最弱星人
宇宙を大船団で放浪し、侵略しては収奪する宇宙生物があった。
手ごろな星を発見し、偵察隊を派遣した。降り立つと、そこは豊かな緑が広がり、赤い木の実が大量に生り、美しい海が遠くに広がっていた。
隊員のひとりが、原住民を発見した。大人だろうが、子供のように背が低く、全体がうす緑で、つぶらな目をしていた。
とりあえず、光線銃で撃ってみる。いとも簡単に胸に風穴があき、原住民は倒れた。仲間が四人やってきたが、強く殴っただけで、全員、死んでしまった。
「なんて弱いやつらだ」
もう一人の隊員が言った。
「これなら容易く支配できそうだな」
遺体から遺伝子サンプルを採取し、しばらく偵察隊が進んでいくと、大きな都市が姿を現した。土と、陶器でできたような、素朴な風合いの塔が無数に立ち並んでいる。
ある隊員は、星の様子を大船団の、司令部に報告した。
「非常に豊かであり、原住民は非常に非力で、侵略するには手ごろな惑星ですね」
それを聞いた船団長は戦艦の出撃を命令した。
偵察隊の隊員たちは、待機のためテントを設営し、飲み食いしながら戦艦の到着を待っていた。
すると、降り立った森のほうから、ついさっき殺害したはずの、緑色の原住民がぞろぞろとやってきた。隊員たちは、即座に光線銃を構える。
「なんだ? 人数が増えてないか?」
あきらかに倍以上に増えている。
原住民の群れが、猛烈なスピードで、偵察隊に突撃する。
火柱が、待機用のテントを吹き飛ばす。そこは、イチゴジャムをぶちまけたように、肉塊によって赤く染まった。
都市の、
最もおおきな広場に、原住民が集まっていた。全員、空を見上げている。
大船団から送り出された艦隊が、空に浮かんでいた。
都市を展望デッキから見下す船団長が言った。
「確かに、非力そうな連中だ。これなら簡単に支配できそうだ」
原住民たちは、口角を上げ独特な甲高い声で笑いだした。
それは、侵略者を迎え撃つ覚悟を帯びた、不気味なものだった。