野蛮なやつら
巨大な宇宙船にミサイルが着弾した。オレンジの煙とともに、機体の破片が降り注ぐ。
ある大国の、軍の責任者はそれを見て言った。
「まったく。野蛮なやつらだ。わけのわからない言語や、電波を出したかと思えば、こちらの警告を無視して、大気圏を超えてくるとは」
戦闘が青空に描かれるなか、側近が部屋に入ってきた。
「相手の攻撃が止まりません。相変わらず、コンタクトをとろうとしてきます。何を言っているか、理解できませんが」
軍の責任者は、敵の分析結果を眺め、逡巡した。
「このままでは、民間人に被害がでる可能性がある。惑星Xに援軍を要請しよう。市民を護るのが我々の責務だ」
大きな窓の外、眼下には、一千万人を超える国民が住む首都が広がっている。報道は、侵略者との戦闘の話題で持ち切り、パニックが徐々に浸透していくようだった。
軍の責任者の命令は即座に惑星Xに伝わり、艦隊が出発した。その動きを伝えられた軍の本部は慌ただしく、友軍を迎え入れる準備に入った。
巨大な宇宙船。船長はいら立ちを隠せず、部下からの機体の損傷や、死者の報告を受け、足元のゴミ箱を蹴り飛ばした。
「あらゆる方法でコンタクトをとっているというのに、突然、攻撃してくるとは。まったく、野蛮なやつらだ」
次の瞬間、轟音とともに激しく船体が揺れた。テーブルの上のコップが落下し、部下が神妙な面持ちで言った。
「このままでは、撃墜もあり得ます。撤退するにしても、逃げ切れるとは思えません。どうします」
船長は即答した。
「地球、月面基地、火星に今すぐ援軍を要請しろ。奴らに人類の力を教えてやる。先に手を出したのは、やつらだ」
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