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ここにおるから。

小西「さっぶ!!」
〇〇「秋さんもうどっか行ったんかってレベル」

11月に入ってからしばらく、ついこの間まで20以上あった最高気温が15を下回りだした。
勿論最低は一桁落ちたりする。

小西「寒暖差激しすぎておかしなるで」
〇〇「せやったらダウンの前閉めぇや」
小西「オシャレは我慢やろ!」
〇〇「志が高すぎる…」

オシャレ番長は覚悟が違う。

〇〇「風邪ひくなよ…」
小西「ひいたら〇〇にうつして治したるわ!」
〇〇「やめろ!普通に治せ!」

こんな夜更けに俺らは何をやってるんやろ。

小西「お、東京タワー」

歩道橋に登ると、ビルの間から東京タワーが顔を出す。頭は見えていたけど、ちょうどビルとビルの間が低くなって見えやすくなっている。

小西「なーんか東京タワー見ると、改めて東京おんねんなーってなるなぁ」
〇〇「いや、もう5年くらい東京おるやろ。今更東京タワー見た所でやろ」
小西「情緒って言葉知っとる?」
〇〇「なかなか笑える冗談やな?」
小西「ふん!」
〇〇「痛っ!?」

肩にグーパンをかましてくる小西。
暴力的なヤツめ…。


俺達は揃って東京に出てきたわけじゃない。
お互い高校進学時に家庭の都合で東京に来たってだけで、地元は同じだがそっちで会ったことは一度もない。
そんな俺達がたまたまこっちで出会って、付き合うにまで至っている。
珍妙な縁だ。

小西「こっち来てから1回でも地元帰った?」
〇〇「…いや、ないなぁ。そもそも親もこっちやし。実家に帰るって感覚もないしな」
小西「たしかになぁ…」
〇〇「小西は?」
小西「私も。中学までの友達とか、親戚とかはおるけど、年末年始は親の住んでる家に泊まるんがせいぜいやなぁ」

結局は東京で過ごすのが定番になってる。
まぁどうせ、帰ったところでやることもないのだ。

〇〇「というか東京タワーはええから、はよ帰るで。寒い寒い言うとんねんから」
小西「…ほな温めたろうとかないん?」

すっと手を出す小西。
その手を握る俺。

〇〇「けど俺らお互い末端冷え性やから、あんま温まらんで」
小西「んーー!!」
〇〇「痛い痛い痛い痛い!握り潰す気か!」
小西「ホンマに潰したろか?」
〇〇「怖い怖い…」
小西「情緒どないなっとんねん」
〇〇「…照れ隠しやろ」
小西「…知っとるわ」
〇〇「……知っとんのかい」
小西「もう5年くらいの付き合いやで。そら分かるわ…」
〇〇「付き合ってからはまだ2年くらいやけど」
小西「だったらなに」
〇〇「…まだまだ深い仲になれそやな」
小西「……言うてて恥ずかしないん?」
〇〇「恥ずかしいに決まっとるやろがい!!」
小西「近所迷惑やで」
〇〇「お前の情緒も大概やないか!」
小西「はいはい、はよ帰るで」
〇〇「納得がいかん…」





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