されていないのが現状である.そのため,病院等に勤務する我々リハ専門職としては,その地区を担当する地域包括支援センターの設置状況や設置場所を把握することが重要と思われる.図3にあるように,地域包括支援センターは各市町村直営型と委託型に分かれている.委託型であれば病院や老健施設等が担っていることが多いので,比較的連携は取りやすいように思う.市町村直営型はその市町村の行政が担っていることが多く,少しハードルは高いかもしれないが,筆者の経験上リハ専門職の関わりは非常に歓迎される.関心のある方は是非,所属する病院等に勤めながらも一歩踏み出し地域に関わることで,地域共生社会により貢献して頂ければ幸いである.

図2 地域包括支援センターにおける3職種以外の職員加配状況(平成30年4月末時点)出展:厚生労働省:平成30年度地域包括支援センター運営状況調査・https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000555623.pdf 
図3 地域包括支援センターの設置状況(令和2年4月末時点)出展:厚生労働省:地域包括支援センターの概要(設置数等)・https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000756893.pdf 

参考資料

1)    厚生労働省老健局:市町村職員を対象とするセミナー.地域リハビリテーションの重要性とその活用について.平成29年資料・https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12600000-Seisakutoukatsukan/0000151679.pdf
2)    日本理学療法士協会:平成29年厚生労働科学研究費補助金地域医療基盤開発推進研究事業「理学療法士・作業療法士の勤務実態及び働き方の意向等に関する調査」・https://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/info/ptot_hatarakikata_chosa_20180418.pdf
3)    厚生労働省:地域包括支援センターの設置運営について・https://www.mhlw.go.jp/topics/2007/03/dl/tp0313-1a-03.pdf

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