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仏花
去年の年末、花屋で仏花のブーケを買った。
都会のど真ん中のそのお洒落な花屋もといフラワーショップは、スーパーで買える定番のコーディネートとは違い、遠目に見ればまるでウエディングブーケのようなセンス溢れる仏花を販売していた。供えられたほうもこれはハイカラと喜ぶに違いないとブーケを手にウキウキしながらレジに向かった。
お会計のそのとき、店員さんから思わぬ質問をされた。よくある「レジ袋は有料です」とか「切り花長持ち剤を入れておきます」といった種類の声かけだろうと油断していたら、「こちら仏花ですがよろしいでしょうか。」という確認だった。一体なぜそんなことを確認されなければならないのか。一瞬理解が追いつかなかったが、都心では仏花を切り花として買ってしまう客もいるのかと納得した。ありがたい(?)ことに筆者も仏花など買いそうにない客層の一員だと思われたようだ。
しかしわざわざ花を買いに来る人々の中に、本当に間違えて仏花を購入する客がいるのだろうか。花を贈るなり飾るなり、あたたかい心の人には違いない。花屋で張り込むわけにもいかず、それ以来心残りであった。
あるとき突然答えに出会った。いとうせいこう氏である。ベランダーの大先輩である氏のエッセイに、切り花を買っているつもりで実は毎回仏花を購入していたエピソードが書かれていた。購入の都度おこなわれる花屋との無言の儀式は最高である。以来、筆者も園芸の感動や失敗を記録しておこうと、このnoteを始めるに至る。
とりわけ、水草が欲しかっただけなのに気づけば魚を育てていたエピソードは笑いがとまらなかった。筆者も水耕栽培を始めてからというもの、水中で発芽したアンスリウムの新芽が自分自身に根っこを絡めながら成長しているガラス瓶を眺めては、まるで水草のようだと感じている。このガラス瓶には何かが足りない。そう、魚である。