敵
庭から、警備ドローンの射撃音が鳴り響く。
次いで、
脅威を排除を知らせる音声を聞き、男は恐る恐る玄関を開ける。
そこには、無数の弾痕で破壊された警備ドローンがあった。
「嘘だろ」
男の眼前には、
見知らぬ戦闘用ドローンが浮遊している。
球体型の、
赤い目の、
両側に三連づつライフルを備えたタイプ。
そう視認した瞬間、男は射撃された。
その直後、
警備ドローンと男のホログラムが消え去り、戦闘用ドローンの背後をとった警備ドローンが射撃を加えた。
男は、地面に落下した戦闘用ドローンの無力化を確認すると、空を見上げる。
灰色の雲がどこまでも広がり、陽の光りも届かない、陰鬱な空だった。
”敵”を無限定に生産する巨大な工場が無数に聳え立っている。
それらは、荒廃した街を見下ろし、無数の戦闘用ドローンを吐き出し続ける。
男はそれから目線をきり、
警備ドローンと共に瓦礫を避けながら、寂寞とした空気の支配する旧市街に消えていった。