ハッピーエンド
14歳の少年と少女は、遠い宇宙空間を漂う船で目覚めた。
広大な船内には無数の冷凍睡眠ポッドがあったが、トラブルか、経年劣化か、ほとんどが故障していた。僅かに生き残った仲間たちも、成す術なく、原因不明の病で死んでいった。
少年と少女は、一体のロボットの協力を得て、なんとか地球への帰還を目指した。二人とも記憶を失くし、何もない宇宙空間であてのない旅など耐えられるはずもなく、母なる地球が恋しかった。
いつものように、満天の星々を望む屋上ドームに二人はいた。
ひとつのパンを分け合って、
貴重なミネラルウォーターを口に含んだ。
出発の時から、
悠久を思わせる時間が経過している気がした。
すでに食料を始めとする資源はほぼ尽きてしまった。
「あれが地球?」
少年が言った。
「ロボットが言ってた通りの姿ね」
青く澄んだ惑星があった。
徐々に距離は詰められ、大気圏に突入した。
「帰還できるとは、感無量です」
ロボットが笑った。
着陸地点は、元々この船が離陸した基地に設定され、
高度600mで着陸体勢に入り、減速し、幾らかの砂ぼこりを上げて着陸を完了した。
少年と少女は無数の苔が生え、猛烈にツタが絡まった基地に入っていく。電源は生きておらず、無人で、ロボットの放つ黄色の光を頼りに探索を進めていく。
少女が一つの端末を発見する。
ロボットがなんとか復旧し、保存されたデータを閲覧することができた。
一通り閲覧すると、
少年と少女とロボットは、言葉少なに外へ出るしかなかった。
夕闇が迫る赤い空が、果てしなく広がる。
紫の雲が連なる冷え冷えとした空気は、深い夜を予感させる。
人の姿が遠くにあった。
それは大人数で近づいてくる。しかしそれが異常な長身で、異常に青白い肌をしていることに二人は気づいた。
そして、不気味に隊列を成している。
少女はたまらずうずくまる。
少年は空を見上げ、妙に落ち着いた声で言った。
「大人たちは僕たちを、一体、どこへ向けて出発させたんだろう」