仮説・ぶつかりオジサン
読んで字のごとく、主に女性に対してわざと、ぶつかってくるオジサンがいる。避ける様子もなく、なんなら軽くアクセルを踏んで直進し、肩にパーンとあたる。何事もなかったように去る。この、不可思議な恐怖感を帯びたモンスターは何者なのか。ごく普通の外見をしたオジサンがなぜ、異常行動をみせるのか。少しだけ、想像力を働かせてみよう。
まず、普通の、真っ当な、順調な人間はかような行動にはでない。例外的に、家庭不和と仕事のストレスから異常行動にでることもあるだろう。しかしそれは稀と感じる。何故なら、警察沙汰の可能性を無視してまで、そんなことは出来ない。酒や、ギャンブルや、食事など、その他の趣味でガス抜きを済ませる。加害行動にはでない。
つまり、行き場のない負の感情に支配されている可能性がある。たとえば、初老も視野にはいる年代で、人生が上手くいっていない。どうすることもできず、不安と焦燥と自己嫌悪に苛まれている。人はそういうときに、他者に原因をもとめたり、ヘタをすれば攻撃をしかけるものだ。少しシャワーの音がするからといって、過度な抗議をする。コンビニの店員を些細なことで怒鳴るなど、あげればキリが無い。
他方、狭い道で女性(女子)が2、3人で列をなし、こちらが止まる、避けることを前提に歩いてくる。そんな場面がある。私も少しは不快に感じることもあるが、追い込まれた初老手前の男性は、ひそかに憎しみを燃やす。「最近の女は教育がなってない」「ふざけやがって」「こちらが何も言えないからって」「女はいいよな、女は」
彼らは独身で、女性関係において良い経験に乏しい、かもしれない。そんな思いを増幅させていった結果、逆恨みが一線を超えさせるのか。
空っぽで、情けない、「女性」に対する復讐として、ぶつかりオジサン化しているのではないか。歪んだ、極めて個人的な正義感からくる、高揚感のなかで立ち去っている。人が理解できない異常行動に出る人は、残念だが、一定数いる。私のような物書きの末席の端くれは、この件について考えてみてもよいが、読者諸氏は理解する必要はない。話せば分かるような人間なら、理解の範疇を超えた行動をしないからだ。対処だけ、考えればいい。
かく言う私も、気を付けなくてはいけない。苛々を抑えて、理性を発揮していきたい。しかし、ぶつかりオジサンを見下していたら、足元をすくわれる。人に何かを言うときは、自分にも言い聞かせないといけない。
こうして自戒をこめることで、意識の高さをアピールして、了とする。