記事一覧
サラハレタココロヲサガシニキマシタと曼殊沙華群るるなかに立ちをり 河野泰子
てふてふに取りかこまれゐし立葵かたりあひたきあの頃のこと 高田芙美
「鹿の遠音」吹きにし人のみまかりぬ残る一人のいかにかあらむ 田中美智子
帰りたいあのすすき原 何枚も何枚も透けた瞼を閉じて 加瀬はる
ひとしきり考えているひとりきり会えなくなった人たちのこと のやまきのこ
Amazonにどこでもドアはもうなくて会いたいひとを待つばかりです 永田愛
壁を這うつる草が壁を覆うまで かなしみが笑い話になるまで 加瀬はる
花蕊をたてて凛々しき仏桑華昼ひそかなる海辺を過ぎつ 田中美智子
シャンソンに「赤い月」とは聞きしかど紫けぶりわたれり今宵 北野ルル
この道ははるかな山に至れども花に埋もるる蝶もあるらむ 高田芙美
その中に別の私もいるのだろうミラーが映すもうひとつの空 峯菜実子
身を寄せて祈っていたい五百年消えることない焰のまえに 永田愛
すぐそこのあなたはわたしに気がつかず永遠に見守るひとつとこより 薮内栄子
亡きひととのかたらひ覚めて東雲のうすき明かりに水飲みにゆく 河野泰子