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【旅立】オッサンの家出ほど、興味の湧かないものはない。
ウバといいます。
訪ねていただきありがとうございます。
本日、家出しようかなと考えた。嫁さんと喧嘩したとか、浮気がバレたとかはない。ただ、帰りたくないなと。
※ここで尾崎豊さんの15の夜とかどうぞ……
ところが気付けば家にいた。しっかりお酒を買って帰ったあたり、精神状態は安定しているとは言い難いのだろう。
現実から逃げたい。そんなこと、それこそ無数の人が考えたことあると思う。現実から逃げる。の、1番簡単なやつが家出だ。
家出といえば悩みに悩む青少年の専売特許だが、オッサンが家出をしてはいけない理由もない。
ちなみに我が父は、家出のあと死体となって帰ってきた。行動範囲が広い分、オッサンの家出のほうがタチが悪い。
さて、今回は未遂に終わったオッサン家出。じつは過去に1度だけオッサン家出をしたことがある。
そのはなしを書こう。
その日、とくに嫁さんと喧嘩をしたとかはなかった。夫婦には喧嘩とかではなく、なにやら不穏な空気が漂う瞬間がある。
それに耐えきれなく家出。いや、正確には喧嘩でもしていたのかもしれない。あるいは浮気がバレたり気づいたりしてたのかもしれない。
とにかくわたしは家を出た。愛車のN-ONEに乗り込んでエンジンを掛けた。
で。
どこ行こう。はじめての家出。行き先なんかない。だが、わたしは怖くなかった。むしろ自由を手にした気分だった。
財布には数万円は入ってたハズ。飲みに行こうか?それとも大人のお店に行こうか?わたしは自由だった。そう、どこにでも行ける!
あてもなくマイカーを運転してますと、田舎の町に輝くネオン。そう、パチンコです。光に惹かれる虫のように、わたしはパチンコ屋の駐車場に車を停めた。
勝とうが負けようが、どうでもいい。散財で構わない。とことん打ってやる!そう思って車を降りようと来たとき気付く。
財布がない。
そう、財布がなかった。数万円入ってるはずの財布がない。カバンに入れたままだと気付く。そして、そのカバンはここにはない。
焦りはしなかった。ま、わたしなんてこんなもんだ。と、諦めのほうが強かった。免許もない。ここまで無免許運転。それでも焦りはしない。
運転席側のドリンクホルダーに200円。有料道路用のお金。そいつで缶コーヒーを買った。その為だけに、パチンコ屋に入った。
ジャンジャンジャラジャラうるさい店内で、缶コーヒーだけを買う。人間の欲渦巻く店内で、わたしだけが澄んだこころだった。
一服しよう。それだけだ。
何度も挑戦して、何度も失敗した禁煙。その何回目かの途中のわたし。胸ポケットからセブンスターを取り出し火をつける。
缶コーヒーとタバコは相性がいい。煙に混ぜて腹の中のモヤモヤも吐き出した。
よし、帰るか。
こうして、人生初のオッサン家出は幕を閉じた。時間にして30分ほどだろうか。なんともあっけない幕引き。
さて。
ここまで読んだ方なら気付いていると思うが、このはなしにオチはない。ただ、オッサンがパチンコ屋でタバコを吸っただけのはなしだ。
ここから先のはなしが、わたしが伝えたい事だったりする。もちろん、この先のはなしもオチはない。それを知ってから読むといいと思う。
帰宅したとき、玄関に財布が置いてあった。わたしがここに忘れたのか?いいや、わたしは確かにカバンから財布を出していない。
嫁さんが置いたのだ。わたしが家出したあと、嫁さんがカバンから取り出してココに置いたのだろう。
あの男はどうせ財布を忘れる。そんな嫁さんの想像通り、わたしは財布を忘れて家出をしていった。なんとも情けないはなしだ。
だからといって連絡はしない。どうせすぐに帰ってくる。どうせあの男はすぐ帰ってくるはず。嫁さんには筒抜けだった。
そのとき、わたしが財布を持って家出をしていたらどうだろうか。飲みに行ったり、大人のお店に行ったのか?
今なら解る。
パチンコ屋に行き、財布の中のお金で缶コーヒーを買って、タバコを吸って帰るのだ。わたしはそんな男だ。
嫁さんはそれをすべてお見通しだった。だから焦らない。出て行ったの?どうせ財布とか忘れてんでしょ?ほら、忘れてる。どうせすぐ帰ってくるっしょ?玄関にでも置いとくか。
である。
そして、その通りの行動をするわたし。
自分のことを、自分より知ってくれている人がいる。
それは凄くありがたいことだ。とても当たり前の事ではない。
それからわたしは家出をしていない。今日だって気付けば家にいた。家出すらしなかった。なんとも情けない男だ。
嫁さんに出会って以降、彼女の手のひらで転がされているような人生だ。
ま、そんな人生も悪くないな。
と、わたしは思う。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
ほらね?オチなんてなかったでしょ?
それでは、佐世保の隅っこからウバでした。