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買うつもりはなかったのだけれど(5)
昭和初期に建てられたという話だが、玄関のつくりはかなり古風である。まず玄関に雨戸があり、雨戸を入れる戸袋もついている。これは玄関の建具がガラス戸ではなくて紙の障子だったということである。紙の障子だから雨除けにも、戸締りのためにも雨戸が必須だったのだ。
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では留守にするときはどうやって鍵をかけたかというと雨戸にその名残がある。雨戸を固定する「さる」とよばれる仕組みを外から動かせるよう、雨戸に小さな穴があけられている。
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ここから金物を差し込んで手探りで「さる」を持ち上げて雨戸を開けたらしい。その金物の長さや角度なんかがカギの代わりになって他人には簡単に開けられないようになっていた。ずいぶん原始的なセキュリティだが、そもそも昔は一軒の家をまったく無人にすることはあまりなかったのだろう。仕組みは残っているが金物は失われているので、試してみることはできない。