誕生日にお別れした話
誕生日前夜
その日は風がひどく強かった
ガーデンプレイス35階の鉄板焼き屋さんに行った
景色が綺麗だった
また来ますと言った
それは唐突だった
いつかは話さないといけないと思っていた
まさか今日になるとは思わなかった
目を瞑ることもできた
彼の匂い
彼のほくろ
一緒に買い揃えた家具
全てにさよならを言うのは名残惜しすぎて
わんわん泣いた
彼も泣いた
初めて見せた涙だった
彼は最後の夜までタバコを吸った
最後の朝までたくさん寝た
花束みたいな恋をしたを観た
始まりから泣いた
出会のシーンで泣いた
別れのシーンでも泣いた
全部私たちみたいだと思った
次の日は雨だった
彼の口からはお酒の匂いがした
昨日飲んだシャンパンかな
触れたいと思った
ヤりたいと思った
そんな身勝手なことはもうできないと思った
恋人最後の日を迎えた
1年半はあっけなく終わった
プレゼントにApple Watchをくれた
4万もした
数分後に別れるのに
表参道のカフェに入った
喫煙可能だった
彼はいつもキャメルの緑を吸っていた
ほどほどにしなよ〜と言ったら
これからもっと増えるかもと言われた
もう止めてくれる人がいないからか
電車から降りた
ありがとうと言った
応援してると言われた
声が詰まってあまり話せなかった
改札を出た
振り返らないと決めてた
でも振り返ってしまった
彼は最後まで見届けてくれていた
初めて会った日運命を感じた
離れていても大丈夫だった
顔が似てると言われ続けた
お似合いだと言われ続けた
このままうまく行くと思ってた
結婚すると思っていた
後悔はしていない
これでよかったと思ってる
でも1年半彼が埋めてくれていた心の溝がぽっかり空いた気がして
寂しくて
悲しくて
やるせなくて
思い出すたびにまた泣いている
運命の人は一度別れる
その言葉が本当なら
また一緒になれるかな
幸せになってね
悪い女に騙されないでね
もう一回人生やり直しても出会いたい
そう思える恋愛だったよ
ありがとう