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何処に居たって。何してたって。

本日のお仕事も無事終了。メンバーの皆も帰り支度を済ませ次第、順次帰宅車両へと移動する。
メンバーの準備が済むまでの間、スタジオに忘れ物や落とし物がないかチェック中。
2階のフロアはメンバーが立ち入ることはほぼないけれど、一部動きの読めない奴らがとんでもない所に忘れ物したり落とし物したりするので、念の為…。

〇〇「…?」

なんとなく視線を感じて階下に目を向ける。

夏鈴「……」

いつの間にか、夏鈴ちゃんがちょこんとしゃがみ込んでいる。見た感じ、帰り支度は済んでるらしい。
同乗するメンバーの準備待ちやろか。

帰り支度が済んだのか、姿を現した唯衣が夏鈴ちゃんに何か話しかける。それを受けて夏鈴ちゃんがこっちを指さす。
俺が2階にいるのに気づいた唯衣がピースサイン。
なんで?
たぶん、夏鈴ちゃん笑ってる。

更に麗奈が合流。
唯衣の視線を追って俺に気づく。
ここからみてもわかるくらいニッコニッコしとる。
何か話してるけどまぁ、こっからではわからん。
気ぃつけて帰れ〜。

夏鈴「……」

そしてまた一人になる夏鈴ちゃん。
なんとなく、フロアをまたいでお互いを見ている。
突然、夏鈴ちゃんがぱくぱくと口を動かす。
もちろん、聞こえない。
というか、まったく聞こえないから口パクかな?
たぶん4文字。
つりざお?
ゆりかご?
わからん。

夏鈴「……」

夏鈴ちゃんは少し微笑んで、スタジオを出ていく。
なんだったんだろね。


〜〜〜〜〜


帰り支度を終えて、控室からスタジオに。
ふと、気配を感じて2階のフロアを見上げる。
〇〇さんがいる。
たぶん撤収前の忘れ物チェック。

夏鈴「……」

私はその場にしゃがみ込んで、その姿をぼんやりと眺める。

〇〇「……?」

私の視線に気づいたのか、〇〇さんがこっちを見る。少し首を傾げてる気がする。
皆の帰り支度待ちだよ。気にせず仕事してて。

唯衣「夏鈴、なにしてんの?」
夏鈴「あれ…」

私は〇〇さんを指さす。

唯衣「ん?〇〇さんか」  
夏鈴「たぶん忘れ物ないか確認中」
唯衣「あ〜、なるほど。お疲れ様です」
夏鈴「なんでピース笑」
唯衣「なんとなく?笑」
麗奈「2人ともどうしたの〜?」
唯衣「〇〇さんにピースしてる」
麗奈「〇〇さん? あ、ホントだ♡ でもなんでピース?笑」
唯衣「なんとなく笑」
麗奈「なにそれ笑」
夏鈴「…2人とも先行っててもらっていい?」
唯衣「別にええけど」
麗奈「なんか忘れ物?」
夏鈴「…そんなとこ」
唯衣「ほな行っとこか」
麗奈「はーい」
夏鈴「…すぐ行くから」

2人を見送って、改めて〇〇さんを見上げる。
〇〇さんも、じっとこっちを見てる。
別に何があるってわけじゃないけれど。
なんとなく。ふと言いたくなって。
でも声に出すのも違う気がして。
口パクでゆっくり、4文字。
〇〇さんは困った顔で首を傾げてる。
そんな〇〇さんの姿と、私自身が口にした言葉に照れくさくなって、笑ってしまう。
あんまり待たせるのも悪いし、そろそろ行こう。

また明日ね。

〜〜〜〜〜

唯衣「夏鈴、よく〇〇さん2階におるん気づいたな」

帰りの車両でそんな話になった。

麗奈「ほんとー!言われなかったら絶対気づかなかったよ」
夏鈴「そう?」
唯衣「なんでわかったん?」
夏鈴「なんでって言われても…。それこそなんとなく?」
唯衣「…へぇ〜笑」
夏鈴「なに…」
唯衣「別にぃ〜?笑」
夏鈴「なんかムカつく」
麗奈「あーあー、怒らせちゃった笑」

…わかるよ。
なんとなく。
何処に居たって、
何してたって、
そんなの、わかるよ。
…なんとなく、としか言えないけど。
そんなの、わかるよ。

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