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市場動向の確認と経済ニュースの注目点(7/28~8/1)

割引あり

今週末は記事を書くことができないので、8/1までのニュースをまとめさせていただきます。来週は8/2~8/10までの内容で書かせていただきます。

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<マーケットチェック>

今週は日米の金融政策決定会合に注目が集まっていましたが、中東情勢や中国向け半導体規制に関するニュースが入ってくるなど、相場材料が多く変動が激しくなっています。

簡単にポイントだけまとめておきます。

日銀金融政策決定会合

政策金利の引き上げがサプライズであったため中心に報道されていますが、同時に、長期国債の買入れ予定額を毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1~3月に3兆円程度とする計画を決定しています。最終的に3兆円程度まで減額が行われるというのは市場との対話の通りですが、毎四半期4,000億円程度ずつしか減額しないというのは、石橋を叩いて渡るような大変慎重な姿勢です。

利上げはそれ自体がサプライズであったことに加えて、継続的な利上げを行っていく可能性を示唆した意味で、円安によるコストプッシュインフレを意識した内容と言えると考えます。

2年以上にわたって目標の2%を超えているインフレを踏まえると、「実質金利は非常に深いマイナスにある」と何度も強調した。低い実質金利を続けることで「急激な調整を強いられる」先行きリスクに早めに手を打った対応としています。

現在の政策金利は景気や物価に景気を過熱させず冷やしもしない中立金利に比べてかなり下の水準にあり、今回の利上げは「そこの範囲での調整」と説明しています。中立金利自体には不確実性があるわけですが、しばらくはその不確実な領域に入ることはないとの認識も示しています。

過去の利上げ局面において上限となった「0.5%の壁」も「特に意識していない」としており、経済・物価に大きな下振れリスクが生じない限り、0.75%程度までは粛々と利上げを進めるというイメージを与えたと思います。

私は、債券市場への配慮と、投機的な円安への対応という課題に対して見事に対応できたのではないかと考えました。


FOMC

FF金利は5.25-5.5%で据え置かれた。全会一致でコンセンサス通り。
ただ声明文には変化がみられました。

景気認識で労働市場の評価は下方修正されています。「雇用は減速し、失業率は上昇した」との認識で、前回(6月)「引き続き雇用は強く、失業率は低い」から変化している。失業率は移民が原因であまり気にする必要はないとの見方もありますがFRBの声明ではその様な立場はとっていません。

政策の方向性、「デュアルマンデート(物価と雇用)の双方におけるリスクを注視する」と修正された。前回(6月)「物価上昇リスクを警戒する」と比較すると、雇用への配慮が強まっている内容です。

「政策金利の引き下げは近づいて」おり、「物価上昇率の鈍化や労働指標の軟化が続く限り、9月利下げへの確信は間違いなく高まっていく」としています。

つまり、米国経済は底堅いので、これまでは高金利を維持し、物価目標の達成に専念してきましたが、物価を落ち着かせるという目標の達成は既に視野に入っていると認識しているので、もう一つの目標である最大雇用の達成が脅かされることがあれば即座に利下げに転じるというメッセージとマーケットでは捉えられています。

FF先物は「2024年内に3回の利下げ(9月、11月、12月)」、年内に残されたFOMC全てにおける利下げを、織り込んでいます。

対中半導体規制

14時過ぎにこの様なニュースが流れて状況が一変しました。

US to Exclude Japan, S.Korea in New China Chip Exports Rule:Rtrs
(Bloomberg) -- Shipments from US allies that export key chipmaking equipment, including Japan, the Netherlands and South Korea, will be excluded from a new rule to be unveiled next month, Reuters two sources familiar with the rule said
The new rule next month will expand US powers to stop exports of semiconductor manufacturing equipment from some foreign countries to Chinese chipmakers
Major chip equipment manufacturers such as ASML and Tokyo Electron will not be affected as a result: Reuters
Exports from Israel, Taiwan, Singapore and Malaysia would be affected
Spokesperson for the US Commerce Department, which oversees export controls, declined to comment: Reuters
NOTE: US Floats Tougher Trade Rules to Rein In China Chip Industry

アメリカ、中国向け半導体輸出の新ルールで日本、韓国を除外:ロイター
【ブルームバーグ】-- ロイターの情報筋2名によると、来月発表予定の新ルールで、米国の同盟国である日本、オランダ、韓国を含む主要な半導体製造装置輸出国は除外される予定です。この新ルールは、いくつかの外国から中国の半導体メーカーへの半導体製造装置の輸出を停止する米国の権限を拡大するものです。その結果、ASMLや東京エレクトロンなどの主要な半導体製造装置メーカーは影響を受けません:ロイター。イスラエル、台湾、シンガポール、マレーシアからの輸出は影響を受けます。輸出管理を監督する米商務省のスポークスパーソンはコメントを控えました:ロイター。注記:アメリカ、中国の半導体産業を抑制するためのより厳しい貿易ルールを提案。

たしかに、この文面を素直に受け取ると大変ポジティブに感じますが、これまでの経緯を考えると半信半疑です。日本やオランダが規制対象にならないという事であれば、対中規制がほとんど効力を持たないものになるからです。

日本とオランダ、韓国の半導体製造装置メーカーを米国が免除するとすれば、これらの国が輸出政策の厳格化に自主的に応じる可能性が高く、米国がFDPRに訴える必要がないということかもしれません。日本・韓国・オランダの企業は自由に輸出できるとの見方から株価は上昇していますが、これは何か勘違いしている可能性もあると思います。内容をしっかりと確認してみたいと思います。

株式

米国も日替わりで物色対象が変わっており、日本株も政策的な支えがない中で、ボラティリティが大きい状態が続いています。日経平均20000円の時の500円幅と40000円の時の1000円幅は同率なわけですが、やはり日経平均の値幅が出ると、それに反応しやすくなっており、市場参加者が値幅に慣れることも必要かなと思います。

SOXの動きや7/31の14時以降の半導体株に対する買戻しを見ると、短期筋を中心としたショートポジションが溜まっていたのではないかという推測が出来ます。半導体や電子部品は足元の数字はそれほど強くありませんが、ここからファンダメンタルズは戻ってくると考えられています。一方、AI関連の業績と株価反応に見られるように、マーケットの収益向上に対する期待が高過ぎる可能性があります。

当面は、外部要因に振らされそうですし、ポジションをアンワインドするためリバーサルの動きが強くなる可能性が高いかもしれません。


金利

現在5.7兆円程度となっている月間買入れ額は毎四半期4,000億円程度ずつ減額されると26年1〜3月に2.9兆円程度となります。

また25年6月の会合で減額計画の中間評価を行われることになっています。ここで必要と判断されれば計画が修正される他、26年4月以降の買入れ方針について検討し、その結果が示される方針であることが示されました。

さらに長期金利が急激に上昇する場合には買入れ額の増額や指値オペ、共担オペなどを実施すること、必要な場合には減額計画を見直す可能性があることも示されています。

これは、債券市場参加者の意見がかなり反映されたもので、残存期間別の減額の進め方は市場動向に配慮した形となっています。そのため公表後のJGB市場には安心感が広がりました。

ただ、植田総裁は「0.5%は壁として認識していない」、「中立金利に関して大幅な不確実性があるとの認識は変わっていない。中立金利近辺まで行った際にどの辺で利上げをストップするか課題は残っている」としているので、0.75%までの利上げは意識されるでしょうし、25年度には1%という見方も出て来るでしょう。(株式市場ではそこまで見ていないように思います)

現時点では市場は大幅な金利上昇は見ていないですが、継続的な利上げがあるとすれば、中期ゾーンは金利上昇を意識するでしょう。私は全体的には日銀の思惑通りでコントロールが効いていると思っています。

為替

円相場が急変しています。7月初旬の160円/ドル超の水準から、今日は140円/ドル台にまで入りました。円高の主因は、FEDによる利下げ期待もありますが、為替介入と日銀金融政策決定会合 にあったと考えられます。

そもそも、2024 年前半に進展した円安は、強い投機色を帯びていたと考えられるため、日本銀行が通貨防衛に本腰を入れ始めたことの意味は大きいと考えられます。

<注目したニュース>

7/28日経 賃上げも鈍い氷河期世代

<要約>
氷河期世代の不遇とその影響
賃金と職位の停滞
バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代にかけて就職難を経験した「氷河期世代」(現在の40~50代前半)は、他の世代に比べて賃金の伸びが鈍く、管理職の割合も低い状況が続いています。このままでは経済力の乏しい高齢者が増え、社会保障の負担が重くなる可能性があります。

賃金とインフレの影響
日本では世界的なインフレの波及により、物価上昇率がこの2年間で2%を超えて推移し、賃金も上がり始めました。厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、2023年の20~30代の正社員の給与は10年前より1万円以上高くなっていますが、40代後半では1千円強の増加にとどまり、50代前半では減少しています。

キャリア形成の遅れ
出版社で働く東京都内の40代の男性は、非正規社員だった30代の頃の生活費の工面が厳しかったと述べています。また、同年代の別の男性は就職当時の賃上げ率が低く、現在の若い世代と比べて収入が劣っていたと感じています。氷河期世代は正社員になっても、その後のキャリア形成で不利な立場に置かれています。

転職と賃金アップの難しさ
40代後半の男性の転職率は5.4%と低く、転職が賃金アップにつながる割合も20~30代の4割に対して、氷河期世代では3割前後にとどまっています。企業が氷河期世代は転職の可能性が低いとみて、賃上げに消極的な可能性も指摘されています。

資産形成の困難さ
金融広報中央委員会のデータによると、40代の金融資産保有額が100万円未満の割合は、2023年には14.0%と2桁に達し、20年前の2003年から2倍以上に増加しています。資産形成が困難で、老後の生活に不安を抱える人が増えています。

社会保障への影響
収入の少ない層が高齢化すると、介護や医療の自己負担額や保険料に影響が出ます。経済的な理由で結婚できなかった人も多く、単身高齢者の増加は孤立や健康の悪化を招くリスクがあります。

政府と企業の対応
政府は2019年に氷河期世代支援プログラムをまとめましたが、その効果は十分ではないとされています。企業もこの世代の力を引き出すことが重要な課題となっており、経済情勢の変化を踏まえて支援策の見直しが必要です。

まとめ
氷河期世代の不遇を解消するためには、賃金アップやキャリア形成の支援、資産形成のサポートが必要です。政府と企業が協力し、経済全体でこの世代の課題に取り組むことが求められます。

<河北コメント>
就職氷河期世代の資産形成が遅れている事は、日本のアキレス腱になる可能性があります。資産形成が遅れているため、投資も不十分になっているケースが多いと考えられますが、米国の例を見ていても今後は投資をしているしていないで、大きな差が生まれる可能性があります。

7/29日経 日本株、求ム「価格支配力」

<要約>
日本株の停滞と企業の価格支配力
日本株の現状
日本株は昨年からの上昇が一服し、最近は大きく下げています。海外の長期投資家が資産配分を高める動きも一部にとどまっています。その背景には、日本企業の「価格支配力」の低さがあります。

価格支配力とは
価格支配力とは、商品やサービスの価格を自社で決められる力のことです。例えば、高いブランド力や市場シェアがあれば、値上げしやすくなり、利益率を高めやすくなります。日本企業の価格支配力は欧米と比べて低く、マークアップ率(コストの何倍で商品やサービスを販売するかを示す指標)は20年間ほぼ横ばいの1.3倍前後です。これに対し、米国や欧州の企業は高い価格支配力を持っています。

米国と欧州の状況
米国では、アップルやエヌビディアなどの「スター企業」が市場シェアを高め、価格支配力を強化しています。欧州では、高級ブランド企業がグループ化を進め、価格支配力を高めています。米国の主要業種のうち、上位5社の売上高シェアが8割を超える業種は91業種にのぼり、寡占化が進んでいます。

日本企業のROE
価格支配力の低さは、投資家が注視する自己資本利益率(ROE)にも表れています。日本の東証株価指数(TOPIX)500構成銘柄のROEは9.9%で、米国のS&P500構成銘柄の20.4%、欧州のストックス600の15.9%と大きな差があります。この差は利益率の違いによるもので、日本企業は価格設定が弱く、コスト比率が高いことが原因です。

価格競争からの脱却
価格競争から脱却するためには、M&A(合併・買収)による業界再編が期待されています。例えば、日本製鉄などの高炉メーカーが集約されたことで、価格設定がしやすくなっています。政府も企業価値や株主利益を重視する経営を推進しており、M&Aを支援する方針を打ち出しています。

労働市場の影響
働き手不足が慢性化し、賃金に上昇圧力がかかっています。食品小売業界では最低賃金の上昇が利益率の低い企業に打撃を与え、再編が進むと予想されています。物流業界では、SGホールディングスがC&Fロジホールディングスを買収するなど、再編が活発化しています。

まとめ
日本企業の価格支配力を高めるためには、M&Aを通じた業界再編が重要です。政府の支援や労働市場の変化も、再編を後押しする要素となっています。再編が進めば、投資家にとって日本株は魅力的な投資対象となり、次の成長段階に進むことが期待されます。

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