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妹みたいって…

瞳月「優、寝てもうたな」
美青「はしゃぎ疲れたかな笑」

夏休み。
私は同じダンス部の瞳月、優と一緒に臨海公園に遊びに行っていた。海を眺めたり、ひまわり畑を散策したり、かき氷を食べたり夏らしい1日だった。
帰りの電車では疲れが出たのが、優が静かに寝息を立てている。

瞳月「で?」
美青「で…ってなに?」

瞳月は自分の目元をちょんちょんと指差す。

瞳月「急にサングラスなんかかけて」
美青「え、似合ってない?」
瞳月「ううん。最近ファッションもメイクも大人っぽいからよう似合ってると思う」

不安にさせないでほしい…。

瞳月「…元はと言えば、大人っぽい格好しだしたのもやけど」
美青「……」
瞳月「言いたくないんやったら別にええ」
美青「せっかちすぎ」

私だって、言葉を整理したい時ぐらいある…。

美青「…妹みたいってどういう意味だと思う?」
瞳月「…じれったいなぁ。相談するんやったらもっと直球できぃや」

いらいらしーちゃん。
私はサングラスを外して、改めてそれを眺める。

美青「…一緒に買物行って、お揃いの物買って、自分に妹いたらこんな感じなんかなって言われた」
瞳月「…それで?」
美青「…嬉しかった。けど、ちょっと複雑だった」

サングラスのフレームを撫でながら、ここしばらくの日々を思い出す。

大好きな憧れの先輩が卒業して、なかなか会えなくなって。色々考えすぎて、勝手に凹んで、勝手に自己嫌悪してた。

そんな凹んでる私を励ましてくれた人。
先輩との別れに悩む私に、自分も同じだって言ってくれた人。自己嫌悪する私に、嫌なヤツなんかじゃないって言ってくれた人。君が尊敬する人みたいに、ストイックで、一生懸命で、カッコいいよって言ってくれた人。

そんな人に一緒にいて楽しいって言ってもらえて、お揃いの物を選んで買うのが嬉しいねって言ってもらえた。妹みたいにかわいがってもらえるのも、嬉しかった。
でも、やっぱり、素直に喜べなかった。
いつも、そんな自分が嫌になる。

美青「一緒に買物行けたのも、お揃いのサングラスプレゼントしてもらえたのも、妹みたいってかわいがってもらえるのも嬉しい。けど…」
瞳月「喜んだらええやん」
美青「え…」
瞳月「妹みたいに可愛いってことやろ?なら嫌われてはないやん。むしろ好かれてるやん」
美青「う、うーん…?」
瞳月「なんやったら距離は彼女より近いやろ」
美青「うーん…?」

そういうもの…?

瞳月「どう見られてるなんか関係ない。どう見てもらいたいかやろ?自分もわかってるから大人っぽい格好してるんちゃうん?」
美青「う…」
瞳月「相談するふりして自分の考え方が間違ってないか確認してんねやろ?」
美青「うぅ…」
瞳月「背中押してもらいたいだけやん」

めちゃくちゃ刺してくる…。

瞳月「…理屈より感情やろ。しーらまだ高校生やで。変に物分かりいいふりするんやめぇや」
美青「……なんで私怒られてんの?」
瞳月「知らん」

瞳月はスマホを取り出して操作。
すぐに私のスマホが鳴る。
確認すると瞳月からLINEが入ってる。
さっきひまわり畑で撮ってくれた私の写真が貼付されてる。


瞳月「インスタにでも貼っといたら。ライバル、多いんやろ。アピールしときぃや」

俗に言う匂わせってやつだ…。

美青「瞳月…」
瞳月「なに?」
美青「やっぱ瞳月に相談するんためらうわ…」
瞳月「なんでやねん!」
美青「言い方がキツイ!すぐイライラするし!運動音痴でビビりのくせに!」
瞳月「それ今関係ないやろ!」
優「2人共、声大きい…」
瞳月・美青「すいません…」

少し迷って、いや、だいぶ迷って、私はスマホを操作。とりあえず、インスタのストーリーに写真を上げてみる。

『サングラスデビュー。
とある方からのプレゼント。』

投稿し終わって、カメラロールを少し遡る。
眼鏡屋さんで並んで撮った写真。
またこんな風に一緒に写真が撮れたら嬉しい。
窓の外を眺めると、さっきまでサングラスをしていたせいか、世界がいつもより眩しくて、鮮やかな気がした。


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Xに上げていた短編。
夏フェスに行こうの裏であった出来事。
ちょこっと加筆修正してこちらにもアップ。

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