昭和の青い鳥④


アオイは目覚めた瞬間、胸の奥から湧き上がる高揚感を感じた。今日はフォークソングのイベントの日。普段よりもずっと早く目が覚めてしまった彼女は、まだ外が薄暗いことに気づきつつも、すぐに布団から飛び起きた。心の中で「今日はいい日になる」と確信していた。

「早く準備しなきゃ…」と自分に言い聞かせるように、アオイは着替えを始めた。新しい街での初めての休日のイベント。楽しみで仕方なかった。レトロな鏡台の前で髪を整えながら、彼女はこの日のためにどんな服を着ようか迷っていた。結局、少し落ち着いた色合いのワンピースを選び、心の中で「これなら大丈夫」と頷いた。

準備を終えたアオイは、期待に胸を膨らませながら、隣町へ向かうことにした。道すがら、いつもと違う雰囲気に包まれた街並みが目に映り、アオイの気分はさらに高揚した。風は心地よく、遠くから聞こえるアコースティックギターの音色が、彼女の心にさらに火をつける。

会場に着くと、そこにはチラシで見た通りの屋上ステージが設置されていた。青空の下、どこか懐かしさを感じる会場の雰囲気が広がっており、早くも準備を進めるスタッフたちの姿が見えた。その中に、アオイにチラシを渡してくれた幸二がいるのを見つけた。彼はスタッフ用の腕章をつけ、忙しそうに動き回っていた。

アオイが会場に入ると、すぐに幸二が気づいて彼女の方に駆け寄ってきた。「あれ、アオイちゃん、来てくれたんだね!」

「はい!楽しみにしてました!」と、アオイは笑顔で答えた。

幸二は少し息を整えた後、少し照れくさそうに言った。「実はね、スタッフがちょっと足りなくて…もしよかったら、手伝ってくれないかな?そんなに難しいことじゃないんだけど、どうしても手が欲しくてさ。」

アオイは一瞬驚いたが、すぐに頷いた。「もちろん!私でよければ手伝います!」と快く返事をした。せっかくのイベントで少しでも役に立てるなら、喜んで協力したいと思ったのだ。

こうして、アオイはスタッフの一員として動き始めた。幸二に指示を受けながら、椅子の配置を整えたり、受付で来場者を案内したりするのは、彼女にとって新鮮で楽しい経験だった。爽やかな風が時折吹き抜け、会場全体に心地よい空気が漂っていた。

「ここで生きているみたいな感じだな…」アオイは心の中でそう感じながら、ギターのチューニング音が遠くから聞こえてくるのを聞いていた。その音色は、まるで彼女をこの昭和の世界に引き込むかのように、心に響いた。

ステージの準備が進むにつれ、アオイの心もワクワクしていった。音響テストが始まり、リハーサルで流れるフォークソングの歌声が、会場を包み込み始めた。アオイはその響きを聞きながら、幸二と一緒に動き回ることに、喜びを感じていた。

イベントが始まるまでの時間はあっという間に過ぎていったが、アオイにとってはそのすべてが新しい冒険のように感じられた。

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