『ダンダダン』異色にして傑作の回!7話の感想
「こいつは未練を残したままだ。成仏はできねえなあ」
赤いワンピースの妖怪女“アクロバティックさらさら”が粉々になり行く過程で、招き猫に憑依したターボババアがそう呟いた。
現在放送されているアニメ『ダンダダン』第7話はこれまで放送された回とはかなりテイストが異なる回だった。
僕はアニメはあまり観るほうではないが、今期放送されているアニメの中では『ダンダダン』は欠かさず観ている。
主人公である高校生の綾瀬桃と高倉健(オカルン)の掛け合い面白く、妖怪とのアクションシーン、基本コミカルだが時に生々しく描かれる性的描写等々、アニメ音痴の僕から見ても高いクオリティのアニメだと分かる。
異色の7話
そんな『ダンダダン』だが、第7話は同じ学校の生徒である白鳥愛羅(アイラ)が赤いワンピースの妖怪女に襲われ、主人公二人が妖怪女と立ち向かうところから始まる。
オカルンの特殊能力(ターボババアの妖力)を使い切り、なんとか妖怪女を倒した二人だったが、倒れていたアイラが死んでいることに気づく。アイラを生き返らせるために人工呼吸などをするが、それでも生き返ることはない。
その時、最後の気力で立ち上がった妖怪女からある提案が。それは妖怪女のオーラをアイラにあげることだった。しぶしぶその条件を受け入れた綾瀬桃は桃の超能力でアイラと妖怪女のオーラを結びつけることに。オーラを結びつけた時、シーンはある女性がラブホのベッドで寝ていて、タイマーで目を覚ます場面となる。
シングルマザーの悲しい過去
ここからはとある女性の記憶、あるいは回想シーンとなるのだが、この回想シーンこそが白眉だった。ラブホで目覚めた女性は、机にお札が置いてあることから、どうやら風俗か売春をしているようだ。その後女性が雨の中くたくたでアパートに帰ってくると、玄関で出迎えてくれたのは小さな女の子だった。その子は屈託のない笑顔で女性、つまりお母さんの足もとを抱きしめる。
この後は女性が清掃やコンビニでバイトをするシーンやラブホにいるシーンなどが挟まれる。女性はシングルマザーでお金のやり繰りに相当苦労しているのが伺える。ただ、娘といる時はこれ以上にない幸せな顔をしており、娘にバレエを教え(バレエ教室に通わせる余裕はないように見える)、料理を作ったりする。アニメを見直して気づいたのだが、ラブホにあったタイマーと料理に使うタイマーを対比させており、娘との幸せにある代償をエグく描いている。
娘にバレエシューズや赤いワンピースを買ってあげ、幸せの絶頂となっていたある日、借金取りがアパートに押し入り、娘を攫われてしまう。お母さんがアパートを出て娘を追いかけようとする一人称視点はアニメを観ている僕も絶望と焦燥感に襲われた。
そして娘を見失った母は…
5分以上ある上記の回想シーンはほとんど台詞が無く、美しい旋律のピアノが流れ続けている。我々は一人の女性の悲劇のバレエを観させられていたのだ。
未練がある妖怪は成仏できない
ターボババアが言うには、未練がある妖怪は成仏できず無となるだけだそうだ。こんな悲劇の女性(言わずもがな妖怪女のことである)の過去を知り、成仏もできないのはあんまりだ。そう思っていたらラストは…。『ダンダダン』第7話は異色にしてアニメ史上傑作の回だったといっても過言ではない。観ていない方はぜひ各配信サイトや見逃し配信などを観てほしい。
おわり。
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