かなしみの乗り越え方
本当にかなしい時は涙は出ない
現実に起きたことのように思えなくて
感情や感覚がなくなる
かなしいと思うこともない
味覚もなくなるし、笑うことなんてできない
食事も取れなくなり痩せていく
ただ呼吸をし生きているだけ
なぜ生きているのかがわからなくなり
もう死んでもいいんじゃないかと
頭の中はどう生きるかではなく
どう死のうかでいっぱいになった
どうやって乗り越えたのか
乗り越えたわけではない
死ぬのは遅らせてもいいんじゃないかと
思わせてくれた出来事に遭遇し
死ぬことは考えなくなった
とどまらせてくれた出来事は
とてもお世話になった方の突然の死だった
自ら死を選ばなくても死にたくなくても
いずれ死ぬ
それを目の当たりにし
もう一回生きてみよう
それでだめだったらそのときやめようと
生きることにした
素敵な人生だったと思えるように
かなしみはだんだんと思い出さなくなり
少しずつ忘れていった
かなしみでいっぱいでどうすればよいかわからなくなっていたときに図書館に足を運んだ。
そこである絵本に出会った。
『でんでんむしのかなしみ』
新見南吉
見覚えのある名前だ。
小学生の時に教科書で出会った、黒井健さんの
美しい挿絵のお話が忘れられない。
〝ごんぎつね〟や〝手ぶくろを買いに〟と同じ
作者だ。
美智子元皇后さまのご推薦と紹介されている。
内容はその時の自分に必要な本だった。
私はこのでんでんむしのように
すぐに嘆くのをやめられたわけではなかった。
でも〝わたしだけではない〟ということに気づくこができた。
この本をご推薦された美智子さまは
どれだけの〝かなしみ〟をもっているのだろうか。
他のみんなはこの〝かなしみ〟をどうしている
のかが気になった。
そしてどうすれば 嘆かないようになるのか
手がかりを探した。
見つけたのは元気がなくなったときから、元気な状態に戻るまでのプロセスを書いていた本だ。
今の自分の状態はこのグラフのこの辺。
落ち込んだり元気になったりを何回も繰り返し
ながら少しずつ上昇していくグラフの図を見て、自分の状況がこれからどうなるのか
客観的に見ることができた。
わたしが私のお医者さんになった。
きっとこのグラフみたいに
少しずつ良くなっていくから大丈夫
と自分に話しかけた。
そして日野原重明さんの本を見つけた。
優しい笑顔の表紙。
書棚には複数、著者の本があった。
時間はたくさんあったので全て読んだ。
『新 生きかた上手』
タイトル通りどう生きれば良いか、日野原先生の教えや知恵がたくさん書かれている。
〝生きかた〟がわからなくなっていた私には
ぴったりだった。
この他にもたくさんの本や人達に助けられた。
元気になったと実感するまで7年くらい。
人によって違うから、これが長いのか短いのか
わからない。
〝かなしみ〟を経験したことで良かったこと。
それは同じかなしみを経験した人の気持ちがわかるようになったこと。
かなしみの最中はなぜ?こんな思いをしないと
いけないのだろうかと、怒りや絶望的な気持ちでいっぱいになった。
何をしても気分が晴れることはない。
ただ、同じ経験をした人に出会ったときは
かなしい気持ちが和らいだ。
かなしい経験をしている人程、優しい人が多い。
仲良くなる人も優しい人達が増えていった。
その優しい人達は〝かなしみ〟がわたしにくれたとても大きな贈り物だった。