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そういうトコ。

〇〇「ごめんな、美羽。今日はこっち乗ってもらって」
美羽「あ、いえ、全然大丈夫です。…むしろすいません私まで送ってもらって」
〇〇「ええよ、別に。ついでついで」

収録終わり、普段は3期を担当してる△△さんの車両
で送迎してもらうことが多いけど、今日はスケジュールの都合で2期生さんを担当してる〇〇さんに送ってもらってる。

ひかる「そうそう。〇〇さんこれで終わりだし、明日もゆっくりめだから大丈夫」
夏鈴「…どうせ村山が断ったら、他の誰か代わりに乗せるだけだし」
〇〇「なーんで二人が俺の代わりに俺の思考を代弁すんのよ」
夏鈴「だって…」
ひかる「ねぇ?」
〇〇「なにがねぇ?やねん。俺のスケジュールを細かく把握してんじゃないよ」
夏鈴「殆んど私達と変わんないし…」
〇〇「違う時もありますゥー。事前打ち合わせとかで皆迎えに行く前に一仕事したりもありますゥー。というか仕事じゃなくても、ゆっくりな日はなんかプライベートで予定あるかもやろ」
ひかる「仕事人間だからなぁ〜。ご飯もメンバーとばっかりだし笑」
〇〇「イジってるー!」
夏鈴「でも実際そうだし…笑」
〇〇「夏鈴ちゃんまでー!?」

仲いいなぁ…笑

〇〇「ていうか美羽置いてけぼりやん」
ひかる「あっ、ごめん!」
夏鈴「…村山は気にしないと思う」
美羽「はい、全然大丈夫です笑」
夏鈴「ほら…」
〇〇「いやいや、後輩は全然ムリですとは言えへんやろ!」
ひかる「確かに笑」
夏鈴「村山なら言うかも」
美羽「言いませんよ!笑」

控室でも、車中でも、たぶんご飯の時でもこんな感じなんだろうな。

〇〇「はーい、ひかる到着」
ひかる「ありがとうございまーす」
〇〇「どういたしまして〜、明日ちゃんとアラーム何個かセットせぇよ!」
ひかる「…モーニングコールしてくれてもいいですよ?笑」
〇〇「電話くらいじゃ起きへんやろがい!」
ひかる「アハハ笑 お疲れ様でーす笑」
〇〇「おつかれ〜」
夏鈴「おつかれ」
美羽「お疲れ様です」

森田さんを見送って、車は再び走り出す。

〇〇「次は夏鈴ちゃんかな」
夏鈴「私、最後でもいいけど…」
美羽「いや、わざわざ遠回りしなくても…」
夏鈴「…別に急がないし」
美羽「私も別に急ぎませんよ笑」
〇〇「なんの遠慮しあいやねん笑」
夏鈴・美羽「笑」
〇〇「美羽とおる時は夏鈴ちゃん、お姉ちゃんしてるよなぁ」
夏鈴「…べつにそんなんじゃないけど」
〇〇「元々お姉ちゃんやから、面倒見いいとこもあるんやろな」
夏鈴「……」

照れくさそうだけど、なんか嬉しそうにも見える。

〇〇「普段は甘え坊やのにな!笑」
夏鈴「も〜、本当にヤダ…。絶対さっきイジったの根に持ってる」
〇〇「イジられたらイジり返さないとなぁ」
夏鈴「ホント大人げない…」

そういうトコがいいのかな?

〇〇「美羽も意外と甘えん坊なんやろ?」
美羽「えっ!?」
〇〇「だいぶ前やけどそこさくで言うてたやん。愛季みたいに先輩に可愛がられたいって」
美羽「え…、言いましたけど…」
夏鈴「笑」

なんで藤吉さんまで笑ってるんですか…。

〇〇「ちゃんと甘えられてんの?」
美羽「えっ…、え〜…」
夏鈴「……」

戸惑ってる私をじっと見る藤吉さん。

美羽「…良くしてもらってます。特に藤吉さんに」
夏鈴「…笑」

いつもの様に目を細めて笑う。
…良かった。これで合ってたっぽい…。

〇〇「ホンマに?言わされてない?笑」
夏鈴「言わせてないから…!」
〇〇「冗談やって笑」
夏鈴「もう…」

ほんと、嬉しそう。

〇〇「はーい、夏鈴ちゃん到着」
夏鈴「最後でよかったのに…」
〇〇「美羽が気ぃ使うやろ〜」
夏鈴「…ふ〜ん」
〇〇「なによ?」
夏鈴「…村山優先なんだ」
〇〇「言い方悪いなぁ!」
夏鈴「…別にいいし」
〇〇「はいはい、明日は夏鈴ちゃんが最後ね」
夏鈴「…約束だから」
〇〇「わかったって笑」
夏鈴「…じゃあお疲れ様です。村山もおつかれ」
村山「お疲れ様です!」

名残惜しそうに藤吉さんが車を降りて去っていく。

〇〇「よし、行こか」
美羽「はい…」

走り出す車の窓をぼんやりと眺める。

〇〇「どう、最近は?」
美羽「子供と話す話題ないお父さんみたい…笑」
〇〇「クセのある例え!」
美羽「…笑」
〇〇「美羽ってちょっと変わってるよな」
美羽「…変わってる人、好きですよね?」

チラリとバックミラー越しに見た〇〇さんは、ちょっと驚いた顔をしてる。
いきなり変なこと言っちゃったかも…。

〇〇「…確かに好きかもな!笑」

すぐ、いつもみたいに笑う。

〇〇「みーんな変わりもんばっかやし笑」
美羽「…笑」

うん。
やっぱり。

美羽「あの…、ちょっと相談してもいいですか」
〇〇「勿論ええけど、担当じゃなくてええんか?」
美羽「…△△さんに相談する前に、ちょっとお願いしたくて」
〇〇「ふむ、そう言うことなら」
美羽「…髪色、変えたいなって」
〇〇「ほう。それこそ俺はええと思うけど…」
美羽「結構前の話なんですけど、控室で藤吉さんの髪色の話ししてたじゃないですか…?」
〇〇「あぁ〜、したなぁ」


〜〜〜〜〜

その日、藤吉さんが、珍しく控室に居て。

夏鈴「あの…」
〇〇「ん、どしたん?」
夏鈴「…髪、明るくしたい」
〇〇「ほう。どんぐらいにしたいとかあるん?」
夏鈴「…金」

それを聞いた〇〇さんは、流石に悩むかなって思った。けど、

〇〇「ええやん!」

それを聞いた藤吉さんは、やっぱりいつも通り、目を細めて笑って。

〇〇「ブリーチ、2〜3回はかかるやんな?」
夏鈴「たぶん…」
〇〇「ちょっと待ってな…」

〇〇さんはパソコンを操作して、画面に何かを表示する。

〇〇「う〜ん、せっかくやし、すぐに金にせんと色々やってみる? 夏のライブイベント辺りはブリーチ1回で明るめの茶系とか、赤入れてみるとか?」
夏鈴「…いいかも」
〇〇「髪のダメージ具合と相談して、10thあたりで
金…。せっかくやし、アートワーク撮るタイミングで金にして、それのお披露目まで内緒にする!?」

藤吉さんの笑みが深くなる。

〇〇「夏鈴ちゃん、そういうの好きやろ?」
夏鈴「…うん、好き」

その“好き”に色んな意味が込められてる気がする。

〇〇「それまでうまいこと調整して、10thの活動期間から本格的に金髪にして…」

パソコンの画面を眺めながら唸る〇〇さん。
そんな〇〇さんの横顔を見つめる藤吉さん。

〇〇「まぁ、理想はそんな感じかな。後は上の人らに相談して通ったらやな」
夏鈴「…やだ」
〇〇「え?」
夏鈴「もうその気になったから…」
〇〇「いやいやいやいや」
夏鈴「今更ダメって言われてもやだ」
〇〇「え〜…」
夏鈴「〇〇さんのせい」
〇〇「いや、それは…」
夏鈴「絶対やる…」
〇〇「…交渉頑張ります」
夏鈴「頑張って笑」
保乃「えぇなぁ〜。保乃も髪色変えよかなぁ〜」
〇〇「保乃はドラマの撮影終わったらな〜」
保乃「終わったらええの?」
〇〇「ええと思うよ。麗奈〜?」
麗奈「はぁ〜い、なんですか?」
〇〇「麗奈はしばらく黒で行くんやんな?」
麗奈「そのつもりでーす♡」
〇〇「ほな、保乃は明るくしてもええんちゃう? 個人的に保乃と麗奈は並んでバランスよくなるようにしててくれたら嬉しいねんな」
保乃「そうなん?」
〇〇「タイプの違う美人なお姉さんが並んでたら嬉しいやろ」
麗奈「あ、人たらし♡」
保乃「そうかぁ…、じゃあ明るめにしよかな…♡」
夏鈴「…まだ、私の話終わってないんだけど」
ひかる「なんか盛り上がってる!」
天「混ぜろ混ぜろー!」
玲「あぁ、夏鈴ちゃんがじわじわ不機嫌に…笑」


〇〇さんの周りは皆楽しそう。
というか、本人が一番楽しそう。
なんか…、いいな。
私が好きな、櫻坂だな。

別に△△さんがどうってわけじゃないんだけど。
もちろん、頑張ってくれててありがたいけど。
私は…。


〜〜〜〜〜


〇〇「あれはあれで大変やねんで?」
美羽「でも、楽しそうだから笑」
〇〇「まぁ、それは否定せんよ笑」
美羽「…なんか、そういうのいいなって」
〇〇「△△もそのうちそうなってくと思うで」
美羽「△△さんは瞳月と美青と優の相手でいっぱいいっぱいだと思います…」
〇〇「笑 まぁ、今はそうかもな」

楽しいことが好きで、
皆とワイワイはしゃぐのに、
2期生さんが出番の時は静かに見守ってて、
どことなくいつも余裕があって、
よく人を見てて、よく褒めて。
…羨ましいなぁって。

〇〇「そんで、美羽はどんな髪色にしたいん?」
美羽「…私は」



〜〜〜〜〜


美青「美羽、髪色かわいい!」
美羽「いい感じ?」
美青「いい感じ!」

良かった。
ヘアアレンジも可愛くしてもらって、嬉しい。

瞳月「いつの間に相談しとったん?」
優「確かに〜! △△さんといつの間にそんな話したの!?」
美青「私達が知らない間に!?」
美羽「あ〜、ううん。△△さんには〇〇さんから口添えしてもらった」
瞳月・美青・優「?」
美羽「安心して? 私、どっちかって言うと〇〇さん派だから」
瞳月・美青・優「!?」
優月「どういう顔?」
愛季「う〜ん、ライバル減って安心だけど、そんなはっきり言うんだ…顔?」
〇〇「おはよ〜」
ひかる「おはよ…」

〇〇さんが、森田さんを連れて控室に入ってくる。

〇〇「シャキッとしなさい」
ひかる「寝起きやけ、許してよ…」
〇〇「車でも寝たでしょーが」
ひかる「せやけ、寝起き…」
〇〇「まったく…」
美羽「…〇〇さん」
〇〇「おっ!美羽今日からか!ええやん!」
美羽「ありがとうございます…笑」

褒められるのはやっぱり嬉しい。

〇〇「髪もあんま傷んでなさそうやな」
美羽「はい…。いい感じです笑」

ヒョイッと、頭を〇〇さんに突き出す。

〇〇「ん?どした?」
美羽「いい感じです」
〇〇「うん…?」
美羽「…いい感じなんで」
〇〇「……」

〇〇さんは軽く、毛先に触れる。

〇〇「ええ感じやな笑」
美羽「…ええ感じです笑」
ひかる「……なーにイチャイチャしてんの」
夏鈴「……村山ぁ」

いつの間にか、控室の入り口から藤吉さんものぞいている。

美羽「…じゃあ、席戻ります」
〇〇「おい、逃げんのか!」

私を追いかけようとした〇〇さんの肩を、森田さんがガシリとつかむ。
藤吉さんも、いつの間にか直ぐ側まで来てる。

ひかる「ちょっと詳しく」
夏鈴「話すまで許さないから…」
〇〇「俺は悪ない!」

あー、楽しいな。
やっぱ、そういうトコ、好きかなって。











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