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なぜ日本社会では同調圧力が強く働いているのか~「日本型集団」の分析~

2020年4月。緊急事態宣言。
入学式がないまま、大学に入学した。
入学後の2年間は、ほとんどの授業をオンラインで受講した。
想像していたキャンパスライフとは程遠いステイホームを余儀なくされた。
新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大が原因である。

コロナ禍を振り返った現在、わたしは何かの違和感を覚えた。
一言でいうと、世間の目による得体の知れない圧力だ。
当時、わたしは夜のランニングを日課にしていたのだが、マスクを外して走っていた時は、すれ違う人からの冷たい視線を感じていた。

なぜ、わたしたちはこれほどまでに周囲の目を気にしてしまうのだろうか。
なぜ、日本社会では「同調圧力」が強く働いているのだろうか。

日本社会で同調圧力が働きやすい理由


結論からいうと、日本社会では、同調圧力が働きやすい特徴を持った集団がつくられやすいからだ。
その集団の特徴は、「閉鎖性」「同質性」「集団内関係志向」である。
これらの特徴が互いに関連し合い、日本社会における強い同調圧力を生み出していると考える。
日本社会によくみられる集団を「日本型集団」と名づけ、その特徴について分析を進めよう。

①閉鎖性

日本型集団の第一の特徴は「閉鎖性」である。
閉鎖性とは、集団内の人の出入りが少なく、他の集団への移動が難しい状態をいう。
閉鎖性が高い集団のメンバーは、今所属している集団から排除されることを強く拒む。自分が所属している集団に強い帰属意識をもっているためだ。
このような状況において、個人は集団からの排除を避けるため、既存の人間関係に固執し、集団内の秩序や上下関係を維持するために他者と同調することが求められる。
例えば、終身雇用制や年功序列制が残っている日本企業の社員は、就職したら、定年まで同じ会社で働き続けることが暗黙の前提となっている。
これにより、企業の閉鎖性は高まり、社員同士の関係が長期間にわたって築かれ、同調圧力が働きやすくなる。


②同質性

第二の特徴は「同質性」である。
同質性とは、集団内のメンバーが共通の価値観や行動規範を持っている状態をいう。
同質性が高い状態では、集団の多数派が支配的な役割を果たし、多数派と異なる存在を集団から排除する傾向がある。
つまり、個人は集団内で異質な行動や意見を示すことが難しくなり、集団から排除されないために他者と同調する行動がみられる。

「新卒一括採用」とよばれる日本独自の雇用システムは、日本企業の同質性を高めている。
髪型や服装など外見を同じくした就活生が、同じ時期から皆一緒に就職活動を始め、4月に一斉に入社式をする。これにより、同じ時期に入社する新卒社員は、同じ背景や価値観を共有していることが多く、入社時から同質性の高い集団となっている。


③集団内関係志向

第三の特徴は「集団内関係志向」である。
集団内関係志向とは、個人が所属する集団内の対人関係を重要視し、その関係を通じて自分をとらえる考え方をいう。
文化人類学者のベネディクト氏は「菊と刀」において、日本人の上下関係に対する意識を「応分の場」と称し、次のように述べている。

 ”日本人は、つねに上下関係を基準にして自分たちの世界を秩序立てる。家庭や個人的な人間関係においては、年齢・世代・性別・階級ごとの作法に従わなければならない。(中略)
 上の者も下の者も、おのおのの分を越えると必ず罰せられる。「応分の場」が保たれている限りにおいて、日本人は不満も言わずに頑張り続ける。安心感があるからである。"

このように、日本人は集団内の上下関係を強く意識しており、集団内の調和を重んじる傾向がある。
その結果、周囲との関係を円滑にするために、同調圧力が働きやすくなる。

まとめ


日本型集団の特徴である「閉鎖性」「同質性」「集団内関係志向」が相互に影響し合うことで、強力な同調圧力が発生すると結論づけられる。
急速にグローバル化が進む現代においても、日本社会では依然として同調圧力が強く働きやすい背景があり、それは今後も大きく変化しないだろう。
日本社会に生きるわたしたちにとって、同調圧力との共生は避けられない。

大切なのは、まず同調圧力が生じやすい集団の特徴を認識することだ。
その上で、同調圧力を軽減させたり、あるいは活用したりする適切な対処法を身につけることだ。
長くなってしまったので、わたしの考える同調圧力への対処法については、また別途書くことにする。

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