防犯装置

「この防犯センサーは大変、便利な品物です。店内に設置しませんか。最近は、なかなか物騒です」
 ある宝飾店の事務室に、営業の男がやってきた。不審な行動を検知し、警察に自動で通報するそうだ。防犯にやりすぎはない。
「それは素晴らしい。契約させてもらいましょう」
「後日、設置に伺いますが、これで安心せず人の目を大事にしてください」
「分かっています。やっとの思いで独立し、つくった店ですから」
 宝飾店はセンサーの設置後も、従業員に防犯対策について教育し、訓練し、マニュアルも見直した。防犯に、万難を排した。
 その防犯センサーが設置されて一週間目の夜。防犯センサーのけたたましい音が響き渡った。事務作業をしていた店主が店内にかけつけた。盗まれれば大損害は免れない。泥棒の姿は見えないが、間もなくして警官が二人駆け付けた。何も盗まれはいなかった。
 そのあいだに、事務室の金庫が何者かに開錠され、それなりの現金が盗まれていた。損害ではあったが、高額な商品は無事。不幸中の幸いと、店主はそう思うことにした。
 営業の男は宝飾店から離れた場所で、札束を手にしてにっこりと笑う。
「防犯センサーに注意を集中させておき、その間に事務所を荒らす。この手法で、これまでよく儲けたものだ」
 背後から店主の男が近づき、営業の男に手錠を嵌める。
「ここ最近、その手法で被害が多発していた。私は潜入捜査で網を張っていたのだ。間抜けめ」
 

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