傍から見たらば。
美青「…どしたん、そんな顔して」
瞳月「…〇〇さん寝てんのかな」
向かいの少し離れた席に座って、〇〇さんが腕を組んで目を閉じている。
美青「うーん…かなぁ? いつも忙しそうだし」
瞳月「そうやなぁ…。あ、起きた」
目を開けた〇〇さんは、立ち上がると控室の入口へ歩いていく。
美青「どこ行くんだろ」
瞳月「トイレとかちゃう?」
ドアの取手に手をかけるかどうかぐらいのタイミングで、外から人の走る足音がかすかに聞こえた。
〇〇さんはドアを開けて、顔だけ覗かせると、
〇〇「きらこ!沼ァ!廊下走らないの!」
綺良「うわっ、びっくりした!」
晶保「すいませーん!」
それだけ言うと、ドアを閉じて席へ戻っていく。
美青「…え、今足音聞こえてた?」
瞳月「…ドア開ける前に聞こえたような気はするけど…」
それより早く〇〇さんはドアに向かってたし…。
保乃「いきなりおっきい声出すからびっくりするやん笑」
〇〇「もー、きらこと沼は目ぇ離すと何するか分からんからなぁ…。まったく子供やねんから」
保乃「それ自分が言う?笑」
〇〇「俺は時と場合はわきまえてますぅ〜」
自撮りをしていた保乃さんが、席に戻る〇〇さんに話しかける。
保乃「ほんまかな〜?笑」
〇〇「ほんまですぅ〜。…写真撮ったろか?」
保乃「お、じゃあお願いしよっかな」
〇〇「…え、ここ押したらいいん?」
保乃「わからんのかーい!笑」
〇〇「デジカメとか使い方知らんもん」
保乃「はいはい分かった分かった笑」
〇〇「写真と言えば、写真集の表紙、各バージョン発表されたやん」
保乃「え…、よう知ってるな…」
〇〇「おいおい、担当マネージャーなめんじゃねーよ。そんくらいはしっとるよ」
保乃「え〜…、そうなん?」
瞳月「…保乃さん、嬉しそうやな…」
美青「…反応可愛い」
保乃「じゃあ、その〜…、どの表紙が一番好き?」
〇〇「ハァ?そんなハンバーグとオムライスとナポリタンどれがスキ?みたいな質問やめてくれる?」
保乃「…うん、ごめんよくわからん」
〇〇「どれも好きに決まってるやろ?」
保乃「えぇ〜、優柔不断やなぁ笑」
瞳月「ご機嫌やなぁ」
美青「めちゃくちゃ笑顔」
〇〇「そういう優柔不断な人間のためにお子様ランチっていうもんがあるんやで」
保乃「自分もういい大人やろ?」
〇〇「そう、大人の財力によって全部買うという選択肢がある」
保乃「いやいや、ちゃんと献本とかあるから笑」
〇〇「実家に送る用もいるやろ」
保乃「…え、実家に送ってんの?」
〇〇「そら、うちのアイドルかわいいやろ!っていうの見せとかんと」
保乃「恥ずかしいって!そんな…、いくらお父さんとお母さんって言っても水着とか下着姿見られるんは恥ずかしいって!」
〇〇「何が恥ずかしいねん!ええ身体してるんやから自信持てや!」
保乃「なんか言い方が嫌や!」
瞳月「…なんやろ、これ」
美青「うーん…」
唯衣「戻りました〜」
梨名「お疲れ様です〜」
〇〇「おかえり〜。そろそろ保乃も出番来るから準備しときや」
保乃「ちょっと!まだ話終わってない!」
〇〇「まぁまぁ、また後でな」
保乃「もぅ〜!」
〇〇「麗奈ぁ、そろそろ準備って…、また色々広げて〜」
麗奈「えぇ〜、もうそんな時間ですかぁ?」
〇〇「そんな時間やねん。はよ片付けんと…」
麗奈「え〜、もうちょっとお化粧直したかったなぁ〜…」
〇〇「時間はあんなにあったじゃないか」
瞳月「突然のBAN」
麗奈「いつの間にかなくなっちゃったんです〜」
美青「そしてスルー…」
〇〇「もう十分可愛いから大丈夫やで」
麗奈「ホントですかぁ〜♡」
〇〇「ホントホント」
麗奈「じゃあ、片付けるの手伝ってください♡」
〇〇「なにがじゃあ、なんかわからんけど」
ゴミとかを捨てに行く〇〇さんを尻目に、麗奈さんはのんびりお化粧道具をポーチにしまっている。
〇〇「天〜、準備出来てる?」
天「ばっちり!」
〇〇「流石ぁ〜」
天さんは準備万端。
〇〇さんに褒められてドヤ顔。
〇〇「あれ、いのり達と一緒に夏鈴ちゃん戻って来る予定だったんだけど」
唯衣「夏鈴は先に戻るっていってましたけど?」
梨名「戻ってないんです?」
〇〇「戻ってないんです。救護室でカーテン編んでんのかなぁ…」
〇〇さんはドアへ向かう。
〇〇「ちょっと見てくる。準備しといてや〜」
そのままドアを開けて、控室を出ていく。
玲「おはよ〜ございま〜す」
〇〇「ゾノおはよ。次の次くらいに出番やから…ってまたそんなチャラ男みたいなかっこして!!」
ドアの向こうから、会話が小さく聞こえてくる。
気のせいかな。皆が聞き耳を立てている気がする。
玲「え〜、そうですかぁ?笑」
〇〇「もう〜、皆ぞのおがチラついてそわそわしちゃうでしょ!」
玲「えへへ笑」
〇〇「えへへじゃないのよまったく…」
玲「え〜、〇〇さんは嫌いですか?」
〇〇「……嫌いじゃないです」
玲「えっへへ、よかったぁ笑」
〇〇「よくないよくない」
玲「え〜、〇〇さんが嫌いじゃないならいいじゃないですか〜笑」
〇〇「恐ろしい子!そうやって人をたらしこんでるんやな!」
玲「えへへ笑」
〇〇「出番までもうちょいあるから、お腹空いてるんやったらなんか食べや〜」
玲「はーい笑」
〇〇「じゃあまた後で」
玲「みんなおはよ〜」
一同「おはよ〜」
ドアを開けて、玲さんが控室に入ってくる。
それから少しして。
〇〇「もう〜、何処にいるかと思ったら…」
夏鈴「……」
〇〇さんは、眠たげな夏鈴さんの手を引っ張って控室に戻って来た。
玲「お、帰ってきた」
唯衣「どこいたんですか?笑」
〇〇「セットの裏でうたた寝してた」
梨名「なんでそんなとこ笑」
夏鈴「…綺良ちゃん達が、救護室前の廊下で騒いでたから…」
〇〇「なにをやっとんだ…。まぁ、ここ座りや」
〇〇さんはさっきと同じ席に座ると、隣に夏鈴さんを座らせる。夏鈴さんは渋々座ると、机に突っ伏してすぐに静かに寝息を立て始めた。
〇〇「それで、麗奈ぁは準備出来たの?」
麗奈「出来ました〜」
〇〇「次からは自分でしっかり頼むで…。後輩も見てるんやからさぁ」
麗奈「え〜、私ちゃんとやってるよね?」
2人がこちらに視線を向ける。
瞳月・美青「あっ、はい」
〇〇「ハイとしか言われへんやろ。この状況」
麗奈「おかしいなぁ〜」
〇〇「はいはい、そろそろ次行くで〜」
保乃・麗奈・天「はーい」
〇〇さんも立ち上がろうとして、ジャケットの裾を眠っている夏鈴さんが掴んでいるのに気づく。
〇〇「……」
器用に起こさないようジャケットを脱ぐと、そのまま夏鈴さんに掛けて、立ち上がる。
〇〇「さ、行こう。2人もそろそろ準備しといてな」
美青「はい」
瞳月「わかりました」
控室のドアへ向かう4人。
天「…おりゃ!」
〇〇「おわっ、びっくりした」
天さんが〇〇さんの背中に飛びつく。
〇〇「…よっしゃ!頭打つなや〜」
天「フゥー!」
〇〇さんはそのまま天さんをおんぶして、控室を出ていく。
麗奈「え〜、おんぶいいなぁ。私も運んで欲しい」
保乃「いや、結局廊下走ってるやんか!」
声が遠ざかっていく。
唯衣「騒がしいのが一気にいなくなった笑」
梨名「たしかし笑」
玲「たしかし笑 だから夏鈴ちゃんこっちに連れてきたんじゃないかな」
唯衣「なるほどね」
それからしばらく。
夏鈴「ん…」
梨名「お、起きた」
夏鈴さんはジャケットが自分にかけられていることに気づいて少し笑った後、すぐに持ち主が隣に座っていないことに気づいて、不満げな顔をする。
唯衣「〇〇さんはスタジオだよ笑」
梨名「すぐ戻ると思うけどね笑」
どこか楽しげな2人に夏鈴さんはますます不満げ。
ジャケットを抱いて、唇を尖らせてる。
〇〇「戻りました〜」
玲「おかえりなさい〜って、なんですそれ笑」
戻って来た〇〇さんは、小脇にひかるさんと茉里乃さんを抱えている。
〇〇「ちいかわ拾ってきた」
ひかる・茉里乃「わ!!」
〇〇「…まぁ、冗談はさておき、御飯食べるなら今のうちに食べときや」
ひかる「はーい。意外と小脇に抱えられるのもしんどいですね」
茉里乃「腹筋が…笑」
〇〇「付き合ってくれてありがとね。…あ」
〇〇さんが夏鈴さんの視線に気づく。
〇〇「夏鈴ちゃーん、起きてたの?」
夏鈴「…起きましたけど」
〇〇「…よく寝れた?」
夏鈴「…起きたらいなかったんですけど」
〇〇「あっ、そうやね…」
夏鈴「…なんかイチャイチャしてるし…」
美青「…小脇に抱えるのはイチャイチャっていうのかな…?」
瞳月「…しーに聞かんといて」
綺良「お腹空きました!」
晶保「ご飯たべまーす」
控室に戻って来た大不思議のお2人。
夏鈴「……」
夏鈴さんは立ち上がると、控室のドアへ向かう。
〇〇「あ、夏鈴ちゃーん?」
夏鈴「…十分寝たので、救護室戻ります。カーテン編みたいので」
〇〇「あ、あの〜…」
夏鈴「…なんですか」
たぶん、ジャケット抱き抱えたままなのを返してほしいんじゃないだろうか。
〇〇「えっと…」
夏鈴「…ついてくるの?来ないの?」
〇〇「アッ、イキマス…」
美青「わざとなのかな? それとも、気づいてないふり?」
瞳月「だから、しーに聞かんといてって」
〇〇「あ、2人もそろそろスタジオ行こか!ってなんちゅう顔してんねん!」
瞳月「あ、すいません。なんでもないです」
美青「行きましょう」
夏鈴「……」
瞳月「マネージャーって大変やねんなぁ」
美青「だね」
綺良「で、なにかあったの?」
唯衣「うーん、色々ありすぎて笑」
晶保「あー、そう?」
梨名「でんでん興味ないやん笑」