土曜随筆

 開花の遅れ、適度な花冷えで近所の桜、まだ七割は残る。
 断じて花見などせず、明日は新宿へ行く。何が哀しくて酒とツマミのはいったビニール袋を提げて、桜の園に闖入しなくてはいけないのか。屹度、早く帰りたくなり、人目を気にして妙に疲れて帰宅するだろうし。
 故に、明日、紀伊國屋書店・新宿本店へ行く。
 ついでに新宿バルト9で『毒娘』を観る。10代の女子と新しく家族となる継母の関係を軸に、謎の少女「ちーちゃん」と家族の壮絶な争いを描くホラームービーらしい。
 閑話休題。紀伊國屋書店での狙いは、当然、安倍公房と西村賢太作品である。具体的に、安倍公房先生は、
『密会』『友達・棒になった男』『方舟さくら丸』『カンガルーノート』
 そして、『(霊媒の話より)題未定』である(『他人の顔』は購入済)。
 先週、津田沼の丸善で買ったが、若干の乱丁がどうしても癪に障り、買い直しである。
 すでに週刊「我がヂレンマ」で紹介済みなので、来週号では取り上げない。乱丁と言っても、折れとか破れのようなダイナミックな乱丁ではないが、一度気になったら終わりである。自分でつけた傷ならまだしも、元からであると、我慢ならない。
 他方、
 西村賢太氏作品は紀伊國屋書店に、私の書架にない作品は無いかもしれない。何度も新宿本店で探し求めたためだ。安倍公房先生優先とはいえ、予算が余れば、新宿西口のブックファーストへ遠征するかもしれない。
 これだけ新宿に通っているのに、西口方面へはまったく行かない。以前は東京オペラシティ・アートギャラリーに何度か行ったことがあるぐらい。
 それにしても、いくら新宿、都心の中の都心とはいえ、国内有数の規模を誇る書店が東西にあるとは恐ろしい。それだけ需要があるということだ。
 品川と違って大型書店がある。
 それだけで圧倒的な勝利である。
 大型書店は大都会の象徴であり、【知性】の拠点なのだ。
 本は良い。ろう者にとっては、完全に没入できる娯楽であり、福音なのだ。当然、健常者にとっても、活字から自分なりの想像の羽を羽ばたかすことができる。人の、内心や考え、魂のすべてを直接的に描くことができる。
 そういう意味で、西村賢太氏の私(わたくし)小説は、心身性に満ちている。あれぐらい人間そのものが滲み出る世界が理想である。
 安倍公房先生に関しては、これから本格的に浸っていく所存。
 さて。
 今日は土曜日なので、酒盛りである。
 アテは焼き鳥の盛り合わせ(鶏モモ、レバー、ネギま、鶏皮)3パック。 
 おつまみの盛り合わせ(肉で何かを巻いたやつ、ジャガイモ、鴨の薄いの)を、無理矢理ワンプレートに詰め込んだやつ。
 えっと、風呂にはいってきます。離脱。
 今週は『薬用きき湯 FINE HEATファインヒート リセットナイト リラックス樹木&ハーブの香り』で、入浴した。商品名が長いな。
 前々から思っていたが、効能に、
「疲労回復、冷え性、肩のこり、腰痛、くじき、神経痛、リウマチ、しもやけ、痔、ひび、あかぎれ、荒れ性、あせも、しっしん、にきび、産前産後の冷え性」
 いや、そんなに効くか? 万能薬じゃねぇか。そこまで効いた覚えはない。入浴を継続すれば効くのか? 株式会社バスクリンさんよ。 
 まぁいい。もういい。酒が呑みたい。随筆なんて書いてる場合じゃない。
だが、まだ終われない。文字数が足りない。
 もっと脳をデデデデデストラクションして、チューブのもう一匙をこそぎだすようにして、もうひとふんばりだ。
 そうだ、言葉をひとつ紹介しよう。
『agoraphobia(アゴラフォビア、広場恐怖症)』という神経症の病名がある。これは本来、広場のような広々とした空間にいると恐怖や強い不安を持続的に感じる病気のことだが、昨今では公共交通機関等でも発症し得るとされている。
 この語は「agora(アゴラ)」という「公共の場」を意味する古代ギリシャ語と、やはりギリシャ由来の「恐怖症」を意味する接尾語「phobia(フォビア)」が組み合わさったものだ。
 英語圏の人は、アゴラフォビアと言われても、医師や博学な人以外理解できない高級語彙である。
 しかし、日本語であれば「広場」「恐怖症」で大体察しがつく。
 日本生まれ日本育ちの日本語が母語の日本語話者でよかった。
 もうそろそろだ。
 よし。
不定期『土曜随筆』終了。広場恐怖症に関しては、
『教養としての上級語彙 知的人生のための500語 /宮崎哲弥』
 から引用したやーつ。文字数確保に貢献してくれた、
【哲弥】に感謝して、了。


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