餌付け
〇〇「あら夏鈴ちゃんお菓子タイム?」
スタジオから戻って席に着くと、いつの間にか隣の席を陣取って、夏鈴ちゃんがお菓子を食べている。
夏鈴「……」
〇〇「どうかしたん?」
パソコンを立ち上げていると、夏鈴ちゃんが前髪越しにじっとこちらを見てくる。
夏鈴「…食べます?」
〇〇「ありがとう、でも大丈夫。ちょっと仕事してからにするわ〜」
夏鈴「……」
夏鈴ちゃんはつまらなそうにぷいっとそっぽを向いて、食べ終わるとそそくさと控え室を出ていく。
〇〇(機嫌損ねたかな?)
少しして夏鈴ちゃんは、小さなバスケットに色々お菓子を詰めて戻って来る。
〇〇(食べたりんかったんかな?)
パソコンを叩きながら横目で見ていると、夏鈴ちゃんは隣の席に座って包み紙を剥がす。
夏鈴「ん…」
目の前にお菓子が差し出される。
手で受け取ろうとすると、シュッと引っ込められる。
〇〇「ん?」
夏鈴「…仕事しないと」
〇〇「んん…?」
パソコンの操作を再開すると、再び目の前にお菓子が現れる。これは…、そういうことなんか?
〇〇「ん…」
口を開けて待機すると、ぽいっとお菓子が放り込まれる。
夏鈴「ふふ…」
何故か満足そうに笑う夏鈴ちゃん。
〇〇「…美味しいけど恥ずかしいんやが?」
夏鈴「ん…」
次のお菓子が降臨。
え、続くん?
〇〇「ん〜」
夏鈴「ふふふ…」
仕事にならんやないか…。
ひかる「こっちにもありますけど?」
反対側の席に座ったひかるからも、お菓子が差し出される。
〇〇「いや、何この状況」
ひかる「ほら」
〇〇「ん〜」
ひかる「アハハ笑」
贔屓は良くないし、とりあえず貰っておく。
夏鈴「……ん」
〇〇「いや、忙しいな」
夏鈴「ん!」
そんなムスッとせんで…。
〇〇「んん…」
保乃「じゃあ次は保乃から…」
〇〇「まひで?」
保乃「なんや、保乃のお菓子は食べられへんの?」
〇〇「酔っ払いか?…はいはい」
保乃「へへへ…」
玲「じゃあ次は私で」
〇〇「予約システムでやってへんねん」
玲「はいはーい、口開けてくださーい」
〇〇「歯医者かよ…ん」
玲「えへへ♡」
麗奈「ここに並んだらいいですか?」
〇〇「動物園の餌やりちゃうねんぞ」
麗奈「まぁまぁ♡」
〇〇「いなすないなすな」
しばらくして…
〇〇「おまへらはひゃーひょうひゃなひな」
梨名「ん、なんて?笑」
唯衣「なんか言ってるけどわからん笑」
〇〇「ふひゃけひゃけって」
綺良「食べながら喋るのは行儀悪いですよ?」
〇〇「ぼい!」
玲「頬袋みたい…笑」
ひかる「頬袋…笑」
〇〇「んらってんやへーぞ」
光莉「〇〇さんお水どうぞ」
〇〇「んんんん〜!」
天使か?女神か?
〇〇「ん…。お前ら無茶苦茶苦しやがってよ…」
人を人間バキュームカー扱いすんじゃないよ。
夏鈴「……」
〇〇「え、俺が悪いん?」
なんでそんなムスッと継続?
ちょっと悩んで、夏鈴ちゃんのバスケットからお菓子を一つ手に取る。包みを剥がして夏鈴ちゃんへ。
〇〇「ん」
夏鈴「……ん」
パクっと夏鈴ちゃんが食べる。
夏鈴「……ふふ」
あ、それでええんや。
一同「……」
気配を感じて振り返ると、ジリジリと皆が距離を詰めてくる。
〇〇「こぇーよ!奈良の鹿か!」