真夏の新宿

 新宿へ行く。
 この内容の記事は大体つまらなくなる。
『食事して、本買って、映画観る』
 面白いことなど起きないからだ。
 いや、エッセイは良さは、特別でないことを価値あるものに昇華することにある。冒頭に敗北宣言をしてしまうとは、あまりに情けない。
 仕切り直そう。
 
 やりたくもないが、始めたら拘りが出る作業。
 草枝刈りが始まったのは朝6時半。私の自宅の庭は、そこそこ立派な木が数本生えている。旗竿地であるから、そのアプローチたる道の両脇に生垣がある。
 夏は草木の伸びが早い。一週間もすれば、一時間程度かかるほどになる。
 そして暑い。早朝でも直ぐに汗が噴き出すほどであり、ポタポタと地面に雫が落ちる、それでも隣家への配慮と、最低限の美観の維持の為に努力する。そういう時間であって、耐え忍ぶしかないのだ。
 これは自分に課した義務。
 トイレと自室の掃除もこなす。一連の流れのなかで、ひとつの考えが浮かんでは消えた。
「お手伝いさんを雇えるほど金持ちになりたい。日曜日の朝くらいゆっくりしたい。しかし、他人が敷地にいるのは耐えられない」
 よほど広大な土地と、大邸宅でない限り、お手伝いさんは持てあます。
 特権階級の知人や親戚とは無縁なので、イメージできないが。
 下級庶民の私は汗を流すしかない。
 さて、『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE YOURE NEXT』の上映時間は12時55分なので10時ごろに家を出ることにする。
 何故、この映画を観ることにしたかというと、希望の時間帯で唯一観ようと思える作品だったからで、本音で言えば『ツイスターズ』を観たかったが、新宿バルト9では時間の都合が悪すぎた。
 もうひとつには、大人気漫画・アニメから何か学びたいというのもある。
 それらの想いが混じり合いながら、電車に乗った。
 総武線はそれなりの混雑である。
 お盆休みであるから当然だが、大都会へ向かうことを実感する。千葉の民が大移動である。地元に脇目も振らず、東京へまっしぐら。
 やっぱ東京よ。
 こちとら川隔てて直ぐ東京都だから、とくに千葉県民という自覚がない。
 何でも最高・最先端がある東京の魅力は尽きない。 
 しかし、新宿以外ほぼ行くことはない。稀に品川、中目黒、下北沢。もう少しバリエーションを広げたいところだが、手段の目的化は避けたい。
 今秋、駒込にある『BOOKS青いカバ』に行く。
 見識を広げるのに、無理をする必要はない。
 さて、
 新宿に到着した。
 少し割愛して、今回のランチは『沖縄料理やんばる」です。
 ここ5年ほど通っているお店である。何が切っ掛けで来店したかは覚えてないが、元々、沖縄料理は気になっていた。
 注文はいつも同じ「ラフティー丼セット」である。
 これは、ごろっとしたラフティー(豚の角煮)二つに糸昆布がのった丼と、小さめの沖縄ソバがセットになったもの。
 柔らかく程よい味付けのラフティーは間違いなく美味いし、糸昆布が旨みを足して良い仕事をしている。沖縄ソバは出汁が優しい味で、汁物がわりでもある。
 これがあまりに優秀過ぎて、他メニューは全く注文しない。毎週のように来るならまだしも、月二回程度。冒険をする気はないのだ。中々保守的にできている私は、その後、当然、紀伊國屋書店・新宿本店に赴く。 
 ここ一週間、トマス・ピンチョンの『重力の虹』上下巻について何度も言及している。
 結論から言えば、買った。
 しめて、10,340円也。
 高価。
 気になってやるせなくて、夏です。
 買った直後、つい、
「買っちゃったよ――買っちゃったよ――」
 ヤバいブツを買ったように、深遠なる昂揚感に包まれた。ついでにもう一冊、緑のカゴにいれたところで予算に到達。適当に炭酸で水分補給し、新宿バルト9に戻る。
 そして何度もカバンの中身を確認する。
 紀伊國屋書店で紙の袋に入れてもらった為だ。
「なんで、なにを確認?」
 紙袋の両側は通常、”折れ”が内側へいく。ほとんど起きないことだが、この折れの角が、特に文庫本にダメージを与えることがある。これによって、一度だけ買い直した経験がある。そんな悲劇を防ぐために、折れが外側に向くよう、折る。これで無問題。
 無事であるか、確認である。
 さて、暇だしUFOキャッチャーでも。
 当然、僕のヒーローアカデミアのやつ。
 200円で取れました。主人公の緑谷出久のやつ。あっさりとね。革製のバッグの上部、ジップの真下に突っ込んどきました。
 時間です。
『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE YOURE NEXT』
 上映開始。
 前情報なし。漫画未読、アニメ未視聴、映像や画像は見たことがあるくらいの状態です。
 普通に面白いし、程よく熱くなれるやつです。
「友情・努力・勝利」の王道ジャンプ漫画を疾走する、勧善懲悪、映像良し、最高にクールが一気通貫でした。
 やっぱエンタメだよな、と、痛感させられる作品。
 少々、ご都合主義的な部分もありましたが、具体的に言及するほど気にはなりません。
 観客を楽しませよう、という利他的な感覚がビンビンに伝わってくる、上質なアニメ映画でした。おススメです。
 と、
 こっからは蛇足になりがちです。
 なんせ、帰るだけですから。
 ひとつ言及するなら、 
 本棚にトマス・ピンチョンの『重力の虹』上下巻が並んだ瞬間、
「やべぇな、ドープでエグいよこの並び」
 背表紙の存在感だけで、イッチャいそうです。
 あと、僕のヒーローアカデミアのパンフレット、特別版を買ったのですが違いはシール付き、内容に追加があり濃くなっているようです。
 1,100円です。
 思うのですが、こういったシールは非売品なので使えません。勿体ないです。これをいとも簡単に剥がせる人に憧れます。
 ということで、また明日。良いお盆休みを。
 

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