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どない。

村山「おはよ」
〇〇「ん、おは…、お前髪色どうした!?」

高2の冬。
ある朝、村山は黒髪になって登校してきた。

村山「どうしたって…、ちょっと落ち着いた色にしただけじゃん…」
〇〇「いやいやいやいや、ちょっとレベルちゃうやろ!?ほぼ黒やんけ!?」
村山「そんな驚くこと?」
〇〇「いや、そりゃそうやろ!お前髪色に文句つけさせへんために色々頑張ったんやろが!」

ヤンチャといえば可愛げのある言い方だが、村山はこの1年、ほぼ派手髪を押し通した。
当然教師陣からの覚えは悪く、事あるごとに説教やお小言を貰っては、不貞腐れたようにそっぽを向いていたのも記憶に新しい。

そんな村山を使って、俺は生徒会副会長としての評価を上げることを思いついたのが春先。
不良更生計画などとぶち上げて、俺は村山の成績と素行を正させた。
何ていうのは建前で。
実際は多少の派手髪だろうが、ある程度の成績と素行の良さがあれば、教師に目をつむらせることが出来ないかという実験だった。
実際、村山の評価はじわじわと向上。髪色うんぬんよりもどんどん成績を伸ばしていけという指導のほうが目立つようになっていた。
このまま行けば、成績いかんによっては髪色に対する指導の目もいくらか緩和される。そうすりゃ、生まれながらに明るい髪を持ったやつも、わざわざ黒染めさせられたりはしないだろうと。

そんな奇妙な関係を村山と構築して半年以上。
時が立つのは早いもので、今現在、今年も残すところ後2カ月を切っている。

〇〇「成績も素行も文句つけられんレベルにはなったやろ?なんで今更…」
村山「…別に派手髪できることが目的じゃないし。私は私がしたい事を、したい時にしたいだけ」
〇〇「…で、今のブームは黒髪なんかい」
村山「……ま、そんなとこ」

村山はこっちに向かって、ピースサイン。

村山「どう?結構似合ってない?」
〇〇「…そやな。似合っとるよ。…派手髪が似合ってなかったわけじゃないけどな」
村山「よしよし」
〇〇「何やその反応笑」

ほんまに変わったやつ。

〇〇「…ところで村山よ」
村山「…なに?」
〇〇「……お前生徒会選挙、立候補してみんか?」
村山「…はぁ?私が?ムリムリ」
〇〇「……」
村山「…いや、黙んないでよ」
〇〇「元々、俺はお前に立候補してもらうつもりやったから」
村山「…なんで?」
〇〇「そりゃお前、今年度頭まで不良扱いされてたやつが、しっかり成績上げて、品行方正になって、生徒会役員なるなんて、めちゃくちゃ話題になるやろ。そこまで持ってった俺の評価もうなぎ上りよ。派手髪の役員なんてのも、憧れるやつが現れて盛り上がるやろ」
村山「…あっそう」
〇〇「……と思っててんけどなぁ」
村山「そりゃ黒髪にしちゃって悪かったね」
〇〇「……今は単純にお前がおったらもっとおもろくなりそうやなぁって思ってるんよなぁ」
村山「……」
〇〇「拘りを貫くために、自分自身を変える。言葉で言うと簡単やけど、それを実行できるやつは多くない。けど、お前はやってみせたやろ。そういう奴が生徒会におれば、生徒奴らもなんか変えてくれるんやないかなって期待が持てるやん」
村山「…本気で言ってる?」
〇〇「本気も本気。大マジやで」

時間は多くない。
頼れるやつは一人でも多く味方に欲しい。

〇〇「俺は会長に立候補する。小西は任期継続のために今年も副会長に立候補や。俺は正直会長でも副会長でもよかったけど、小坂さんに直々に頼まれてもうたからな。断れん」
村山「…好きだね、小坂さん」
〇〇「好きですけど何かぁ!?どうせ釣り合わんとかいいたいんやろ!」
村山「…まぁ、大体正解?笑」
〇〇「ふん、自分が一番わかっとるわ!」
村山「…ならいいけど笑」
〇〇「…お前には副会長に立候補して欲しい。んで、小西と一緒に俺を手伝ってくれ。もし受けてくれるんやったら、書記と会計の任命権はお前にやる」
村山「…いいの、そんな大事なこと」
〇〇「なるだけ身内で固めたい。お前が仕事しやすくなるようにしてくれ。庶務は俺と小西で考える」
村山「……」
〇〇「…どうや?」
村山「……いいよ、乗ってあげる」
〇〇「よし、決まり。放課後に生徒会室来い!選挙対策すんぞ!」
村山「はいはい……」
〇〇「遅れんなや!?」
村山「わかったわかった…」
〇〇「おもろくなってきたで!」
村山「暑苦しいなぁ……笑」


〇〇「ん…」

懐かしい夢を見てた気がする。

村山「お、起きた」
〇〇「ん…?」

直ぐ側で声が聞こえて顔を上げる。
机に突っ伏して寝てたらしい。

〇〇「ゔわっ!?」
中嶋「その驚き方は失礼じゃない?」
的野「化け物でも見たような悲鳴なんだけど」
〇〇「お前ら自分の顔面のパワーを自覚せぇよ」
中嶋「…喋らなけりゃもっとモテそうなのにね」
〇〇「はぁ?喋っててもカッコええやろが!」
的野「…喋るとこれだもんなぁ」
〇〇「るっさいわ!」

自分らがモテるからって偉そうに!
会計の中嶋も、書記の的野も、言ってしまえば副会長の村山も小西もモテる。
なぜ一番偉いはずの俺がモテない?
不条理ではないか?

中嶋「会長様モードの時か、居眠りしてる時が一番カッコいいから、常にどっちかにしてたら?笑」
〇〇「俺にプライベートはないんか?」
的野「うーん、いる?笑」
〇〇「いるわ!!」

あれ、そう言えば。

〇〇「小西は?」
村山「…そこで怒ってる笑」
小西「……」


〇〇「…なぜ?」
小西「別に?チヤホヤされてる会長様にイライラなんてしてませんけど?」
〇〇「……どうみたらそうなんねん」

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