円谷英明の徒然なるままに==円谷英二のオプチカルプリンターの真実==
円谷英明です。
今回はウルトラマンシリーズに大変な影響を与える件について語らしてもらいます。
それは円谷英二とオックスベリー・オプチカルプリンターに関することです。
この件にはいわゆる定説みたいなものが存在しそれが事実として認識されています。皆様がどのように理解するかは皆様の自由なので否定はしません。
定説を持論とする方はそれでも問題ないです。
特に55年程経過しているのでいまさら真実が分かっても意味をなさないかも知れません。
あくまで興味のある方のみで結構です。
内容は円谷英二直筆の文章(6ページ)をこの後記載します。
なるべく本人の文字にて頑張りますがフォントがなかったらご容赦ください。
オックスベリー・オプチカルプリンター
借用設置の件報告書
A 当プロダクションでは特殊技術によるTV映画製作分野で他社のものより、勝れた作品を提供してゆきたい念頭で努力しておりますが。只ひとつ重用な欠けているために非常に不自由を感じて居ります。
それは、この種映画の製作に必要欠くべからざる、オプチカルプリンターがないことでした。
この光学機械を縦横に駆使する技術者がプロには多数おりますが、残念ながら機械がないため、現在はTBS映画社所有のオプチカルプリンターを、先方の好意で借用しておりますが、使用時分には大巾な制限があり。大部分のカットは、尺單位の計算で先方に依頼するしくみになっています。しかしこれもTBS映画に限っていて、他局の映画には通用されません。
従って、現在制作中のCX-TV映画マイティジャックの光学處理は、出来るだけさけて、必要かくべからざる場面を2.3カット外注していますが、こんなことでは決して面白映画として完成することは出来ません。マイティジャックはこのような事情もあって只今視聴率の点でも苦しい立場になって居りますので一日もこの苦慮から脱却し、CX-TVの要望に答えたいと焦慮して居ります。
B この件については、昨年10月CX-TVとの間で番組製作の交渉が開始された際、すでに問題となり、以後4ヶ月、種々研究して参りましたところ、日本リース会社の好意的話もあり、更に検討の結果、最近に至りこのリース会社を通じてプリンターを借用する交渉が成立しました。しかし賃貸表が長期に亘る
手形の月賦仕掛方式でありますので、東宝仐下にあるプロとして借用することは不適当と考へ、別会社の円谷エンタープライズに於て借用手続きを進めた次第です。
(エンタープライズにプリンターを設置後は円谷プロとの間に特殊優先契約を結び共存的運営を行っていく方針です)
C 円谷エンタープライズといふ会社は息子や親籍の手で、昨年末円谷プロに協力する主旨で設立された会社で、営業種目は、TV映画のローカル局放映斡旋。遊園地施設の設計、映画機材の貸出を目的とし、オプチカルの設置後は、新たにC.Fの請負制作も加える事になります。
D 現在プロ作品に於けるオプチカルプリンターの使用状況は下記の通り(TBS映画部資料)
作品名 使用料(円)
1 湖の秘密 590,000
2 緑の恐怖 663,000
3 ダーク・ゾーン 1,374,000
4 マックス号応答なし 1,239,400
5 姿なき挑戦者 1,450,000
6 消された時間 2,852,000
7 あやしき隣人 225,000
8 宇宙人303 281,000
9 遊星より愛をこめて 46,300
10 狙われた 街 6,000
11 アンドロイド零指令 584,000
12 魔の山へ飛べ 2,048,900
13 V3から来た男 275,600
14 暗に光る目 17,300
15 空間X脱出 296,500
16 地底GOGOGO 282,900
17 U警備隊西へ 22,400
18 後編 373,300
19 プロジェクトブルー 598,800
20 地震源Xを倒せ 288,000
21 海底基地を追へ 187,600
22 人間牧場 507,200
23 明日をさがせ 643,900
24 北へ帰れ 1,078,200
一作品あたり 平均¥663,800
E 以上はウルトラマン、1番組の使用明細ですが現在プロはCX-TVの60分番組も制作中なのでこれ等の光学処理も外注に依存すると出費は膨大となり予算の枠を越えることになる。またカット数も100カット近くを毎週処理していくために、なんとしても自己保有のオプチカルを使用する外、致しかたなく。仮に外注しても引き受けるラボは先ずあるまい。よって一日も早く借用を実現し、以下の如き料金で使用すれば、はるかに有利であります。
30分番組/作品使用料 350,000円
60分番組/作品使用料 450,000円
F 借用物件故設置場所は、現在のプロ内は火災予防上不適当故、現像作業との関連上からも東京現像所内にと考え協議しましたところ幸ひ好意あるご理解を得ましたので、東現内に適当な場所を考慮していただくことになつています。
G 以上甲述べました理由で、オプチカルプリンター借用の手続きを進めて参りました。
つきまして、勝手では御座いますが、何卒この計画がスムーズに進行出ますよう、格別の御援助と御理解を賜りますように、お願い申し上げる次第で御座います。
以上
円谷英二
以上が全文になります。
もし出版の機会があればコピーではありますが掲載したいと思います。
ここからが本題ですね。
定説ではウルトラQ,、ウルトラマンの制作に必要なので円谷英二が独断で購入した!皆さんの感想はいかがでしょうか?
正確な年代が分かっているので解説しましょう。
円谷エンタープライズといふ会社は息子や親籍の手で、昨年末円谷プロに協力する主旨で設立された会社で、
これは1968年5月に設立されています。
マイティジャックの放映は1968年4月~6月
ウルトラセブンは1967年10月~1968年に放送されてます。
北へ帰れは1968年3月に放送しています。金額が確定しているのでこの近辺にこの書面が作成された感じがしますね。
他の部分では最終的に東京現像所内に設置した。これは合ってます。
私も勤めていたときに編集の小林さんから、いわゆる定説を聞いていましたので疑う余地はありませんでした。
ではこの手紙はいつ頃(1968年と推定される)誰宛に送ったのでしょうか?
TBS宛て?:これはおかしい気がします。TBS映画社から資料を出してもらいCX-TVのマイティジャックにも使うので文末のような表記にはならない気がします。
東宝宛て?:これが妥当かもですね!東宝の子会社ですし知らなかったと言われないために。中の表記で東京現像所、その後東現(とうげん)と言っています。これは業界内の通称であり東宝も東京現像所の株主であったので、あらゆる意味でのご援助と述べたのかも知れませんね。
オプチカルプリンターの資金は円谷エンタープライズが立て替えた?
この手紙の内容からするとYESですね。また、謎が深まります。
考察:時間的な問題でウルトラセブンの途中から以降にオプチカルプリンターが導入され使っていたのしょう。
円谷英二が独断で発注は間違いないと思いますが、その後は資金の問題、設置場所にも寄与しています。だからといって全て上手くいったとは思いませんが、ウルトラQを制作するのに調達した!は間違いの気がしますが、いまさらそんなことどうでもいいかな。
長々有り難うございます。
有料にするとまた金儲けか!
と言われますが、知りたい人に知って貰えれば嬉しいです。
円谷英明
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