営農型太陽光の特異性を地元の農業委員会はどう説明しているか
営農型太陽光(ソーラーシェアリング)は、農水省通知を根拠とする制度である。この制度では、営農型太陽光(ソーラーシェアリング)を実施した場合には、下部農地で耕作義務が発生することや、収量義務が発生することになっている。一見したところ、経済的自由権に反する内容であるが、これを地域の農業委員会は、通常どのように説明するか。
私が過去に確認をしたところ、地域の農業委員会は次のようにしてこの制度を正当化する説明をすることが多い。
「本来は農地以外に利用できない土地について、太陽光パネルを設置することを特別に許可しているのです。そのため、このような制限を設けています」
このような説明は一見して説得力のあるものに感じてしまいそうである。「なるほど、そうなのか。本来は農地以外に活用できないのか、それを特別に国が許可してくれているのか、特別に許可してくれるからにはそれ相応の制限が加えらるのは当然だな。」このように受け取ってしまい納得する人は多いと思う。
ところがこのような説明は重要な前提が抜け落ちているのである。それはなにかというと、当該農地が私有財産である、という最も重要な事実である。つまり、 当該農地は、国有財産でもなんでもなく、個人の所有物だということである。個人の所有物はその財産権を行使することを憲法で認められている。
このような財産権を農地法が制限するのは、公共の福祉視点からである。つまり農地法で制限をかけていること自体が例外と考えるべきものである。
「本来は、農業以外に認められていない農地について、特別に太陽光パネルを設置することを許可している」というのは、説明として根本的におかしい。正しくこうあるべきだ。
「本来私有財産であるものを、食料の安定供給という公共の福祉視点から、例外的に制限しているのです。」このような説明を前提に置くべきである。
そうすると結論として、何が変わるのか、というと、太陽光パネルを設置する代わりに、制限を設けるということも、公共の福祉視点が問われるということである。そこで問題になるのが、経済活動を強制すること、収穫量を指定することの是非である。
この是非を考える場合、従来の農地法ではどうであったのか、ということが重要である。従来の農地法では、耕作行為を指定していたか、休耕地や耕作放棄地に罰則を設けていたか、生産量を指定していたか、生産性が足りない場合に罰則を設けていたか。いうまでもなく、このような規制は一切なかったわけである。