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依々恋々。

麗奈「すいません、お散歩まで付き合ってもらっちゃって」

現場への送迎前、少しばかり早めに麗奈を迎えに来ると愛犬の散歩だけしておきたいとのこと。
もちろん断る理由もないし、車で待ってるのもなんなのでお付き合い。

〇〇「ええよ全然。いっつもご主人様連れてっちゃう人やから、嫌われへん程度にモコのご機嫌も取りたいしなぁ〜」

麗奈の愛犬はロングコートチワワのモコ。
送迎の際もお家に上がり込むことはないので、俺がご主人様を連れてくやつだとはバレてないと思うけれど、やっぱりお留守番するわんこを思うと少しばかり罪悪感を感じるのだ。

モコ「……」

もちろん不平不満を述べることなどありはしないが、誰やこの人。の視線は感じる。
とは言え、

〇〇「キャワァ…」

思わず言いたくなる程に可愛いわんこである。

麗奈「可愛い自覚があるから、なにやってもあざとく感じちゃうんですよね〜笑」
〇〇「ご主人様に似たんやなぁ?笑」
麗奈「私も可愛いってことですかぁ?♡」
〇〇「はいはい、かわいいかわいい」
麗奈「も〜、感情こもってな〜い」

麗奈はモコを抱き上げて、こちらを見る。

麗奈「もっと言っていいですよ♡」
〇〇「何を?」
麗奈「可愛い!ですよ!」

モコを可愛いと言っても、麗奈に言ってるように見えるやん。

〇〇「……他意を感じるんやが?」
麗奈「いいじゃないですか、他意でも本意でも。
〇〇さんの一言で、私もモコも喜ぶんですよ?
一石二鳥♡」
〇〇「う〜ん」 

たくましい女子。

〇〇「というかいつも飽きるほど言うてるやん」
麗奈「可愛いなんて何回言われても嬉しいに決まってるじゃないですか〜」
〇〇「まぁそりゃそうかもしれんけども」

愛犬だしにしてまで、俺から引き出してどうするのかね。散歩を再開しながら、麗奈が口を開く。

麗奈「〇〇さんって結構動物お好きですよね」
〇〇「そうやね、実家では猫飼っとったよ」
麗奈「ご自分では飼わないんですか?」
〇〇「今は可愛いアイドルのお世話で手いっぱい」
麗奈「それは嬉しいですけど…、無償の愛ってのもいいものですよ?」
〇〇「そりゃあいいとは思うけどなぁ。…お仕事やしお給料はもらってるけど、皆に対する愛情ってのも、結構近いもんや思ってるで?」
麗奈「……〇〇さんからの愛情は無償かもしれないですけど、私達からの愛情はわからないですよね?」
〇〇「えっ、怖。何を見返りに求められんの」
麗奈「…さぁ〜、なんでしょうねぇ〜♡」
〇〇「なにそれ…。君のご主人怖いんやけど?」
モコ「……」

ハッハッっと規則的な息遣いだけ返してくるモコ。

麗奈「…ちなみに麗奈と一緒に暮らすと、ワンちゃんもアイドルちゃんもまとめて可愛がれますけど♡」
〇〇「はいはい、冗談は卒業してからにして」
麗奈「お迎えの手間も省けますよ♡」
〇〇「それ以上の手間が増えそうや…」
麗奈「ひど〜い♡」

全然ひどいと思ってるようには聞こえんで。

麗奈「あ、コンビニだけ寄っていいですか?」
〇〇「どーぞ。モコと外で待っとるわ。時間まだあるから焦らんでええで」
麗奈「はーい」

モコのリードを預かり、しゃがみ込んで軽く撫ででやる。嫌がるでもなく、さりとて喜んでる感じもなく、モコはご主人が入っていったコンビニを見つめてる。

〇〇「ごめんな〜、いっつもご主人連れてって…」

大きなまんまるな瞳は、きっとご主人が出ていく時もこんな風に視線を送っているんだろう。

〇〇「…人気もんなんやで〜。
可愛くてお茶目なスーパーアイドルやからなぁ。
皆から応援されて、皆元気づけて。
凄いご主人なんやで〜って、自慢してもええで〜」

ふっとモコの視線が動く。
それに釣られるように、俺も視線の先に振り返る。

麗奈「えい♡」

むにっと俺の頬に、麗奈の人差し指が触れる。

〇〇「……」
麗奈「そーゆーのはぁ、モコじゃなくて麗奈に直接言ってくださいよ♡」
〇〇「……関西の人間は直接言いづらいことはペットを経由して話すもんやねん」
麗奈「えぇ〜、嘘だぁ笑」
〇〇「おとんへの文句を、おとんに聞こえるようにペットに話すのが関西のおかんスタイルやねん」
麗奈「ほんとですかぁ?」
〇〇「……保乃あたりに聞いてみ」

俺の頬突いていた麗奈の指が、今度は軽くつねるような形になる。

麗奈「こーゆー時は、他の女の子の話しちゃだめなんです♡」
〇〇「…さいですか」

麗奈は再びモコを抱き上げる。

麗奈「ほら!もっかい言ってくださいよ♡」
〇〇「はいはい、そろそろ行くで〜」
麗奈「もぅ〜、素直じゃないんだから〜♡」
〇〇「君も苦労するなぁ?」

モコは変わらずくりんくりんなお目々で、何を言ってるんやコイツ?という顔で俺を見ている。

麗奈「毎日幸せだよね〜?♡」
〇〇「それはようございました」
麗奈「一緒に暮らしたら、〇〇さんも毎日幸せですよ♡」
〇〇「はいはい…」









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