古民家観察所

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買うつもりはなかったのだけれど (11)

古家付き土地として出ていた安い物件を見に行った。市街化区域で道路に面していないので再建築不可、いまあるボロ家をこわしたらもう建物は建てられない。不動産屋に内見を申し込んだら「開いてるからご自由にどうぞ」という返事である。つまり案内はしたくないから一人で勝手に見に行ってくれ、ということだ。まあ、そのほうがこちらとしても気楽で良い。こんな物件に興味を示す奴はどうせ内見マニアだろう、と思われているのかもしれない。 現地に行ってみると、たしかに門扉に鍵はかかっていない。ヒモで結んで

    • 買うつもりはなかったのだけれど (10)

      この物件の電気周りはかなりすごい。いい意味ではなく悪い意味で…。 昭和初期に建てられたと聞いているけど、どうも電気配線も基本的にはそのころのままのようである。屋根裏配線なのだが、台所に天井の張っていないところがあって、そこでは配線が見えている。 布巻きコードが碍子に固定されている。 昭和初期であればヒューズが使われていたはずだが、ここはブレーカーに取り換えられている。ブレーカーは一個だけ。回路別にはなっていないし、漏電ブレーカーもない。 電柱からの引き込みも碍子配線であ

      • 買うつもりはなかったのだけれど (9)~古民家の耐震診断~

        輪島の大地震をみて、うちの古民家は大丈夫かという不安が起きていると思う。また、家族友人その他、他人からの「お前の好きな古民家とやらは大丈夫なのか」「古い家はつぶれるんじゃないか」といった圧力を感じているかもしれない。 そこであせってその辺の工務店に相談すると、現在の工法の建物に適用する基準でもって耐震診断をしてくるだろう。古民家は壁が少なく、足元も固めていないのでまず不合格だ。現行の基準に合うよう壁だらけにして地面もコンクリで固めて…なんて案を出してくるか、もう古いから潰して

        • 買うつもりはなかったのだけれど (8)

          田舎の家を買うとなると田舎の閉鎖社会に対する警戒は欠かせない。この家の場合はセカンドハウスなのでここにずっと住むわけではないが、もし面白くない目にあった場合のことは考えておかねばなるまい。 まず一番大事なのは資本を持ち込まないことだと考えた。あまりお金をかけてしまうといざというとき撤退しづらくなる。また他者の眼からもお金をかけているのは一目瞭然だろう。安く買い、DIYを駆使して…というほどの技術はないが、自分で直していくこと自体を目的とすれば、かかるお金は抑えることができる

          買うつもりはなかったのだけれど (7)

          自分が空き家バンクで古民家を買っておいてこんなことをいうのもなんだが、空き家だからといってあわてて売りに出さなくてもいいのでは、と思うのである。いったん地縁血縁を離れ人手にわたってしまった不動産はもはや分譲住宅と同じ、お金だけを対価にやりとりされる商品になってしまう。 最初に売る相手は、変な人や近所に迷惑のかかるような人は避けることもできるが、その先はコントロールできない。 例えば若いカップルが買ってくれて、本当にその場所を気に入って近所とも仲良く暮らしていたとしても、子供

          買うつもりはなかったのだけれど (7)

          買うつもりはなかったのだけれど (6)

          玄関の土間と座敷との間には障子がたてられている。最初は気づかなかったのだが、その障子の建っている敷居がへんなのだ。幅は一間半、障子は四枚なので敷居の溝は二本あれば足りるはずなのになぜか三本刻んである。 鴨居にもおなじく三本の溝がある。障子の建っていない溝は長い間使われた形跡がない。しかしこの家を建てたときは必要だったから三本の溝を刻んだわけで、いったいどう使っていたのだろう。売主に詳しく聞いておくべきだった。 ほかにも謎の建具というか部品がある。玄関は二間幅なのだけど、正

          買うつもりはなかったのだけれど (6)

          買うつもりはなかったのだけれど(5)

          昭和初期に建てられたという話だが、玄関のつくりはかなり古風である。まず玄関に雨戸があり、雨戸を入れる戸袋もついている。これは玄関の建具がガラス戸ではなくて紙の障子だったということである。紙の障子だから雨除けにも、戸締りのためにも雨戸が必須だったのだ。 では留守にするときはどうやって鍵をかけたかというと雨戸にその名残がある。雨戸を固定する「さる」とよばれる仕組みを外から動かせるよう、雨戸に小さな穴があけられている。 ここから金物を差し込んで手探りで「さる」を持ち上げて雨戸を

          買うつもりはなかったのだけれど(5)

          買うつもりはなかったのだけれど(4)

          それで値切るのだけれど、こちらの希望はかなり非常識な値段である。売主の気持ちを害さないように気を付けなければいけない。 過去に話が決まりかけて流れたことが何度かあって売主は弱気になっているということだったが、だからといっていかにも買い叩くという態度ではいけない。できるだけ下手に、欲しいのだけれど貯えが少なくて…改装の費用もいくらかかるかわかりませんので…といった感じでお願いしたところ、ちょっと効果を発揮しすぎたのか、押し戻されることなくあっさりとこちらの思惑が通ってしまったの

          買うつもりはなかったのだけれど(4)

          買うつもりはなかったのだけれど(3)

          こんな感じで何軒か見たが、まあ問題のあるものばかり。 南向きのひな壇なのに陰気で、一刻も早く外に出たいと感じる家、家のカタチはしているけど実は白蟻にやられてグズグズになっている家、縁側のすぐ前が道路でいつもクルマが走り落ち付かない家など、写真ではなんとかいけそうかなと思っても現地に行くとガッカリするものばかりだ。安物買いしようというのはやはり無理だったか…。 そのなかで一軒、これなら悪くないかなというのがあった。いわゆる古民家だが素朴なもので見る人を威圧するような感じではない

          買うつもりはなかったのだけれど(3)

          買うつもりはなかったのだけれど(2)

          空き家バンクにも定住前提で地元住民代表みたいな人と面接してからでないと物件を見せないなんていうのもあるが、そういうのは今回の目的には向いてないからパスして、別に定住しなくても別宅として使ってもいいですよ、というあまりうるさくない自治体の物件を探した。 はじめから二桁万円で出ているようなものは、まず不便な場所にある家、傷んだ家、そのままでは使えない家といったところだが、たどり着くのが面倒なところは最初は面白くて行くだろうがじきにイヤになるのは目に見えている。不便な場所にある物件

          買うつもりはなかったのだけれど(2)

          買うつもりはなかったのだけれど(1)

          家を買う予定もないのに不動産サイトを検索して「こんな安い物件が」とか「こんな変な家が」とか遊ぶのは楽しいものである。それもスーモとかよりも、自治体のやってる空き家バンクのほうが市場に乗らない、ふつうの不動産屋が手を出さないような、より個性的というか癖の強い物件が多くて面白い。 ちょっと前まではまだ物件の値付けも弱気で、二桁万円の物件もぽつぽつ見かけた。自分でも買えるような値段の物件が並んでいるのを眺めるのは、「どれにしようかな…」と選り取り見取りにえらんでいるようで楽しいもの

          買うつもりはなかったのだけれど(1)