昭和の青い鳥⑤


イベントは大成功だった。屋上に集まった人々は、フォークソングの温かい音色に酔いしれ、アオイもその一員として楽しんでいた。アマチュアグループの演奏とはいえ、彼らの情熱や音楽に対する愛情は伝わってきて、アオイの胸にも深く響いた。昭和の時代にどっぷりと浸りながら、彼女はここで過ごすひと時が特別なものだと感じていた。

イベントが終わり、片付けが始まった頃、幸二がアオイのもとにやってきた。「アオイちゃん、今日は本当にありがとう。助かったよ。」と感謝の言葉を口にした。

アオイは少し照れくさそうに微笑んだ。「こちらこそ、お手伝いできて楽しかったです。」

幸二は一瞬言葉を詰まらせた後、何かを思い出したようにポケットからチケットを取り出し、アオイに手渡した。「実はこれ、関係者から頂いたんだけど、僕はその日行けなくてさ…。君にあげるよ。」

アオイがそのチケットを手に取ると、なんとそれは、あの日ラジオで聞いたピンクレディーのコンサートのチケットだった。驚きと喜びが一気に彼女を包み込み、思わず「本当ですか?」と幸二に確認した。

「もちろん。本当に行けないんだよ。だから、君にぜひ楽しんできて欲しい。」幸二は少し照れくさそうに笑いながら、アオイにそのチケットを託した。

アオイは感激して、深々と頭を下げた。「ありがとうございます!本当に嬉しいです!」

幸二は照れくさそうに頭をかきながら「楽しんでね」とだけ言い、片付けに戻った。

アオイは大事にチケットを手にして、心からの感謝を胸に、雑貨屋へと戻った。店に入ると、田中がにこやかに彼女を迎え入れた。「楽しんできたかい?」と優しく声をかけられたアオイは、満面の笑みで「はい!とっても楽しかったです!」と答えた。

そして、アオイはもらったチケットの話を田中に伝えた。「それで、幸二さんが…ピンクレディーのコンサートのチケットをくれたんです!」

田中はその話を聞いて目を見開いた。「それはすごい!最高のプレゼントじゃないか。ピンクレディーのコンサートなんて、滅多に行けるものじゃないよ。」

アオイは頷きながら、チケットを大事そうに見つめた。「はい、夢みたいです。」

田中は笑いながら「来週の土曜日、コンサートは横浜で開催されるんだろう?それなら、土日の休みをあげよう。それと、ちょっとした臨時ボーナスもな。」と、嬉しい提案をしてくれた。

アオイは驚きながらも「本当ですか?ありがとうございます!」と感謝を述べた。これで、安心してコンサートに行けるだけでなく、少し贅沢もできるかもしれないという思いが湧いてきた。

「明日からまた頑張れそうです!」と、アオイは心から嬉しそうに田中に伝えた。コンサートの日を楽しみにしながら、彼女はこれからの仕事にますます精を出す決意を新たにしたのだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?