落下する人

 ふと、窓の外を見た。
 人間が、落下している。ほんの一瞬のことで、性別までは判別できない。
「なんてことだ」と思ったが、地面に激突した音が聞こえない。
 青年は興味本位でベランダに出ると、地面を覗き込んだ。
 しかし、死体がない。
 何の騒ぎにもなっておらず、アレは幻覚だったのかと首をひねる。
 と、思ったと同時に気配を察知すると、
 女だ。
 眼前を落下していった。
 そして、消えた。
「幽霊か何かだろうか、いや、疲れてるな」
 青年は部屋に戻ると、重い衝撃音が響き渡った。背筋が凍り、それでも恐る恐るベランダへ向かうと、すでに騒ぎになり始めていた。
 女だ。
 両足があらぬ方向に曲がり、血だまりができている。
「もしかしてさっきのアレは、虫の知らせか。なんてことだ」
 その時。
 上空から男が落下した。
 目が合ってその直後、消えた。
 その顔は青年と瓜二つだった。
  
 
  

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