危うし 日本のギター
こんにちは南仙台の父です。
メディアの報道によれば、ギターブランドのフェルナンデスが倒産という
ことで大騒ぎになっています。
いや、一部のギターオタクだけの話だとは思います。
家庭や職場で少なくともフェルナンデス印の商品なんてまあありませんし
、最近はリアルで楽器屋さんで楽器を購入するのも廃れ、通販でポチッと
するのも当たり前の中でフェルナンデスが退場していきます。
私はあんまり日本のギターに思い入れはありませんが、フェルナンデスと
いえば70年代以降の日本のギタリストには大きな影響を与えたブランドで
もあります。
カーマニアにとってマツダがなくなっちゃうくらいの感じかもしれません
が、Made in Japan. が消えるのはギタリストにとってはかなりショッキン
グな話です。
(※ ここではマツダを例に上げましたが、三菱でもダイハツでもここは話
として同じような意味になります。)
ちょっとフェルナンデスについて、日本ギターについて今回は話をしてみ
たいと思います。
今から60年くらい前に初期のバンドブームというのが起こって、その影響
で日本のギター(ここではエレクトリック)の歴史は始まったとされてい
ます。
ちょうど60年前といえばビートルズの来日があり、その頃入ってきた米国
のビーチサウンドなるものが日本を襲って、多くの若者がギターを手に取
ることになります。
ディープ・パープルやツェッペリンなどもこの時期に産声を上げています
が、当時の日本はベンチャーズの大流行もあって「エレキサウンド」なる
言葉も生まれています。
今も存命ですが、加山雄三氏がモズライト抱えて映画に出てたのもこの時
期のことです。
日本の多くのロック・ジャズギタリストも、ベテラン勢はこの頃に音楽と
ギターに目覚めて、不良と言われながらも抵抗してきたことで現代に繋が
るといっても過言ではありません。
まだまだ当時は黎明期なので更なる普及や不良ではないとされるには更に
時代を経ることになります。
70年代になると体制批判的なメッセージと退廃的なスタイルを持ったロッ
クの登場により、ステージでギターを破壊する、ギターに火を点けて燃や
すといったパフォーマンスが流行していきます。
そんな頃に今も残っている日本のギターブランドの多くが産声を上げてお
り、フェルナンデスもその一つでした。
フェルナンデスは今でこそオリジナルギターのイメージになってますが、
フェルナンデスに限らず、その他のメーカーもギブソンやフェンダーのコ
ピーモデルからスタートしています。
フェルナンデスは何となくわかると思いますが、フェンダー系のコピーギ
ターを得意にしていました。
アリアとかトーカイとかヤマハとかグレコとか、そんな時代にエレクトリ
ックギターの制作・販売を始めています。
ステージでギターを壊すことが一つのお約束になってしまったリッチー・
ブラックモアは最初はストラトを壊してしましたが、さすがにこれはショ
ービジネスとはいえ問題になったので、70年代中頃になると日本製のギタ
ーを使ってステージで破壊するようになっていきました。
(その後は韓国製などに移っていき、別にそんなことしなくてもいいじゃ
んとなって最終的にはギター破壊はなくなりましたが・・・。)
この頃は音楽雑誌以外の雑誌の裏表紙にもギターの広告が載るようになり
、フェルナンデスも含めてコピーモデルが通販で買えるようになっていた
のもありました。
イメージ的にはグレコがギブソン、フェルナンデスがフェンダーみたいな
感じになります。
(一部例外もあるので必ずしもそういうわけではありません。)
当時は1ドルが360円もしちゃった時代なので、素人がフェンダーなんか買
える訳もありません。
そのため、みんなフェンダーの代わりにフェルナンデスを買って、ヘッド
のロゴをFenderに変えてしまうという芸当も流行っていました。
このやり方は色々な方法がありましたが、プロの人たちすらやってたくら
いなので、今から思うととんでもない時代だったことがわかります。
そんなフェルナンデスはストラトファンにとっては重要なアイテムであり
、その後はオリジナルギターや高価なコピーモデルというのも誕生してい
きます。
これが80年代の日本のギターブランド共通の流れでした。
その頃にオリジナルモデルである、YAMAHAのSGとかARIA ProⅡなども登
場することになり、Ibanezもこの頃に誕生しています。
この時代は日本ギター絶頂期といってもよかったかもしれません。
多くの海外ギタリストとエンドースメントを結び、アーティストモデルや
カスタムモデルが多く輩出されていきました。
カルロス・サンタナがYAMAHA SG-175のブッダモデルを使い始めた頃から
がこうした流れが一気に加速していき、90年代から21世紀に繋がっていく
ことになります。
その後、バンドブームがまたやって来て、日本のアーティストのオリジナ
ルモデルなどもどんどん出始めてきて、日本ギター神時代がやってきます。
この頃のギターは造りも良かったので、今でも中古でどんでもない価格が
付いていたりします。
海外からもバイヤーやアーティストもやってきて、中古楽器店を虱潰しに
回って買い漁っているのはこうした事情もあります。
その中でもグレコとフェルナンデスは特に人気があり、ベトナム戦争やそ
の後の経営権移動によって造りがダメになったフェンダーのギターに代わ
って、敢えてコピーモデルを使うという人も多かった事実もあります。
(ベトナム戦争を米国がフランスに代わって参戦することで、金属を軍用
に優先することもあって、金属パーツの質が落ちたことが原因とされてい
ます。)注:グレコは米国発祥のブランドです。
私の周りでもフェルナンデス派という人たちは数多く居て、ヘッドのロゴ
を弄っている人、わざとヘッドにタバコの火を押し付けて某ギタリスト仕
様にする人などもおりましたっけ。
今と違ってフェンダーなど持てる時代ではありませんでした。
もちろん、80年代に入るとフェンダージャパンが登場し、フェンダージャ
パンの安いストラトなども出始めていました。
(神田商会が取り扱っていたのが最初です。)
でも、変な思い込みや拘りがあって、フェンダージャパンをバカにして、
フェルナンデスの方が上といって、頑なにフェルナンデスを弾いていた人
も多くありました。
90年代以降になると今と違って恐ろしい勢いで円高になったので、この頃
になるとフェンダーもギブソンも素人でも買えるようになっていきます。
そういうこともあって、バンドブーム以降は素人でも最初からフェンダー
やギブソンを使っている人たちも現れるようになります。
その後は少子高齢化と失われた20年とやらもあり、最後はアベノミクスで
トドメを刺され、あえなく終焉を迎えるブランドが出て来るのでした。
フジゲンはギターよりも車載パネルの方が売上げが上回り、今は自動車部
品メーカーとして知られています。
少子高齢化の影響もあって、近くの楽器屋さんとか見に行くと若い人って
あまり見かけません。
アコギの方がまだ需要があるのかもしれませんが、おじさん・おば様が熱
心にギターやベースに熱い視線を送っているのは時々見かけます。
私も30年近く日本ギターには触ってないので何ともいえませんが、あれだ
けの勢いで世界を席巻した面影を見ることはできません。
えっ、ところでお前は何を使ってたのかって?
なんだっけな・・・、YAMAHAのレスポールのコピーモデルとか使ってた
ような気がします。
そういえばフェルナンデスのギターって触ったことねえや・・・。
今思えばフェルナンデスの全盛期に触っておけば良かったな・・・。
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