「 黒い洋館 」 ボニさんのPocketBook
お話をスタートする前に。ちょっとだけ読んでみてください。
今思うとボニさんは子供の頃から、多感なタイプだったんだと思います。
母親が帰ってくる気配を感じたり、お小遣いが欲しいなーと思っていると、お客さんからお小遣いをもらえたりしました。
自分がこうなりたい、これが欲しいと思うものは時間がとてもかかることがあっても、ほぼ手に入れてきました。
かく言う、noteで記事を書いているのも、ネットで記事を書く仕事がしてみたいと以前から思っていたことを実行できているのです。
※これが趣味で終わらず、実益が伴うともっといいのですけどネー!笑
この感じやすいのは、おばあちゃんの遺伝?血筋?なのかもしれません。
おばあちゃんは沖縄でいうユタのような人で、東北で言うイタコのようなことをしていたらしいのです。
ある日、おばあちゃんは「 私は息子たちに会っておかないといけない 」と言い、東北の田舎から長時間かけて、神奈川のおじと東京のボニさんの父親に会いに来ました。そして、田舎に帰ってすぐに亡くなりました。
ボニさんが5歳の頃のことだったと思います。
そんなおばあちゃんの血筋を受け継いだのか、ボニさんはいろいろなことを察知する能力が他の人も強いんだと思います。
沖縄に来る前に函館に移住するチャンスがあったのですが、それは現実にならず、沖縄に来ることになったのですが、たぶん沖縄に呼ばれたのだと思っています。
呼んだのは、ボニさんの父親の兄の中に戦争に行った人が数人いて、中には南方で亡くなった人がいると聞いていたので、たぶんその人が呼んだのではないかと思っています。
沖縄に来て少ししてからボニさんは南部にある「ひめゆりの塔」や「平和の礎」などを見て回ったことがありました。
その時に平和の礎の資料館の自動ドアが開いて中に入った瞬間に、肩の上にドン!と衝撃があり、なにかに取りつかれたことがあります。
それから肩が重く、なんだか息も苦しくなってしまい、それまで自分で車を運転していたのに、運転が出来なくなってしまって同行者に運転を変わってもらいました。
家に帰ってきても肩の重さや息苦しさはなくならず、鏡を見ると目のまわりが赤みを帯びて苦しげな顔つきだったのを今でも忘れられずにいます。
それは3日経ってもなくならず、3日目に職場の人から「 あんた、なんか悪いものに憑かれているから、塩で清めなさい。」と言われて、言われた通り塩で清めたら「 スーッ 」とその苦しみがなくなり、身体も軽くなりました。
それ以来、感じやすさがパワーアップし、沖縄では戦争の激戦地や集団自決などのヤバい場所が多々あるので、それをうまく回避できるようになってきました。
ですが、今だに南部に行くと意識はちゃんとあって車を運転していても、ふとすると「 あれ?ここはどこだ?」と知らないうちに意図しない場所にいたり、ナビを使っていても道を間違えて同じところをグルグル回っていたり、曲がるところを間違えたりします。
沖縄の南部は特に沖縄戦の激戦地となったところなので、戦地や集団自決などの場所が多く、ヤバいところばかりなのでボニさんは南部に行くと迷わされてしまいます。なので南部にはほとんど行きませんし、どうしても行く場合は1人では行きません!
そんなボニさんには南部以外にもヤバいというか不思議なところがいくつかあるのですが、特に不思議なのは2か所です。
1つは宜野湾にある嘉数高台公園 ( かかずたかだいこうえん )にある地球の形をした展望台です。
ここは沿線の国道330号線の広栄( こうえい )の陸橋を通る時に左にバークレーがあり、右に嘉数高台公園の地球の形の展望台があります。その展望台がそこを通るたびに大きくなっているような気がして、迫って来るように感じるのです。
そして、もう1つ名護の玄関と言われる許田( きょだ )にあった黒い洋館です。
ボニさんは数年前まで名護市に住んでいましたが、名護から中・南部に出かけるときは国道か高速で南下するのが名護の人々のパターンでした。
ボニさんは高速を使って南下することが多かったのですが、国道から高速に入る陸橋を上がっていくと途中にその黒い洋館が見えるのです。
その黒い家は小さな入り江の南側に建っているので高速に入る時にしか見えず、高速から出るときは見えません。
その入り江はぐるりと砂浜に囲まれていて、砂浜からすぐのところに黒い洋館は建っていました。
これが普通の家であれば、小さな入り江はその家のプライベートビーチのようで最高の家だったのでしょう。でも、その黒い洋館は黒く塗られた家ではなく、焼け焦げて真っ黒になった家でした。
名護の人たちはほとんどの人がその黒い洋館のことは知っていましたが、なぜそこに黒い洋館があって、なぜ真っ黒に焼け焦げてしまっているのかは誰に聞いてもわかりませんでした。
ボニさんはヤバい場所とわかっていても、とても気になっていて、見える時と見えない時があるので、不思議に感じていましたが、良い気は感じない場所です。
許田の黒い洋館
これはまだスマホはおろか、携帯もない頃の俺ケンジが体験した話しです。
当時の沖縄の若者は高校3年生になると順次自動車の免許を取得し、練習がてら夜な夜な親の車で友人を誘っては北部にドライブに向かっていました。
「 ケンジー、俺やっと免許を取ったさー 」とユウジが教室で親友のケンジーに免許を見せびらかしています。
「 いいやしー。オレはあと2ヶ月たたんと教習所にも行けんさー 」と
ケンジは羨ましがっています。
「 なぁ、ケンジー、今夜さー、父ちゃんがモアイでいないから父ちゃんの車でドライブ行かんか?」とユウジはケンジを誘います。
「 ドライブかー、いいな!」「 でもユウジの運転でかぁー?」
ケンジは少し不安そうな素振りをしてみせました。
「 大丈夫さー。教習所で教官にも運転がうまいと言われたんどー」と
ユウジは言います。
続けて「 タカシとサトルーも誘おうぜ 」とユウジは言いました。
「 4人でなら楽しそうだな。行くか !!」ケンジは言いました。
「 でも、ユウジの運転がなー」まだケンジは不安そうです。
「 大丈夫さー!」とユウジはケンジに言って、タカシとサトルを誘いに行ってしまいました。
このケンジの不安は別の不安に繋がることをまだケンジは気づいていないのでした…。
夕方になってユウジがケンジの家の前まで車でケンジを迎えに来ました。
「 よっ!待ったかー?」ユウジは車の中からパワーウインドウを下げてケンジに聞きます。
「 そんだけデカい音楽かけていたら、来たのがすぐにわかるしー。
音楽聞こえて出てきたから待ってないよー」とケンジは笑います。
「 早く乗れ!」ユウジは言いました。
「 おう!」ケンジは助手席に滑り込むと「 よっ!よっ!」とタカシとサトルが後部席からケンジに声をかけてきました。
「 よーし!名護までドライブ行くぞー!!」とユウジが言うと
「 オー!!」と全員が言ってユウジの車は走りだしました。
しばらく走っていると「 なぁユウジ、シーサイド寄るだろ? 」とケンジが聞きました。
「 シーサイド寄ってスープを買って、名護のエンダーでハンバーガーとルートビアは北部ドライブのお決まりでしょ! 」とユウジが言います。
するとサトルが「 オレはオレンジジュースがいい!!」と言ったので
3人が「 子供かー!!」と突っ込み大爆笑となりました。
「 エンダーのオレンジジュースは他所と味が違うから好きなんだよー」サトルはこだわります。
「 あの薄さがいいよなー」とケンジが助け舟を出しました。
「 うんうん。子供の頃は好きだった」とタカシも言いました。
「 オレはカーリーフライが好きだなー」ユウジも言います。
こんな感じで4人はユウジの運転で名護に向かっていきました。
シーサイドでスープを買って名護に向けてしばらく走ると
「 なぁ、許田の黒い洋館わかるかー?」とタカシが話し始めました。
「 あの高速の入り口のところのな?」とサトルが聞きました。
「 そうそう、真っ黒に焼け焦げた家だろう?」ユウジも言いました。
「 オレも見たことある!!うちのオカーが若い頃からあったってよー」ケンジも言いました。
「 あの家、ヤバいとこだろ?」サトルが言うと
「 実はよ…」とタカシが話し始めました。
沖縄戦が終わって少しした頃、あの入り江を気に入ったアメリカの兵士ジョンが真っ白な家を建てて、恋人のメリーをアメリカから呼び寄せて住み始めました。兵士ジョンは恋人メリーと結婚してすぐに子供も生まれ、しばらくは幸せに家族で暮らしていましたが、子供が成長するにつれ、ジョンの様子がおかしくなっていきました。
ジョンは子供が自分にもメリーにも似ていないのを気にしているのでした。ジョンは自分が沖縄で死に物狂いで戦っている時に、メリーは本国アメリカで豊かな生活をしていて、浮気をしていたのではないかと思うようになっていました。
そして、ジョンはだんだんと家から出なくなり、部屋にこもってメリーや子供とも話をしなくなってしまいました。
そんなジョンを心配して本国アメリカからジョンの親友のポールがジョンとメリーの家にやってきました。
ポールが家に来た時のうれしそうなメリーの顔を見たジョンは、ポールは戦争には参加していなかったので、ポールがメリーの浮気相手だと思い込んでしまいました。
そして、その日の夜ジョンはメリーに「 おまえは俺が死ぬ思いで戦っている時にポールと浮気していたんだろ!」と詰め寄りました。
メリーは必死に「 そんなことはしていない 」と否定しましたが、ジョンは聞き入れません。
別室で寝ていたポールも起きてきて、メリーと共にジョンを説得しますが、ジョンは聞く耳を持たず、どんどん逆上していきます。
とうとうジョンは鉈を持ち出してメリーとポールに襲い掛かり、2人を殺してしまいました。
さらにジョンは子供の寝室に行ってベットに火をつけ、子供と共に火に包まれてしまいました。
ベットから燃え移った家がすっかり火に包まれると火だるまになったジョンが家から出てきて入り江の海の中に入って行き、息絶えました。
朝になると真っ白だった洋館が真っ黒になってたたずんでいました。
しばらくして、真っ黒になった洋館を崩そうと解体業者が入って行きましたが、事故が起こって解体できませんでした。
その後、何回も解体しようとしますが、いつも事故が起こり黒い洋館の解体が出来ません。
ユタがお祓いをしても黒い洋館の解体はどうしても出来ず、いつしかそのまま放置されてしまい、どうして黒い洋館がその入り江にあるのか誰もわからなくなっていったのでした。
タカシの話が終わるとケンジは「 それって、そうとうヤバくない?」ぽつりとつぶやきました。
「 だからよー。肝試しに見に行かんか?」タカシが言います。
「 それ、学校で自慢できるやしー」サトルがはしゃぎだしました。
「 よし!見に行くか!!」ユウジが勇んで言いました。
「 イエーイ!」タカシとサトルが後部座席で手をあげて喜んでいます。
ケンジは「 でーじなとん、大丈夫かな…」と思いました。
ユウジの車は国道58号線を北上し、恩納村を抜け、名護市に入りました。
「 名護に来たけど、どのへんかー?」とユウジは聞きます。
「 高速の下から入って行くらしいぜ 」とタカシが言うと
「 高速が見えてきた 」ケンジが言います。
「 スピード落とせー!」サトルが言います。
そして、ユウジの車が高速の下に入って行くと左側の林の中に細い脇道がありました。
「 ここだはず!」とタカシが言うと
「 ヨシ!」とユウジは車を脇道に進めて行きました。
脇道を少し入ったところで「 この辺で車を停めて歩こうぜ!」とサトルが言いました。
ユウジは車を停め、全員が車から降りて歩きだしました。
「 今日は満月だから良かったな!月がなかったらこんな林の道は歩けないぜ!!」とサトルが言いました。
しばらく4人が歩いていくと林を抜けてビーチがありました。
入り江の海は満月に照らされてキラキラと輝いています。
「 うぉー、こんなとこにキレイなビーチがあるんだなー」とユウジが驚いています。
「 ほんとになー」ケンジも言います。
「 ほら!あっちぃー!」タカシが左側を指さしています。
タカシが指さす方を向くとそれはそこにありました。
4人が目指す黒い洋館です。
黒い洋館を見た4人はなんとも言えぬ存在感に息を飲みました。
入り江の白いビーチと海や輝く満月とは、あまりに不釣り合いだったのです。
4人はゆっくり黒い洋館に近づいて行きました。
「 思っていたよりもデカいな…」ユウジがつぶやきました。
「 うん…」ケンジが答えます。
「 おい、こっちに入り口があるぞ!」タカシが言いました。
「 入ってみようぜ!」サトルが入って行きました。
「 うん…」3人は少しビビリながら入って行きました。
「 うわー!すごいな…」タカシは洋館の中の全てが真っ黒に焦げているのを見てつぶやいています。
「 デージだな…」ユウジが言うと
「 おい!階段があるぞ!」サトルが言うと階段をあがりだしました。
「 おい!大丈夫か?」ケンジが言うと
「 大丈夫!大丈夫!」サトルが言いながら階段を昇って行きます。
「 まじかー」ユウジも心配そうです。
「 オレも行ってみよー」とタカシも階段を昇っていきました。
「 ユウジ、この家さ、真っ黒にコゲているのに脆くないよな。なんか変じゃない?」ケンジが言います。
「 なんかな…」ユウジが言うと
「 おまえたちも上がって来いよー!」とサトルがケンジとユウジに言いました。
「 おう!」と2人は言い、慎重に階段を1人ずつあがって行きました。
ケンジが後からあがって来ましたが、2階もやっぱり真っ黒でした。
2階は少しミシミシ言うところもありますが、火事で燃えた家のようには思えません。
「 おっ!来た来た」タカシが言うと
「 ほら!見てみー」サトルが窓から外を見ています。
みんなで窓の外を見ると満月に照らされて入り江が輝いていて、下から見るのとは違って見えました。
「 うわーっ、すげーなー」ケンジが入り江の景色に見とれていると
「なんで、こんなキレイな景色が見れる家を燃やしたかねー」ユウジがつぶやきました。
すると「 あれ、なんかー?」とタカシが入り江の海の中を指さします。
タカシが指さした方を4人で見ると、満月に照らされて輝く海の中に黒い人影がこちらを見ています。
4人はその黒い人影を見た途端、体が動かなくなってしまいました。
もう4人は黒い人影を見ていることしか出来ません。
「 ヤバい!ヤバい!」ケンジがつぶやいていると黒い人影はゆっくり海からビーチに上がって黒い洋館に近づいてきました。
動けなくなった4人は怖くて、全身から汗が噴き出しています。
黒い人影はゆっくりとビーチを歩いて黒い洋館の下までやってきました。
「 怖い!怖い!」タカシがつぶやくと「 あの影なんか持ってる 」とサトルが言いました。
「 鉈じゃねー」ユウジが言うと黒い人影は黒い洋館の中に入ってきました。
「 でーじヤバい!入って来た!!」ケンジが叫びます。
ミシ!ミシ!一歩一歩階段をあがる音がすると、ふっと4人の力が抜けて動けるようになりました。
4人が振り返ると、そこには黒い人影が立っていて、おもむろに鉈を振り上げ、まん中にいたサトルに切りかかりました。
「 うわーっ!」とサトルは倒れてしまい、黒い人影は隣のタカシの方を向きました。
タカシはとっさに窓から飛び降り、それを見たケンジとユウジは階段に向かって走り出しました。
2人が慌てて階段を駆け下りて黒い洋館から飛び出ると、タカシがうずくまっています。
「 大丈夫か?」ケンジが聞くと
「 足、折れた…」タカシが言います。
「 マジか…?」ユウジが言うと、黒い人影が黒い洋館から出てきました。
「 ヤバい!逃げろ!!」ユウジが言うとケンジとユウジはタカシを抱えて車まで走りました。
なんとか車まで来て3人は車に乗り込みましたが、ユウジがエンジンをかけようとしても車はキュルキュルと音がするだけです。
「 マジかー!エンジンが!」ユウジが慌てているのでエンジンがかかりません。
「 サトルはどうするんだよ!」とケンジが言います。
後部座席のタカシが「 早く!早く!」「うわーっ!奴がそこまで来てるぅー!」と叫んでいます。
黒い人影が車に触ろうとした時、ブゥーン!!と車のエンジンがかかり「 やった!!」ユウジは車を発進させました。
「 サトル!絶対迎えに来るから!」ケンジは言うと、
「 名護の警察に行け!」と叫びました。
3人は命からがらユウジの車で名護の警察に飛び込んでいきました。
すぐにタカシは病院に運ばれ、残ったケンジとユウジがこの夜の話をしても警察は聞き入れてくれませんでした。
次の日、サトルが入り江の海の中で沈んでいるのが見つかりましたが、目立った外傷がなかったため事故として処理されました。
病院に行ったタカシは思ったよりも骨折の状態が悪く、一生車椅子の生活を送ることになってしまい、ケンジはお見舞いに行こうとしましたが断られ、学校もやめることになったので、それっきり会っていません。
車を持ち出したユウジは親が警察だったか弁護士だったかと相談し、ユウジを内地の親戚に預けて転校させることになり、それっきり沖縄に帰ってこないので会うことも出来ず、連絡も取れなくなりました。
俺、ケンジだけが沖縄に残っていますが、俺たちが体験したあれは一体何だったんだろうと数年経った今でも思っています。
あの後、無事に車の免許を取った俺ですが、あれ以来北部に行ったことがないのであの黒い家はどうなっているのか、わかりません。
ただ言えるのは沖縄にはヤバいと言われるところが結構あるので興味本位で行かない方が良いということです。
おわり
あとがき
この話はかつて許田の入り江にあった黒い洋館にインスパイアーされたボニさんのオリジナルのフィクションです。
数年前にその黒い洋館もなくなり、高速の下の入り江に入る道もゲートでふさがれて入れません。
沖縄にはパワースポットもたくさんありますが、ヤバいところも多いので、若い人たちは興味本位で行かないでくださいネ!マジで大変なことになりますよ!
追伸
この「黒い洋館」を読んでいただいて素直な感想を聞かせていただけると、ボニさんがでーじ喜びます。
ボニさんは有料記事も書いています。良かったら、お買い求めください。