医療従事者でもわかるAI
0,はじめに
AIについて医療従事者でもわかるように書いていきます。AIをどのように使うかの説明はしません。AIがどういうものかを理解するための文章を書きます。専門用語は使わないようにします。
1、AIとは何か?
AIには定義がありません。定義はありませんが、AIと呼ばれるものができることは次のように3段階で進化してきました。1段階目は計算ができること。例えば、AIは10桁と10桁の掛け算でもできる、とかその程度のことです。2段階目は人間ぽくふるまうこと。例えば、テレビの視聴履歴を調べてお勧めを提示するとか。人間ぽくふるまっていますが、人間ぽくふるまうように人間が具体的な仕組みを考えています。3段階目は人間が想像できないような結果を生み出すもの。現在は3段階目です。3段階目は人間が仕組みを考えるのですが、結果を人間が作った仕組みを使って誘導していないところがポイントです。ある程度までは人間が用意しますが、結果は予想できない場合があります。
2,AIの簡単な動作
第3段階のAIの簡単な動作について、例えば質問に答えるAIを考えてみます。「人間が生きるために必要な栄養は何ですか?」と質問したとします。まずは単語の解析です。「人間」、「生きる」、「必要」、「栄養」が抽出されます。「何ですか?」とあるので、何かを答えるパターンだとわかります。次に、「人間」、「生きる」、「必要」、「栄養」に近い単語を抽出します。単語の抽出は巨大なデータ群から探します。単純にこの単語を多く含む文章を探してきてそこに含まれる単語を集めます。より多く出現した単語に高い点数をつけます。例えば、「水」とか「エネルギー」、「食事」などの単語は高得点になるでしょう。また、「希望」、「カルシウム」といった人間の感覚では少し離れた単語も抽出されます。いくつかの単語を組み合わせてさらに単語を評価し点数を調節します。ここで得点が高めであるものから1つ選びます。例えば、「水」が選ばれたとします。これで「水。」を表示しこれで十分です。
3,AIの発展的な動作
おそらくAIを使ったことがある人であれば「水。」のような単純な返答は返ってこないと知っているでしょう。もう少し長文になるはずです。まず、「水」が答えであれば「水」に関するうんちくを加えてみます。「答えは水です。人間の体の6割~7割は水でできていると言われています。」こうするといっきに人間ぽい返答になります。これは「人間」、「水」、「生きる」などの単語を含む文章を適当に拾ってきてつなぎ合わせます。文章の修正も点数方式で改善できます。つまり、「人間の体の6割~7割は水でできていますと言われています。」と「人間の体の6割~7割は水でできていると言われています。」では前者より後者のほうが文章として適切です。これは「できていますと言われて」のようにあまり見かけない文章は減点し、「できていると言われて」のようによくある文章にであれば点数を上げるといった方法で改善していきます。AIはよくある文章のデータをたくさん持っていて照らし合わせて採点することができます。
うんちくを加えてみるとか、余計な文章を加えてAIで正しい文章になるように補正を行うとか、性能の高いAIを作るために人間の技術者が工夫をして人間ぽくなるように手を加えています。AIの返答の品質に驚くことはあるかもしれませんが、それはAIの本来の動作ではなく人間の工夫である場合もあります。
4,文章AIの動作まとめ
現在のAIはたくさんのデータからそれっぽい情報を拾ってきて点数をつけ点数が高いものを適当につなぎ合わせ、また評価し点数をつけ点数の高いものを表示しています。とにかく大量のデータが必要で、組み合わせによる試行をコンピューターで大量に行うほど高性能になります。このときより人間ぽくふるまうのであればいちばん得点の高いものを表示しないかもしれません。ある程度の完璧さを除いたほうがそれらしい返事ができるAIになります。またうんちくを必ず入れるといったような決まりを人間が指示して加えるとより人間らしくすることができます。人間ぽくせずにより実用的にするなら一番高い点数を表示すれば良いでしょう。
5,AIによる画像認識
犬と猫の写真をたくさん用意し、写真から得られる情報を数値化します。例えば、色だったり縦線が多いのか横線が多いのか、黒色はかたまってあるのか散らばっているのかなど数値化できる情報はすべて与えます。この情報から点数計算し、答えが犬であればどの数値が犬であると判断することに大きく寄与したかを求めて、その数値を犬と判定する重要度として少し高くします。犬、猫の画像をたくさん与え、答え合わせして数値の重要度を調整して安定させます。数値の重要度が安定したら犬か猫かわからない写真を見せて犬と猫のどちらの点数が高いかを評価します。このような方法で犬と猫の写真を犬か猫か判断できるようになります。このとき人間が関係ないと思っていた数値情報が意外に犬猫判定に役立つ場合、その数値を使って人間の創造を超える判断ができることになります。
6,AIの問題点
AIの欠点はいろいろ言われています。例えば、一般的に誤った事実を学習してしまう場合があります。とあるワクチンを打ってはいけない、とか情報があれば学習してしまうので結果として問題のある返答をしてしまいます。また、チャット形式のAIはこちら側の対応も学習する場合は、間違った返答を連続して伝えることで意図的に間違った認識を持たせることができます。また、AIの制作者が特定の思想をAIに持たせることもできます。人間の悪意が紛れ込んだとき、AIにはそれを間違いと判断する力がないのです。そもそも何が正しいか自体が人間によっても認識が異なるのが実情です。AIが正しくない返答をしたときに、人間が適切に対応できれば良いですが、できなかった場合に大きな事故が起こるかもしれません。
AIの問題点と見出しをつけましたが、実際はAIに関わる人間の問題であることが多いように思います。
7、医療でどのようにAIを活用できるか
例えばカルテから「腎障害」についての記事を検索したいとします。しかし、普通は「Cr 3.0mg/dl」という記載は「腎障害」という単語では見つかりません。AIなら「Cr」が点数を上げ、さらに「Cr」の近くに「3.0mg/dl」があればさらに点数が上がるので高得点な検索結果として表示できるかもしれません。もちろん、「Cr」の近くの数値が「0.5mg/dl」では点数が上がらないので点数は上がりません。また「陣生涯」といった誤字でも見つけることができるかもしれません。誤字があったため検索で見つからないという事例は経験があるのではないでしょうか?通常はきっちり文字が合っていないと検索されません。あいまい検索機能をつけるとどのような文字が近いのかを人間が登録する必要があります。これには手間と費用がかかります。一方、AIはたくさんのデータからすでに近い文字がどんなものかわかっています。よって、文字を評価して近い文字、得点が高い文字があれば検索結果として採用することができます。
以上の例でわかるようにAIが使えるとシステムの自由度がぐっと上がります。また、今までは人間の手間や費用を使って作っていた仕組みが、既存のAIを組み込むだけで良いということになり、むしろシステムはシンプルになります。
画像診断はAIに任せることができるかもしれません。肺炎のレントゲン画像や真菌症の皮膚画像などを学習させると写真を与えることでAIによる診断が可能になるでしょう。AIは音の学習も可能なので心音や肺雑音からの診断もできるようになるでしょう。画像や音声のデータはより正確なデータをAIに与えやすいので実用的なAIが作りやすいように思います。
AIを使うと人間よりも正確な判断ができる分野も存在します。例えば人間では平均点が60点のテストでAIは70点を取る場合もあるようです。しかし、AIが確実に100点を取れる保証はありません。まずすべてを人間が確認し、AIにも確認させて、AIが何かを見つければ再度人間が確認し見落としを無くすといった運用が望まれるように思います。
8,AI技術の現状
AIに定義が無いように、AI技術にも定義がなく、いろいろな手法が研究されています。現状でもAI技術はピンキリであり、AIといってもたいしたことのない技術もあります。いまだにAIの第2段階である人間ぽくふるまうものをAIと呼んでいる場合もあります。少なくとも人間の能力を少し超えた結果を出さないと現状ではAIと呼べないように思います。優秀なAIの技術で有名なものは将棋AIと生成AIでしょう。将棋AIは将棋のプロでも勝てない強さに成長しました。また、生成AIで生成された画像や音声も日常的に見かけるようになりました。AIを見たときに本当に凄いAIなのか凄いAIのように見せる人間の技術なのかを判断するには、具体的にどのような仕組みなのかを知る必要があると思われます。
9,AIに興味を持ったら
AIを詳しく理解しようとするとコンピューターとは何か?というところから、グラフ理論、最小二乗法、勾配降下法など確率や微分積分などいろいろな要素が出てくるのですが、実際のところ高校生程度の数学の知識でも勉強すれば理解できないことはなさそうな内容です。大学の数学の知識は必須ではないと思います。将棋AIを勉強すると「枝狩り探索」、「評価関数」、「ハッシュテーブル」などを理解することで、AIが動いているコンピューターの実際の動きの理解が深まると思います。また、「ディープラーニング」について勉強すると生成AIが人間の創造を超えた成果をなぜ出せるかが理解できると思います。
10、最後に
個人的にはAIは将棋AIや生成AIのブームに乗って有名になりましたが、まだまだ人間の理解できる範疇の技術のように思います。AIが広まると人間の仕事を奪うので大変のような声を聞きますが、それ以前にAIの技術を正確に理解しなかったり、間違って伝えたりすることによる人間の問題があるように思います。AIを正しく理解して正しく使う必要があります。AIの間違った動作によって起こった被害に対して誰が責任を負うかなどの法整備がまだ不十分ですので、まだ扱いには注意が必要です。
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