私と新宿

 千葉に引きこもり、東京に足が向かなかった私が、新宿に通うようになったのは五年前。きっかけは映画「孤狼の血」を観に行くためだった。せっかくのヤクザ映画なら、新宿。短絡的な理由だが、いいじゃないか。
 それ以来、多い時は週に一回のペースで通う。
 主に映画を観るため。定番のコースは、新宿駅東口を出て、新宿三丁目イーストビルにある新宿バルト9に向かう。予約していたチケットを発券し、エレベーターで九階にのぼり、その日観る映画のパンフレットを購入。すぐにスタジオ・アルタ裏にある沖縄料理「やんばる」に直行。ラフティ丼セットを注文。ごろりとした豚の角煮が二個、昆布の細切りがはいったラフティ丼とミニ沖縄ソバである。
 これが美味い。脂が甘い豚の角煮(ラフティ)と昆布は優しい味、沖縄ソバは出汁が美味く、どこか懐かしい味。このセットが優秀すぎて、他を頼めない。早ければ、注文から完食を十分以内で店をでて、紀伊国屋書店・新宿本店に向かう。目的の書物がなくても、ひっかかるものがあれば購入。言わずと知れた品揃えで、行くだけでも中々たのしい。ただ、コミック・DVD売り場が向かいの別館から、八階に移動して面倒になった。そこまで不満ではないが、楽だった頃が懐かしい。
 他に用事がなければ、水分を補給し、小さいサイズのペットボトル飲料を購入し新宿バルト9に戻る。上映時間まで待機。その時間は持参したノートとボールペンで、その日のnoteのネタを考えたり、徒然なるままに何かしら書いてみたりする。上映が終わると、一目散に階段で八階まで移動し、エスカレーターで一階まで降りる。人混みを避けながら、体をかわし、足早に新宿駅。総武線に乗り、帰宅する。
 ここ五年で、最も足を運んだ東京、それが新宿。ホームレスから富裕層まで、あらゆる階層の、立場の、多様性豊かな人々。来れば必ず、面白い目を引く人が歩く街。どんな人間でも受け入れる包容力がある。気取らず、いつも迎えてくれる。変わった人がいても、誰も、奇異の目で見ることはない。そんな新宿が気に入っている。しかし、私の行く範囲に新宿歌舞伎町や、西口方面は含まれない。歌舞伎町は、TOHOシネマズに用が無ければいかない。西口は、東京オペラシティ・アートギャラリー以外はいかない。
 新宿駅の東口をでると、「帰ってきた」そんな感覚になる。
 他にそんな場所は当然、地元だけである。不思議なものだ。何故だろう。よく通っているからか、先祖に縁でもあるのか、理由はわからない。きっと、これからも足繫く通うことになるだろう。なんだか良縁がありそう、そんな妄想を抱きながら、憂鬱な月曜日を迎えるとする。
 

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