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「モグラの写真屋さん」第3話 ボニさんのPocketBook

モグラくんはフクロウのおじいさんに教えられたとおりに森の中を進んでいくと、少し開けたところに出ました。

「あれ?ここが泉かな?」
モグラくんが鼻をクンクンさせていると

「コホッコホッ」
鳴き声が聞こえました。
声のする方を見ると開けた場所の先には大きな木があって、大きな木には穴があいています。穴の中にフクロウのおじいさんがいました。

モグラくんはフクロウのおじいさんに聞きました。
「フクロウのおじいさん、ここが泉ですか?」
するとフクロウのおじいさんは
「泉はまだこの先じゃ。でも、おぬしにヤンバルの森の仙人であるわしから、いいものをあげよう。」と言って、
フクロウのおじいさんは木の穴の中から皮の袋を出してきてモグラくんの前に置きました。

そして
「コホッコホッ。よいか、イズミはこの大きな木のうしろの道をまっすぐに進んだ先じゃ。おぬしはこの袋を泉に持って行って、泉の中に投げ入れるんじゃ。そうしたら、おぬしの願いがかなうはずじゃぞ。」と言いました。

「コホッコホッ。ただし、皮の袋の中を見たり、さわるのは絶対にダメじゃ。おぬしの願いがかなわなくなるからじゃ。」
フクロウのおじいさんはモグラくんに強く言いました。

モグラくんは
「うん!わかった。フクロウのおじいさんありがとう!!」
お礼を言っておじぎをしました。

モグラくんが皮の袋を持ち上げて、前を見るとそこには大きな木もなくなっていて、フクロウのおじいさんもいなくなっていました。

モグラくんの目の前には泉へと続く道がありました。

モグラくんはとても不思議な気持ちになりましたが、
「フクロウのおじいさんありがとう!!」
もう一度、大きな声でお礼を言ってから前の道を進んでいきました。

しばらく進むと泉が見えてきました。モグラくんは、やっと願いが叶う泉にやって来たのです。

「わー!これが泉かー!水がいっぱいだー!」
はじめて泉を見たモグラくんは喜びました。

「えーっと、この泉に皮の袋を投げ入れるんだよね。」
モグラくんは皮の袋を泉に投げました。

ポチャンと音を立てて、皮の袋は泉の中に沈んでいきました。

すると泉の底からプツプツと金色の泡が出てきました。
金色の泡はひとつ、またひとつとはじけていき、はじけるたびに
チョウのオオゴマダラが飛び出してきました。

モグラくんは驚いて、小さな目を丸くして泉を見ていました。
みるみるうちにたくさんのオオゴマダラが生まれ、泉のまわりで舞い踊っていました。

もっと大きな金色の泡が泉に浮かんできました。
大きな金色の泡をオオゴマダラたちがかこんで泉から持ち上げると、泡が大きな金色のサナギに変わりました。オオゴマダラたちは大きな金色のサナギをモグラくんの前に持ってきました。

そして
「このサナギを持って帰ってください。」と言いました。

モグラくんが大きな金色のサナギを受け取ると、オオゴマダラは真っ暗な夜空に飛んでいき、星になって輝きはじめました。

星たちはモグラくんが来た道を照らしています。
モグラくんはハッとしてきた道を帰りはじめました。

モグラくんはトボトボ歩きながら、さっきの泉での出来事はなんだったのかなーと考えていました。

「ぼくは夢でも見ていたのかな?」
でも大きな金色のサナギはモグラくんの手の中にあって、オオゴマダラの星たちはモグラくんの帰り道を照らしていました。

急に
「オイ!お前なんかいいものを持っているな!」
と声がしました。

モグラくんの前に3びきのハブの盗賊団があらわれました。
3びきのハブの盗賊団に声をかけられたモグラくんは、こわくて動けなくなってしまいました。

モグラくんにハブの盗賊団がジリジリとにじり寄ってきました。

「どうしよう。逃げないと食べられちゃうよ。」
モグラくんは逃げようと思いましたが、こわくてモグラくんの体がかたまってしまって動けませんでした。

もうモグラくんはこわくて、ガタガタ震えてしまいました。

そこへサッとモグラくんとハブの盗賊団の間にあらわれたのは、モグラくんの友達のマングースくんでした。

マングースくんは
「モグラくんをいじめるヤツらは許さないぞー!!」
ハブの盗賊団に飛び掛かっていきました。

「エイ!ヤー!ター!」
マングースくんはあっという間にハブの盗賊団をこてんぱんにやっつけてしまいました。

マングースくんはモグラくんに近寄って
「モグラくん、だいじょうぶだった?」と聞きました。

モグラくんは
「うん。だいじょうぶ。マングースくん、ありがとう!」
「でも、どうしてここにいるの?」
不思議そうに聞きました。

マングースくんは
「モグラくんがお医者のナミエガエル先生の病院を飛び出していくから、心配で後を追いかけてきたんだけど」
「ヤンバルの森へ入ったらモグラくんを見失ってしまって探していて」
「星が道を照らしだしたから、その道をたどってきたらモグラくんがハブの盗賊団におそわれていたんだよ。」
「だから、ぼくはあわててモグラくんを助けに入ったのさ。」
興奮しながら話しました。

マングースくんの話を聞いたモグラくんは
「ありがとう!ありがとう!」と泣いて喜びました。

「ぼくはマングースくんとお友達でよかったよ。」
モグラくんは、あらためて思いました。


つづく


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