雨、汗、私。

「休日」とは何か。身体を休める日である。しかし、自宅の庭に草木がある以上、刈る必要がある。トイレの便器も洗浄剤でこするし、自室の掃除もする。これは最早「労働」である。
 理想をいえば、小鳥のさえずりで目覚め、あくびなどしてつつトーストをセットし、スクランブルエッグをつくる。ついでにソーセージを茹で、平皿に千切ったレタスとミニトマトを転がす。スクランブルエッグとソーセージを盛り付け、ケチャップを少々。焼きあがったトーストに無塩バターを塗る。ティーバックで紅茶をつくる。
 それらを、ニッポン放送『イルカのミュージックハーモニー』でも聞きながら優雅に貪る。
 現実は、
 汗を噴きだしながら名も知らぬ雑草、雑木の枝なぞを刈っては刈っての約1時間。トイレを洗剤で磨き、磨きてシュラシュシュシュ。自室は本棚に埃を溜めないために、マイクロファイバーのようなもので拭いて、本を戻す。
 大体1時間半は日曜日の朝から作業している。
 誰もやってくれないので仕方がないが、家にいるのに帰りたくなる。かといって、誰か家族がいたとして、今更、すべてをやらせるのは気が引けるだろう。習慣とは恐ろしいものだ。
 本日の天気予報によると、大雨は降らない模様。ギリギリ傘は必要ないかもしれない。
 そう決めつけて、出発のとき。確かに雲は連なってはいるが、なんとかなりそうな予感。きっと大丈夫。根拠などないが、本屋において傘は足手まとい。手首にぶら下げようが、床に横にしようが、もう嫌ってやつ。
 今回の本屋はお馴染みの「丸善・津田沼店」である。
 千葉県下ナンバーワンの蔵書数を誇る大型書店だ。駅からも徒歩1分程度と、立地も抜群。
 まだ、雨はふっておらず、汗もそこまでかいていない。よし、ここは焦らずトイレで脱糞だ。コンディションを万全とし、いざハンティング。
 愛用しているリングノートのメモをもとに、本の検索を利用し、手をとってみるがピンとこない。フィーリングを信じてあれやこれや、あーでもないこーでもないと、1時間半ほどかけて選書。
 一万円ほど課金して外へでると、雨が降りかけていた。
 足早に津田沼駅に向かい、総武快速に乗り込んでしばらくして外を見ると、分厚く灰色の雲。これ以上なく、曇天で、最寄り駅についたところで雨が降りだす。
 傘、もってくればよかった。
 本は革製のバッグに入っているので、なんとかなるだろうが、不快であることに変わりなし。雨は嫌いだ。すべての行動に影響を与え、湿気を加速させ、結果、汗が噴きだしてくる。
 自宅につくと、顔から前腕まで汗が止まらない。大粒とまではいかないが、買ってきた書籍を本棚に配置しなくてはいけない。当然、汗は水分。
 本の敵である。必要以上に気にして、タオルで体を拭きながらなんとか配置を終わらせる。手汗をきにして、ティッシュで触った本を拭く。
 やっとの思いで終え、汗まみれのTシャツをハンガーにかけて干そうとした。
 が、落下した。
 ついたゴミを取り払う際の情けなさ。悔しさ。遣る瀬なさ。些細なことであっても、本人にとっては泣きたくなる想いである。シャワーを浴びて、気分を整え、軽く遅めの昼食をいただく。
 銀座カレーパンと抹茶蒸しパン。これを昨日の酒盛りの残りのビールでいただく。
 美味い。
 もしかして、アテにパンはアリなのでは? そう思わせる美味さであった。直ぐにお腹一杯になってしまいそうだが、安く済むのは確か。
 今のところ試そうとは思わないが、頭の片隅にはいれておこう。
 そして、
 この記事を書いている。
 雨と汗を越えて、くつろぎの時間を迎えている。
 そして集中力が切れた。
 なんだか、雷の唸り声が聞こえた気がする。気のせいでしょうか。
「私」は、休日が通り過ぎる狭間、すでに9月であることを意識した。
 読書の秋は近いようで遠い、そんな時期がやってきた。
「もう9月なのに、なんでこんなに暑いのよ」
 アラフォー(38ちゃい)の私が子供のころは、涼しい秋の空気がはいってくる時期だった。
 時の流れと、世界の変化を感じた休日の夕方でした。

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