夢追う夏美と現実主義の冬毬、どちらが正しいのか【ラブライブ!スーパースター!!3期4話感想】
アニメ『ラブライブ! スーパースター!!』3期も4話まで放送された。2期6話で鬼塚夏美の“夢破れる”過去が描かれ深く考えさせられたが、今回はそれに妹・冬毬の“重すぎる想い”も加わり更に深く考えさせられる話だったので、“夢と現実”そして“幸せ”を軸に「夢追う夏美と現実主義の冬毬、どちらの考えが正しいのか」をテーマに再び感想記事を書くことにする(もちろんネタバレあります)。
(※ちなみに2期6話の感想記事はこちら)
1.あらすじまとめ
【2期6話(と最終話)】
夢を捨て、マニーが全ての現実主義者になったはずの夏美が、澁谷かのんの「(一人では叶わぬ夢も)みんなとなら頑張れる」の言葉を受けLiella!に加入、再び夢を追いかけるようになる。最終的にラブライブ!で優勝し「初めての……一等賞!」。
【3期4話】
ラブライブ!決勝の舞台に立てた感動から「もう一度あそこで歌いたい。今度は自分(2期生)が中心になって」と新たな夢を追いかける夏美に、妹の冬毬は「その夢は叶わない」「また傷付く日が来る」と切り捨て、「(現実主義者の頃は)笑顔で自信に満ち溢れていた」「姉者にはずっと笑顔で居て欲しい」とも。夏美を含む2期生4人は悩んだ末に「傷付いたり落ち込んだりするから笑顔になれる日が来る」「雨が降らなければ虹は出ない」と結論を出し、冬毬に「マニーよりも素敵な最高の笑顔になれる日が来ると信じている」と伝える。
2.マニー主義の頃の夏美は笑顔だった
まず、2期6話で私の解釈違いがあったかもしれないので、その感想記事から問題の部分を引用する。
現実主義(マニー主義)の頃の夏美は楽しそうには見えなかったと当時は解釈していたが、今回冬毬の口から「笑顔で自信に満ち溢れていた」と明言された。だとすれば話が違ってくるんだよなあ……。実は2期6話の感想記事に、私はこうも書いていた。
実は今回の話、夢だの現実だのを一旦置いておき、“幸せ”を軸に考えると冬毬の想いがいかに重いものであるかに気付く。
この台詞は無印(μ's)の頃から一貫して言い続けて来た「限られた時間の中で精一杯輝く」というスクールアイドルの基本理念に対するアンチテーゼでもある。仮に夢を叶え、スクールアイドルとして輝けたところで、そこで生涯を終えるわけでは無い。その後も100年続くかもしれない人生において幸せになれるかのほうが大事。冬毬の「姉者にはずっと笑顔で居て欲しい」にはそんな想いも込められていると思う。100年間笑顔で居続けるために必要なのは、学生時代に夢を叶えて終わることよりも永続的にマニーを稼ぐことなのではないか。
だからこそ冬毬の「(マニー主義だった頃の夏美は)笑顔で自信に満ち溢れていた」という発言には重みがある。そのまま突き進めば大金持ちで幸せになれたかもしれないのだから。それは可能性の一つとして決して否定できないことなのである。
3.「No Rain, No Rainbow」とEDの歌詞
冬毬の重い想いに対し、姉・夏美を含む2期生は「雨が降らなければ虹は出ない」つまり「傷付いたり落ち込んだりするから笑顔になれる日が来る」という答えを出した。そして終盤、夏美は冬毬に「本当に楽しいって思える笑顔。マニーよりももっともっと素敵な最高の笑顔になれる日が来ると信じているの」と伝える。そして「涙を流したここからもう一度、最高の笑顔を目指しますの! 雨の後の、あの虹のように! オニナッツ、Song for all!」を最後にEDに入る(イントロが本編に被る)。Cパートは無いので、冬毬の反応が不明のまま4話は終了。
2期生が悩んだ末に出した答え「No Rain, No Rainbow」についても考察したい。
冬毬のこの言葉を聞いた上で夏美は「夢を追いかける」決断をしたというのがポイントで、夢は叶わないかもしれない、昔のように挫折し傷付くかもしれない、その覚悟は出来ているということ。フィジカルはともかく、精神面で言えば夏美は成長しているのかもしれない。
更に言えばラストシーンがEDに直接繋がったのもポイントで、このまま夏美がED『DAISUKI FULL POWER』を歌ったとも解釈できるのだ(無印2期4話(にこ回)みたいな感じ)。わざわざ衣装に着替えているのにライブパートが無かったのはそういうことなのだと思う(欲を言えばEDは夏美ソロではなく2期生4人で歌って欲しかったが)。
そして、EDの歌詞に注目すると夏美が冬毬に伝えたいことをより深く理解できる。
「すごいよりもっとすごいのは楽しい」は、結果よりも楽しむこと(笑顔)が大事だということ。「笑いあえたら100倍がんばれる」は、努力そのものが笑顔でいられるということ。「その経験 君となら笑い話になっちゃう」は、結果はどうなろうが経験(過程)そのものが笑い話(笑顔)になるということ。いずれも夢を追いかける過程だけでも笑顔になれるのだと解釈できる。
「カンタンより大胆な方を選ぼう」「どうせならタイヘンな方を選ぼう」は特に顕著である。エルチューバーとして簡単にマニーを稼ぐ現実主義より、大変でも夢を追いかけたほうがきっと面白いこと(笑顔)になる。
4.夏美と冬毬どちらが正しいのか
EDの歌詞まで含めて考察すると、夢を追いかける夏美のほうが正しいのかなと思ってしまう。個人的には前述の通り現実(マニー)が全てだと思うからモヤモヤ感も残るのだが、冬毬の想い(夏美には笑顔で居て欲しい)と夏美の想い(笑顔を目指す過程さえも笑顔でいられる)はある意味で一致しているとも解釈できるので、あとは二人の、Liella!の行く末を見守るしかないのだろう。メタ的に言っちゃえばどうせ優勝するんだから。
それにしても3期は深く考えさせられる話が多い。2期の終盤と同じ人が書いたとは思えないレベル。花田先生やればできるじゃん。