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付かず離れず。

夏鈴「〇〇〜」
美羽「〇〇先輩〜」

呼ばれて廊下へ視線をやると、後輩と幼なじみが睨み合っている。

夏鈴「…〇〇になんか用?」
美羽「…藤吉さんこそ」
夏鈴「…用がなきゃだめ?」
美羽「…用がないなら私が優先でよくないですか?」
夏鈴「…意味わかんない」
美羽「いつも一緒なんだから今日くらい私に譲ってくれません?」
夏鈴「やだ」
美羽「…大人げないです」
夏鈴「1個しか違わないし…」
美羽「…後輩を可愛がろうって気持ちとか」
夏鈴「普段可愛がってるし…」
美羽「……」
夏鈴「ほら…」
美羽「それはそれ、これはこれで…」
夏鈴「…ズルくない?」
美羽「…独り占め、良くないですよ」
夏鈴「……」

不穏な空気だ。
とりあえず仲裁しよう。

〇〇「えーと、二人ともどうしたの?」
夏鈴「一緒に帰ろ」
美羽「一緒に帰りましょう」

また睨み合う2人。

〇〇「え〜と…」
夏鈴「…だからさ」
美羽「どうせ明日も一緒に登校しますよね?」
夏鈴「…するけど」
美羽「…ですよね?」
夏鈴「…だから?」
美羽「…今日は譲ってくれても」
夏鈴「やだ」

むむむと睨みあう。

〇〇「あのさ、普段は仲いいのになんでこういう時は険悪なの?普通に一緒に帰ったらダメなの?」
夏鈴「……どう思う?」
美羽「……サイテーです」
夏鈴「だよね」
〇〇「あんさ、その調子で仲良くしててくんない?」
夏鈴・美羽「ムリ」
〇〇「仲いいじゃん」

ホント極々一部の条件の時だけ仲悪いのなんなの。

〇〇「とりあえず帰ろうよ。ここにいても皆の邪魔だし」

教室を出ると、2人が後から着いてくる。

〇〇「なんで登校するときと下校する時だけ仲悪いのさ」
夏鈴「…わかんないの?」
〇〇「わかんないよ」
美羽「わかんないからだと思います」
〇〇「えぇ〜…」

そんな事言われてもなぁ…。

夏鈴「ホントにわかんないの?」
〇〇「…残念ながら?」
夏鈴「ふ〜ん…」
美羽「……あの」
〇〇「ん?」

美羽が僕の手を握る。

美羽「……」
〇〇「え〜っと…?」
夏鈴「……」

夏鈴は一瞬間を置いて、僕の腕に抱きつく。

美羽「……むむ」
夏鈴「……ふんっ」

俺越しにまたも睨み合う2人。

〇〇「…居心地悪いよ」

そんな2人に挟まれる身になって欲しい。
俺が関与してない時は2人は仲のいい先輩後輩なんだけど、何故かこういう時はこうやって小競り合いをしてる…。

〇〇「あと、歩きづらい…」
夏鈴「…馬鹿」
美羽「…鈍感」
〇〇「凄いディスられるし…」

なんだって言うんだ。

美羽「…先輩のせいなんで」
〇〇「ん?」

美羽の方へ顔を向けると、頬に美羽が顔を寄せる。
軽く触れる感触。

美羽「…もう、知りませんから」
〇〇「…え、どういう」
夏鈴「……〇〇」
〇〇「ちょっと待っ…」

グイッとネクタイを引っ張られて、強引に夏鈴の方へ向き直される。

夏鈴「ん…」
〇〇「んっ!?」

目の前に夏鈴の顔がある。
というか、唇に触れるものがある。

夏鈴「鈍感、唐変木、女たらし、意気地なし」

それだけ言うと、夏鈴はスタスタと僕を置いて歩き出す。

〇〇「……」

その後を美羽が早足で追いかける。

美羽「…ズルいです」
夏鈴「…ズルくない」
美羽「反則です」
夏鈴「反則じゃない」
美羽「ルール違反です」
夏鈴「…ルールとかないし」
美羽「いいんですね?」
夏鈴「…なにが?」
美羽「…ルール無用なんですよね?」
夏鈴「……」
美羽「…分かりました」

美羽が振り返って、こちらに駆けてくる。

美羽「…失礼します」

俺のネクタイをぐいと引っ張り、唇を合わせる。

〇〇「!?」

美羽は、照れくさそうに視線をそらすと、また夏鈴の下に駆けていく。

美羽「これでイーブンですから!」
夏鈴「…そこまでする!?」
美羽「先にやったの藤吉さんじゃないですか!」
夏鈴「…そ、そうだけど」

いや、2人で盛り上がってないでさ…。

〇〇「え、えっと…、どういう事…?」

2人は不機嫌そうにこっちを睨む。

夏鈴・美羽「…バーカ!!!」

女子っていざとなると大胆だ…。


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