35歳のNZ留学【お湯が出ない】
ある朝、いつも起きがけにシャワーを浴びるハビエラの「ヒャー!」っという悲鳴がバスルームから聞こえてきた。1度では終わらず、続けざまにヒャ!ッヒャー!!と何度も聞こえた。何事かと思いドアをノックし「Are you okay?」と尋ねるが、祭りのような騒がしい音楽とともに「yeeees」「ヒャー!」と返事があったので一旦彼女が出てくるのを待つことにした。
キッチンに戻り途中にしていた食パンにイチゴジャムを塗って食べる。
その間にも聞こえてくる悲鳴とドタバタしている音が何だかおかしくて笑ってしまう。
少ししてびしょびしょの髪でキッチンに現れた彼女に何があったのか聞いた。
「お湯が出ないの!」
「いつもは待ってたらお湯になるでしょ?!」
「今日は水でシャワー浴びたの!」
と手のひらを上に向けて言った。いつもお湯になるまで2〜3分はかかるのだが、水のままとは。
何ということだ…
そう言えば昨日の午後私がシャワーを浴びた時も、ぬるぅい水しか出なかった。日中だったし天気が良かったから何とか済ませたけれど、今朝は顔を洗うのも嫌になるくらいの冷たい水でギョッとした。
しかしその水でシャワー浴びたハビエラって一体…
(修行じゃん、と思う。)
冬のオークランド、朝は霜が降りる日もあるくらい冷える。私は寝るとき電気毛布が必要だし、マザーに内緒でちょっとだけ朝にエアコンをつける時だってある。
とにかく何か問題が起こったことは明らかだった。マザーもファザーはまだ眠っている。
学校から帰ったら理由を聞くことにする。
学校から帰ると、キッチンには大きなふたつの鍋にお湯が沸かしてあった。
ああ、やっぱりお湯がでないんだわ…と確信する。
尋ねるより早くマザーが説明した。タンクのお湯が空になった。元に戻るまで3、4日かかる。シャワーは近くの図書館にあるからそこにでも行って、と。
Oh my goodness .
どういうシステムか分からないけど。
3日かぁ…
図書館へ行ってというのは、家から徒歩15分のところにある地域の図書館のことである。多目的ルームがあり、時々作品展示などもされている。トイレも綺麗だ。そのトイレと並んで簡易的なシャワールームが確か3つか4つあったような。よく行く図書館ではあるがシャワーを使ったことはなく、そこまでシャワーを浴びたいかと言われればそうでもないのでそのシャワーは使わないことにした。
しかし風呂も入らず全くそのままという訳にはいかない。他の方法を考える。
長く福祉の仕事をしていた私はすぐに策を思いついた。
1、鍋で熱めに沸かしたお湯をバケツに溜める
2、お湯に浸して絞ったタオルで体を拭く
3、バケツのお湯で足湯する、足を洗う
4、トイレに流せるウェットティッシュを使う
(海外ではトイレットペーパーがない!ってことが多いので流せるティッシュとともにウェットティッシュも日本から持参した。こんな時にも使えるのだとこの件で初めて知る。)
※頭皮に関しては季節柄汗はかかないし乾燥しているから3日くらい洗わなくても大丈夫と判断。
これだけでも結構さっぱりするものである。意外にもあっさりと3日は過ぎ、お湯も無事復旧した。学校の友達には念の為事情を話し、臭かったらごめんと前もって謝っておいたのだが、この3日間に苦情がくることはなかった。
ちなみにハビエラは、スポーツジムのフリー会員なのでジムのシャワーを使ったり、ダンス教室の後シャワーを済ませていて何ら問題なかったようだ。
そういえばマザーとファザーはこの3日間どうしただろうか……
知らないままである。
ーひとり言~Rethink~ー
こういう時、日本ってすごいんだなぁと心底思う。すぐにお湯が出てくるなんてすごい。水をジャージャー使ってるのも、冬に便座が暖かいのもすごい。出先でトイレに紙があるって信頼できるのすごい。節電しないで自由に電気が使えるのだってすごい。とにかく日本ってすごいんだ。すごいがゆえに忘れてしまう。それらが大切な資源であるということを。大切さを感じる感度が鈍ってしまう。
NZは電気がとってもエクスペンシブで、トイレの便座はいつも冷たい。わかっていても座るとヒャ〜っとなる。ホームステイしている学生の多くは、シャワーに時間制限がある。それは生活に使う水も貴重だからではないかと思う。
(単にビジネスとして留学生を受け入れ留学生に係るコストを節約しているだけのステイ先もあることは否定できない。)