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見えないことで、みえてくるもの[Footwork & Network vol.27]

1.「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」

 6月28日(金)、「ダイアローグ・イン・ザ・ダーク」という体験型のプログラムに参加した。非日常を体験できる越境先としてゼミ生がおすすめしてくれたのがきっかけでここに訪れた。また、カフェゼミ準備の際に、「部屋が暗い時の方が話が弾むときあるよね」という話題になったことがあり、”暗闇での対話”というテーマに興味を持ったのもきっかけである。
 このプログラムの主催は「一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ」である。ダイアログ・ダイバーシティミュージアム「対話の森」にてほぼ毎日開催されている。
 ダイアログ・イン・ザ・ダークは、視覚障害者の方の案内のもと、完全に光を遮断した暗闇の中で、視覚以外の情報を頼りにコミュニケーションをはかるプログラムである。初対面の人同士のチームで協力して部屋の中を進んでいく。私は、暗闇の中で90分間、様々な体験をした。

2.暗闇での電車の旅

 本プログラムは、季節によってコンセプトが変わる。今回参加したのは、「キャンプ」のコンセプトであった。チームのメンバーと暗闇の中で駅へ向かい電車に乗り、キャンプ場にてキャンプファイヤーをすることが目的であった。
 まず、暗闇に入る前にチームのメンバーと対面し、ニックネームだけ名乗る。今回、初対面で行動を共にするチームのメンバーは、視覚障害者のアテンドさん、学生らしき若者5人、主婦さん1人、私の合計8人であった。
 次に、アテンドさんから白杖の使い方を教えてもらう。白杖で床を叩いたり、杖を左右になぞったりするなど、多様な使い方があることを知った。

 いよいよ暗闇の中に入る。アイマスクなど何もつけていないにも関わらず何も見えず、急に世界から取り残されたような気持ちになった。チームのメンバーと30㎝くらいで密集しているはずなのに、とても孤独に感じた。
 特に恐怖を感じたのは、場所から場所への移動であった。常に声を出してアピールし、周りに存在を認知してもらわないとおいていかれてしまう。
 チーム皆で電車に乗る場面。暗闇の怖さをメンバーと分かち合う中、初対面の人同士だということは関係なくなっていた。自然と、「扉あけますね」「肩掴まって一緒に行きましょう」「ここの席あいてますよ」といった声がお互いから出るようになっていた。声掛けのありがたみを強く感じた瞬間だった。また、相手の表情や態度といった余計な情報がないため、受け取る情報がミニマルな点が心地いいとさえ感じた。
 こうしてキャンプ場へ進んでいく中で、一人のメンバーがはぐれてしまう場面があった。そのとき、視覚障害者のアテンドさんがすぐにメンバーのもとへ駆けつけた。なぜ場所がわかったのかを聞くと、「杖の叩く音が早くなって服の擦れる音がしたので、その音を頼りに来ました。」と言った。視覚からの情報がない分、些細な音を聞き分けられるそうだ。私はこの話を聞き、たしかに90分間の体験ではあるものの、感覚が研ぎ澄まされる体感があることに気が付いた。実際には何もおいてない場所でも、音や雰囲気で焚火や竹林が実際にあるように思えた。見えないからこそ、想像力が働いたように思う。

3.いつもと違う環境での気づき

 今回、実際に目が見えない状態を体験してみての率直な感想として、”自分が取り残されてしまう不安”の感情がとても大きかった。そのうえで、声をかけてもらうことのありがたみを実感した。電車でもどこでも、今後困っている方がいたら声をかけたいと思うようになった。
 また、見えないからこそ他の感覚が研ぎ澄まされるように感じた。暗闇の中で視覚障害者のアテンドさんは非常に頼りになった。私たちは、様々な環境や境遇の人と助けあえる関係にあるのではないかと気づくきっかけとなった。


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