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JOY!
玲「〇〇さーん!」
〇〇「ん?」
とある日の控え室、ゾノが白衣姿に聴診器を掛けて声をかけてくる。
〇〇「えー!!愛子ちゃんやん!!」
玲「えへへ♡流石ですねぇ」
〇〇「そら解るって」
今月初めて立った舞台で、ゾノはお医者さんの役を演じた。今の姿はその時のイメージそのまま。
〇〇「でもまたどうしたん?」
玲「ハロウィンじゃないですかぁ?実際着るかは分からないですけど、選択肢としてはありかなって白衣と聴診器買っちゃいました笑」
〇〇「へぇ〜!気合はいってんなぁ! …でなんで今着てんの?」
玲「白衣って結構暖かいんですよ!今日肌寒いから、ちょうどいいんです!」
〇〇「…あ、そう」
玲「〇〇さんの分もあるんで着ましょ〜♡」
〇〇「……シンプルになんで?」
なんで着んの?
そして、なんであんの?
玲「まぁまぁ、ハロウィンだから笑」
それ理由になるんか?
〇〇「…確かに暖かいな」
結局ジャケットを脱いで、白衣を着る。
意外としっかりしてるし、厚みもある。
まぁ、実験とかで薬品から身を守ったりするんだから、ある程度の頑丈さは必要か。
…白衣のサイズ展開がどんなもんかわからんけど、ピッタリのサイズ感な気がするのは気のせいやろか。
玲「似合いますね〜♡」
〇〇「そうかねぇ。ゾノは知的やし似合うと思うけど、俺が着てもねぇ…」
玲「眼鏡もありますよ♡」
〇〇「…ハロウィンに乗じて俺にコスプレをさせるのは止めなさい」
玲「…バレました?笑」
〇〇「そらバレるて…」
とはいえ、眼鏡かけるだけで喜んでくれるんなら、やぶさかではない。
玲「おぉ〜笑」
〇〇「何やその反応」
玲「ぽいですよ笑」
〇〇「さいですか…。それこそゾノが眼鏡かけて白衣着てってしてたら皆喜びそうやなぁ」
玲「え〜、やっぱり男の人って女医さんとか好きなんですか?」
〇〇「主語がでっけぇなぁ…。人によりけりやけど、ゾノは似合いそう。保健室の先生とかもさぁ」
玲「〇〇さんは好きなんですか?保健室の先生」
〇〇「急に主語が限定的になった…。俺は別にそういうのは無いけど…」
玲「じゃあ、看護婦さんの方が?」
〇〇「なんでそうなんねん」
玲「あ、わかった!お医者さんとして診察する方が好きな感じですか?」
〇〇「おい、なんかおかしなことになってへんか?」
ひかる「なにしてんの…?」
いつの間にか背後にひかるが立っている。
〇〇「びっくりしたぁ…」
あぶねー。
危うく変な展開を見られるところやった。
ひかる「……なんでペアルックしてんの?」
うーん!既に変な展開やったわ!
でも白衣にペアルックって概念適用されるん?
〇〇「ゾノがハロウィンでカクカクシカジカ」
ひかる「……やからって〇〇さんまで着る?」
うーん!ごもっとも!
〇〇「…いやぁ、まぁほら、暖かいし…」
ひかる「ふぅん……?」
ひかるは俺の腕の下にもぐり込むと、白衣の中にくるまる。
ひかる「…確かにぬくかね」
〇〇「いや、カーテンやないんやからさ」
太陽と彼女と私か。
玲「ひかちゃんいいなぁ〜」
〇〇「よかないよ…」
保乃「……なにやってるん」
〇〇「わっ!?」
君らもうちょっとわかりやすく入って来てくれ。
保乃「…どういう状況?」
うーーん!
どう見ても変な状況!
〇〇「え〜っと…。ゾノがハロウィンでカクカク、ひかるがシカジカ…」
保乃「え〜!?保乃もひいちゃんみたいに入りたい!」
〇〇「いや、保乃はデカ…、背ぇ高いから無理やろ」
保乃「今デカいってゆった〜!!ヒドい!!」
〇〇「言い直したやろ!そこの気遣いをくみ取ってくれや!」
急な対応にしては頑張った方やろ…。
〇〇「というか保乃は来たほうが早いやろ」
白衣を脱いで保乃に渡す。
保乃「え〜、さすがにちょっと大きいで?笑」
萌え袖気味だし、丈も長い。
〇〇「なんかそういうキャラおりそう笑」
保乃「これって…彼シャツ的なやつちゃう!?」
〇〇「彼白衣…ねーよ」
限定的すぎるやろそのシチュエーション。
ひかる「保乃ちゃんズルい!」
〇〇「ひかるはどう考えても裾引き摺るやろ」
やいやいする2人。
〇〇「ごめんな〜ゾノ。せっかく貸してくれたのに勝手に渡してもうて」
玲「いえいえ〜、お気になさらず笑 でも普通のサラリーマンさんに戻っちゃいましたね〜」
〇〇「それが本来やからなぁ〜」
玲「〇〇さん」
ちょいちょいと手招きするゾノ。
〇〇「ん?」
近寄るとゾノは俺の耳元へ。
玲「頑張るサラリーマンさんの診察、してあげましょうか♡」
俺はスイーッとゾノから距離を取る。
〇〇「…あのねー、トリート一択で来るの止めてくれる?照れるやろ…!」
玲「えっへへ♡」
〜〜〜〜〜
数時間後。
保乃「あ〜あ〜、せっかくお仕事早く終わったのに〇〇さんとひいちゃん別仕事やもんな〜」
麗奈「う〜ん、ご飯でも食べて帰る?」
保乃「せやなぁ〜。玲ちゃんもどう?」
玲「う〜ん…ちょっと待ってもらってもいい?」
保乃「どうかしたん?」
玲「実はね、〇〇さんが…」
〜〜〜〜〜
ひかる「〇〇さん、この後直帰ですよね?」
〇〇「うん。ひかる送ってったらそのまま帰るで」
ひかる「…じゃあもし良かったら」
遮るように、ひかるのスマホが鳴る。
ひかる「ん…。玲ちゃんから…」
スマホの画面をしばらく眺めるひかる。
と、俺のスマホにもLINEの通知が。
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保乃「〇〇さん、メイド好きって聞いたで!!」
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麗奈「〇〇さん、メイドさん募集中って聞きましたよ♡」
な、何が起きてる…?
ひかる「…〇〇さん、これホント?」
〇〇「ん!?」
ひかるのLINEの画面にはゾノからのメッセージ。
玲『ひかちゃん、実はね。〇〇さん、メイドさんが好きなんだって…』
〇〇「ハァっ!?」
誰が言うてんそんなこと!
ひかる「……」
ひかるの視線が俺のスマホの画面に注がれている。
あ、ヤバ。
ひかる「保乃ちゃんと麗奈ちゃんにも送らせてる…」
〇〇「いやいやいやいや、ちゃうちゃうちゃう」
ひかるは自分のスマホを忙しなくスワイプ。
ひかる「…撮っとらん」
〇〇「…ん?」
ひかる「私、メイドさんのオフショット撮っとらんの!」
〇〇「あ…、はい?」
ひかる「…明日生写真持ってくるから待っといて!」
〇〇「いや、ひかるさん?」
ひかる「…そ、それか直接着とうほうがよか…?」
サービス精神が旺盛過ぎる。
〇〇「そんな事させてたらドチャクソイジられるやろ!!やめてくれ!!」
すぐにスマホを操作する。
とっちめてやらねば…!
〜〜〜〜〜
保乃「…既読ついてるのに返事こーへん!」
麗奈「こっちも〜」
そうこうしてると、玲ちゃんのスマホが鳴る。
玲「あ、ごめん!〇〇さんから電話来ちゃった!今日はご飯は遠慮しておくね!」
保乃・麗奈「えっ!?」
玲「〇〇さん? え〜、だって男の人ってメイドさん好きかなって♡」
そそくさと控え室の出口へ向かう玲ちゃん。
保乃「ちょっと玲ちゃん!?」
手でごめんね、と謝りながら去っていく。
玲「えっへへ♡ 後で私のメイドさん姿も送っておきますね♡ え、そういうことじゃない? ひかちゃんが凄い? ンハハハハハ!笑」
遠ざかっていく笑い声を聞きながら、確信する。
保乃「や、やられた〜!」
麗奈「え?え?」
保乃「ツッコミの電話かけさせるための罠やったんや!!」