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第81回 「地理総合応援計画 in 北海道」(「地理総合」研究チーム)

 第81回は「地理総合応援計画 in 北海道」と題して、北海道での取り組みを紹介していただきました。北海道の高校でより良い地理総合の授業実践が行われるために地理教育研究会と教育委員会に求められるアクションは何か。
 北海道はその広さから学校間の物理的距離が大きく、ネットワークが薄くなりがちだそうです。また、小規模校も多く、地歴公民科の教員が1人しかいないことも珍しくないようで、小規模校に配属された若い先生が地理総合、歴史総合、公共をすべて担当することもあり、大変苦労されているそうです。
 そこで、地理研と道教委、両者の強みを統合し、北海道高校地理研究会が作成する資料や主催する研修を北海道教育委員会が後援(資料執筆者の紹介や依頼、研修の企画運営に協力など)し、その成果材を地理研から授業者へデリバリーするという方法を模索されています。
 例えば、従来型の対面研修とは違う、授業者が必要性を感じたときに個別に見ることができる新しい研修が一例です。これは地理総合のそれぞれの単元ごとに授業実践者と伴走者でチームを組み、指導案を検討作成し、公開授業を行うもので、①授業案検討の動画②完成した授業案③研究授業と授業後検証会の動画 を単元ごとにパッケージ化してクラウド上で閲覧できる状態にし、参考にしてもらって北海道の先生方をバックアップしていこうという狙いです。
 このような仕組みを考えるうえで、若い先生や大学院生が実践報告し、大学の先生も含めて経験豊富な先生が助言するスタイルをとっている兵庫県の社会系研究会の取り組みは大変参考になったということでした。

― 質疑応答 ―
・兵庫のこの研究会も若い先生をバックアップして生徒と向き合う時間を増やしてもらえればという狙いがある。先生方の困りごとを少しでも助けられるように経験や年齢に関わらず水平的関係を築き、情報交換しやすい環境を心がけている。北海道の地理総合のような取り組みは歴史や公民分野でも存在するのか。 →同じような動きを地理、歴史、公民で同時に行っている。
・著作権の問題はどのように対応しているのか →資料やデータを授業の中で使う分には問題ないのではないか。パッケージを地理研のアーカイブにあげても、アーカイブが一般公開されていないし、パスワードをかけるなどの工夫をする予定。授業動画に生徒が映っているが、4月当初にHP等で公開する旨の許諾をとったクラスでの動画撮影なので対応できている。

― 議論 ―
1.上手な行政の利用方法(指導主事のトリセツ)
・予算をとったり著作権の処理など行政にしかできないことがある。現場の先生方も「現場はこうだから!」ではなく現場でできることをやっていくべき。
・指導主事の先生と現場の先生が「教える」「教えられる」の関係ではなく、悩みを打ち明けられ、相談しながら授業づくりができるような信頼関係を築きたい。対面の研究会に出張費を出してくれたらうれしい。
・行政と現場がお互いを意識する関係に変わりつつあるので、今日話していただいたような視点で取り組んでいただくのは重要。学校側と大学の連携も大切で、新科目の授業づくりについて、実習生を通して大学の先生と話す機会をもてると言ってくれる先生もいる。
2.兵庫県の研究会の「知」の拡散に向けたアクションプラン
・研究会での何でもない議論が財産になっている。知り合いの紹介などで研究会に入るきっかけになったり、新課程が始まるときや教材研究に不安を抱えている人など「知」を求めている人は多いのではないか。
・本研究会はライングループに入るだけで入会でき、余裕のある時に参加できる手軽さが会員数が多くなった理由ではないか。ただ、職場では授業以外のところにウエイトをおいている先生もいて、そこで「知」を拡散していくのが課題。
3.重点投資という発想は悪なのか
・発表やアドバイスの機会があるのはありがたい。新任の先生や若い先生のサポートはもちろん重要だが、中堅の先生も同じように不安を抱えていたりするのでそこへのサポートもあるとうれしい。
・若い先生に機会を与え、元気になってもらおうという素晴らしい活動。
・採用数が増えているとはいえ、若い先生はそもそも少ないので、重点化できるなら重点化するのはよい。


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