ギュッと。
綺良「〇〇さん!もっと速く歩けないんですか?」
〇〇「いや、別に速く歩く必要ないから」
コンビニ行くけどなんかいるか?と皆に聞いたらきらこが私も行きます!と言い出したので一緒に出てきたが…。
綺良「速く歩けば速く着きますよ!」
〇〇「いや、速く着く必要ないから…」
時間は十分ある。
〇〇「それより前向いて歩かんかい。危ないで」
綺良「いっそ走りますか!?」
〇〇「人の話を聞きなさい」
振り返りざま、駆け出そうとするきらこの肩を掴んで引っ張る。
綺良「おぅっ!?」
バランスを崩してこちらに倒れ込むきらこ。
後ろから抱きかかえるように支える。
すぐ目の前の横道から、電動のキックボードがそこそこの速度で飛び出して走り去っていった。
〇〇「危ないから落ち着きや」
綺良「…びっくりしました」
〇〇「こっちはお前の動きにいつもびっくりやで」
きらこをまっすぐ立たせると、今度は並んで歩くようにする。
〇〇「ほら、行くで」
綺良「あ、はい…」
〜〜〜〜〜
綺良「…う〜ん」
〇〇「さっきから何をうんうん唸っとんねん」
コンビニから控室に戻ってきても、顎に手を当てうんうん唸るきらこ。
ひかる「綺良ちゃん、どうかしたんです?」
〇〇「わっからん。いつものことやけど」
ひかる「確かに笑」
綺良「森田さん!!」
ひかる「わっ、びっくりした! なに?」
きらこは立ち上がって、自分の背をぐっと親指で指さす。
綺良「ちょっと私のこと後ろから抱きしめてください!」
ひかる「…別にいいけど、なんで?」
綺良「いいから速く!」
ひかる「はい…」
後ろから抱きしめるひかる。
背丈的にちょっと、抱きしめてると言うよりしがみついてる感もあるが…。
ひかる「これでいいの?」
綺良「う〜ん…、違う!もういいです!」
ひかる「えぇ…?」
ひかるの扱いが地味に雑なんよな。
ひかる「結局なんだったの?」
綺良「さっきお買い物行ってたじゃないですか?そこで急に〇〇さんに後ろから抱きしめられて…」
ひかる「っ!?」
〇〇「目ぇデカっ!?こぼれ落ちるでそんな見開いたら!」
ひかる「ちょっと、詳しく…」
天「何、おっきい声出して」
騒ぎを聞きつけ、天がやってくる。
綺良「天さん!ちょっと私のこと後ろから抱きしめてください!」
天「え?」
〇〇「おいこら、先に誤解解かんかい」
綺良「速く!」
天「はぁ…?」
とりあえず言われた通り抱きしめる天。
綺良「う〜ん…。う〜ん…」
抱きしめられながら唸るきらこ。
ひかる「……」
その間も俺を凝視し続けるひかる。
綺良「…やっぱり違う!」
天「いや、何が?」
綺良「〇〇さんに抱きしめられた時となんか違うんですよ」
天「…え?」
〇〇「お前マジでやめろ!」
ギリギリと音がしそうな感じでこっちを見る天。
天「…ほんまに抱きしめたん?」
ムッとした顔でこっちを睨む天。
怒り方可愛いかよ。
〇〇「いやさ、ちゃんと理由が…」
スタッフ「はーい、収録再開しまーす!」
あぁ、タイミング…。
〇〇「とりあえずスタジオ行こう!ちゃんと、後で説明するからな?」
渋々と移動する面々。
一人素知らぬ感じで移動するきらこ。
綺良「あ、藤吉さん!」
夏鈴「…ん、なに?」
一人楽屋で過ごさない夏鈴ちゃんが、スタジオ近くの廊下で合流。
え、やる気?
綺良「ちょっと後ろから私のこと抱きしめてください!」
夏鈴「…なんで?」
綺良「いいから速く!お願いします!」
夏鈴「え…、なんかやだ」
綺良「なんでですか!」
普通に断ってる。
助かった。
夏鈴「…理由ぐらい教えてよ」
綺良「さっき〇〇さんに急に抱きしめられて…」
夏鈴「……は?」
夏鈴ちゃんがこっちを見る。
夏鈴「……」
〇〇「……せめてなんか言って!!」
怖いから!無言が一番!怖いから!
ひかる・天・夏鈴「……」
〇〇「俺が悪いんか!?」
茉里乃「結局なんやったん?」
綺良「目の前の道から電動キックボード飛び出して来てさ、〇〇さんが止めてくれて助かったんやけど、急に抱きしめるからめっちゃドキッとしてん。
でも皆に抱きしめてもらってもなんか違うかった。
うーん、やっぱりキックボードのせいかなぁ?」
茉里乃「……そういうことにしといたら?」
綺良「???」