止まり木

止まり木

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雨だから 雨なのに

雨が降っていたけど 電車で行くことにした 帰りは夜になったけど そんなに遅いわけでもない 電車の中は雨のせいもあって ちょっと湿っぽい 太ったおじさんの汗臭いシャツが 申し訳ないけど気持ち悪い 少し離れて立つことにした 窓の外に流れる街並みが 右から左へと消えて行く 僕の今日も右から左へと消えて行く 終点はどこだろう 駅に着いて駅前通りを歩いて帰る 居酒屋さん 焼き鳥屋さん コンビニ 喫茶店はもう閉まってる 雨なので なのか 雨なのに なのか 人がたくさんいる この町の住人

    • オリオン座

      9月1日。深夜0時。 この日から始まった新しい毎日には、ただ不安しかなかった。 希望とか夢だとか、そんなものは何もない。 一度走り始めれば、止まることはおそらく許されないだろう道だった。 そう思い込んで20年間走り続けて来た。 なぜこの道を選んだのか、なぜこれでいいと思えたのか、今となってはわからない。その時、そう決めたのだ。それしかないとさえ思っていた。 妥協でもない。野心でもない。計画でもない。 そんな出発にも関わらず、これまで走って来られたのは、そこに与えられた道があっ

      • 飲みながら・・・。

        よくありそうなパターン。 ある朝、寝坊してしまったJKは慌てて食パンを咥えたまま家を出る。 学校へ向かう道中、路地の角を曲がろうとすると角の先から来たDKと出会い頭に衝突する。 お互い、「気をつけろよ。」「どこ見て歩いてんだよ」などと言い合いながら別れる。 学校に着き教室に入ると、「転校生を紹介する」と言って現れたのがさっきのDK。 「あっ!さっきの・・・」なんてまた言い合う。 その後、なんだかんだと惹かれ合い恋に発展していき、繰り展げられる学園生活の数々。 ひとつのフォーマ

        • 時間の中へ

          【あらすじ】 仕事に生き甲斐を感じていると思い込むことで、生きる意味を自己満足的に肯定していた野原。 ある日、同僚から言われた言葉を機に自身の人生を見つめ直すことに。 積極的に変わろうと試みるが、変わったのは自身の心境だけだった。 その矢先、先輩の大沢さんからある「噂話」を聞く。 無理に頑張りすぎる奴はみんな消えてしまう。 出張先で野原が目にした言葉は、大沢さんが言っていた言葉だった。 ──「時は母なり」── この言葉に込められた意味を、体現していく野原。 生きていくうえで大

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          文披31題 day02 喫茶店

          文披31題 day02 喫茶店

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          文披31題 day01 夕涼み

          文披31題 day01 夕涼み

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          文披31題 day03 飛ぶ

          文披31題 day03 飛ぶ

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          夢のまた夢

          雑誌の巻末に『アイデア募集』と言う記事を見つけた。 『あなたのアイデアを題材にアニメを制作します』というものだった。 早速、書いてメールを送信。 初めての応募だった。 『採用される訳がない。でも、何事も経験だ。挑戦することに意義がある。』 誰も聞いていない言い訳を1人で呟いた。 後日、制作会社からメールが届いた。採用とのこと。あんなに飛び跳ねるように嬉しいと思ったことはなかった。 誰かに伝えたくて、伝えたくて、周りを見渡しても、聞いてくれるような友だちもいないことに気がづい

          夢のまた夢

          知ったかぶり

          何となく、何もかもがつまらないんだ。 何をやっても、楽しいなんて思えないんだ。 なんだか、バカにされているようで。 なんだか、干されているようで。 なんだか、避けられているようで。 この劣等感はどこから来るんだろう。 自分のやること、なすこと全部が、 ちっぽけで、無意味で、しょうもなくて。 「すごいね」「いいね」なんて言われても、 「嘘つけ!そんなこと本当は思ってないくせに。」 と思ってしまう。 腐ってるよね、ぼく。 それは、被害妄想だねって、 一言で片付けないでよ! 妄想

          知ったかぶり

          Moonlight

          今夜 いつもの2人で 2曲だけだが唄わせてもらった 聞いてくださった方には きっと 何かが 伝わったと 自己満足させていただこう 帰り道 夜空を見上げると こっちを覗いていたのは どうやら満月らしい これから 2人が進む 道の名前は moonlight ということにしよう どんなに暗い気分だったとしても 月の光は照らしてくれる 暗い夜だからこそ 月の光は 明るくて とても 優しい そんな2人で これからも 唄い続けたい いまさら なんて言う人もいるけど 何かを始めるのに

          音のグラデーション

          お風呂場の小さな窓から いろんな音が飛び込んで来る 目を閉じて 湯船に肩まで浸かり 鼻から思いっきり息を吸う 意識の中で溺れてしまいそうになるほど 湿度の高さを感じる 思わず顔が緩みほんわりと笑顔になる 耳を澄まして音を楽しむ 音は多くの景色を連れてくる イメージの世界は自由そのもの 散歩のコースにある小川から水の流れる音 その手前にある工場から木を切る音 けっこう遠くにある学校のチャイムの音 貨物列車が通り過ぎる音 アスファルトを叩く雨の音 車が水溜りを跳ねて行く音 自転車

          音のグラデーション

          バックホーム

          狭い洗面台でユニフォームを洗う。 洗濯機ではどうしても落ちない汚れ。 市販の洗濯洗剤では落ちない汚れ。 グローブなどを販売しているお店で見かけた特殊(?)な洗剤でゴシゴシ洗うとよく落ちる。 そのおかげで子供は喜ぶが、妻はヘトヘトになっている。毎回。 「ユニフォームぐらい自分で洗え」との怒号の後、時々自分で洗っている姿を見るようになった。 先日、2年ほど付き合っている彼女に洗い方を教えていた。 明日の試合が最後の試合だと言うのに。 狭い洗面台でユニフォームを洗う2人の背中を見て

          バックホーム

          地下鉄の中 週末の最終電車 酒臭い車内 人の数に驚く 今週と言う時間を 過ごしてきた人 今日と言う一日を 生きてきた人 未来と言う明日に 生きようとする人 そんな人たちから目を逸らす 窓の外は真っ黒で 無機質な景色 窓ガラスに映る自分の顔 母の顔に似ていると はじめて思う 親孝行する前に亡くなった母の顔 疲れ果てた体 疲れきった心 それでも 今週を過ごし 今日を生き 明日に生きようと  時間の海を泳いできた 大丈夫 目を逸らす必要はない 窓ガラスに映る母が 背中を叩いてくれた

          空色に、白い猫の毛1本。

          30分ほど車を走らせて辿り着いたスーパー銭湯。 久しぶりに来てみた。 空は文句なしの快晴。青一色だ。心も晴れる。 青と一言で云っても200種類以上あるらしいので、これは「空色」と呼んでおこう。 いや、待てよ。 東西に目を向けるとやや白くグラデーションしているので、一色ではない…。でも、まあ、今日ぐらいは細かいことを考えるのはやめにしよう。 人工の瀧が見える露天風呂で、足を伸ばす。ついでに両腕も。文字通り『大』の字になって全身でお陽さんを浴びる。もはやこれは入浴ではなく日湯浴

          空色に、白い猫の毛1本。

          ピアノの音

          降りしきる雨の音 さっきより勢いを増した あなたにさよならを告げられた 泣きたい私に代わって泣いてくれた 雨はいつしか小雨になっていた 遠くに小さな青空が見えた 庭の草花についた雨の雫が光っていた 窓から差し込む陽射しが優しく包んでくれた 私は1人になったのではなかった 私は1人になれたのだ 鍵盤の一番端のキーを叩いた 刻まれた音は刻まれた時間と同じように 何もなかったように消えていた 光っていた雨の雫も消えていた 青い空は新しい私を連れてきた 降り注ぐ空の青 さっきより勢い

          ピアノの音

          昨日から明日へ繋がる今日

          新しいノートを買った。 特にかわいいとか、かっこいいとか、気に入ったわけでも、使いやすそうだとか言うわけでもなかった。 文房具屋さんをぶらぶらと目的もなく歩いていたら、なぜかそのノートが目に付いた。 何の変哲もない、普通のノート。表紙に観葉植物の写真が印刷されているだけだった。 それまで、立ち止まることもなく店内をただ歩いていただけだが、そのノートと目が合った瞬間に立ち止まってしまった。 手に取り、ペラペラとページを捲る。 紙の匂いと同時に、懐かしくもあり親しみのある匂いが混

          昨日から明日へ繋がる今日