或る女

 ある辺境の惑星で、トミとヤスは警備の仕事に従事していた。
 警備といっても、調査段階であって人工知能によって自動で運用される調査拠点の周辺を周回するだけの、簡単な仕事だった。法律で定められた人員でしかなく、日がな一日、荒漠とした砂漠ですることなど、ほとんどなかった。
 トミは、ふと丘陵の頂点に人影を認めた。
 ありえないと思った。この星に生きた人間は二人だけである。
 ヤスも影を認め、ゴーグルのズーム機能を使用して顔を確認した。
「女だ。それも若い」
「そんなバカな」
 トミはそう言いながらも、一歩一歩丘陵を登っていく。ヤスもそれにつづき、二メートルの距離まで近づいたとき、その、ロングヘアの女は倒れ込んだ。二人は協力し、トミは頭、ヤスは足をもって、とりあえず調査拠点に連れていく事にした。 
 さっそく容態の確認のため、検査機器に女を寝かせる。
「何者だろうね。こんな辺境の惑星で、ひとりとは」
 トミはコップにコーヒーを注ぎながら言った。トミは顎をさすり、首を傾げる。
「アンドロイドにしては精巧だな。なんだかなぁ」
 しばらくして、結果が画面に表示された。
 トミは眉間に皺をよせる。
「アンドロイドじゃないだと?」
「どういうことだろうか。とりあえず、本社に報告しておこう」
 ヤスはデバイスをだし、データと共にメッセージを送信した。二人はとりあえず女をその場に寝かし、調査にでることにした。
 砂嵐が吹き荒れるなか、女が現れた地点を中心に丹念に調べてみたが、結局、何も発見できなかった。
 翌日。
 巨大な、本社の調査船がやってきた。
 調査員の男たちは、その女を手早く調査船に収容した。
 トミはその様子をみて、リーダーの男に言った。
「随分と手際がいいな。こんな辺境に」
「不思議なことか?」
 それ以上何の説明もなく、調査船はさっさと惑星から飛び立っていった。ヤスと共にまた、平坦な日常が始まった。
 翌日。
 休憩中にトミが「面白いデータがある」と切りだし、プロジェクターでそれを見せた。
「なるほど。連中、そりゃ急ぐはずだ」
 ヤスはため息をはき、ゆっくりと椅子に腰かける。
「人口臓器の運び屋か。違法な臓器工場が近くの惑星にあるって噂、本当だった。身体に詰めるだけ詰めて、クライアントの元へ行く途中だったのか」
 

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