農地法三条の2と営農型太陽光(ソーラーシェアリング)の通知の比較

農地法3条は農地に権利設定を行う際の許可が定められており、3条の2には、その許可の取り消し基準が定められている。これは営農型太陽光の通知の妥当性を検証するのに適した条項である。というのは農地法3条は4条や5条の転用許可とは異なり、農地を維持したまま区分地上権などの権利の設定をする際の基準を定めているため、農地性を維持したまま設備を設置する営農型太陽光の通知と前提にする状況が似ているためである。実際に、営農型太陽光の実際の許認可とは、農地法5条または4条の一時転用と、3条の権利設定(区分地上権)の複合的なものになっている。


さて、農地法三条の二には、権利移動の許可の取り消し等として、権利の取り消しする条件として次のものを定めている。

一 その者がその農地又は採草放牧地において行う耕作又は養畜の事業により、周辺の地域における農地又は採草放牧地の農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障が生じている場合


この規定については、「農地法関係事務に係る処理基準について(平成12年6月1日)」と題する文章に、「法第3条第2項第1号の判断基準」として次のように補足されている。

農地等の権利を取得しようとする者又はその世帯員等が許可の申請の際現に使用及び収益を目的とする権利を有している農地等のうちに、生産性が著しく低いもの、地勢等の地理的条件が悪いものその他のその地域における標準的な農業経営を行う者が耕作又は養畜の事業に供することが困難なものが含まれている場合には、当該農地等について、今後の耕作に向けて草刈り、耕起等当該農地等を常に耕作し得る状態に保つ行為が行われていれば、当該農地等については、法第32条第1項各号に掲げる農地には該当せず、当該農地等の全てを効率的に利用して耕作又は養畜の事業を行っていると認められるものとする。


(2)の判断に当たっては、農地等の効率的な利用が確実に図られるかを厳正に審査する必要があるが、いたずらに厳しく運用し、排他的な取扱いをしないよう留意する。


ここまで見た上で、上記規定を営農型太陽光の通知内容と比較してみる。
そうすると、すぐにわかるのが、上記で、「農業上の効率的かつ総合的な利用の確保に支障」は草刈りを行っていればOKと記載されているのに対して、営農型太陽光では収量を8割以上といった農作業義務、収穫高義務が設けられていることである。営農型太陽光の通知が農地法に解釈を与える地位にあることを考えると無視できない矛盾である。

また、このことは「いたずらに厳しく運用し、排他的な取扱いをしないよう留意する。」という点にも抵触する。というのは、従来休耕地や耕作放棄地であった農地に対して、反収8割以上の義務を設けて、達成できない場合には、撤去命令が含意される通知は、「いたずらに厳しい」もの以外のなにものでもないからである。


※ちなみに、令和3年の営農型太陽光の農水省通知では荒廃農地に対する規制の緩和的内容が発出されているが、この「荒廃農地」の認定が、実際の休耕地や耕作放棄地の実態と全く合っていないという問題がある。つまり形式上、荒廃農地を営農型太陽光のに活用した場合は反収規制が撤廃されるルールが存在するが、実際の耕作放棄地に適用するには高いハードルがあるのである。




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